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2018/10/01 | KAJIMOTO音楽日記

●ポリーニ来日! ―― 出演者が語る、10/12「ポリーニ・プロジェクト」で演奏するシャリーノの楽曲のこと


大ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニがいよいよ日本に到着しました。20回目の来日となります。
サントリーホールでのリサイタルは今週末の10/7(日)から始まり、10/11(木)、18(木)と続きますが、
10/12(金)、13(土)にポリーニ夫妻がプロデュースする、「ポリーニ・プロジェクト2018」がトッパンホールで行われます。(ポリーニ自身は出演致しません)

このうち、10/12(金)の公演では、後半のシューベルト「弦楽五重奏曲」とコントラストをなすように、前半にイタリアの現役作曲家サルヴァトーレ・シャリーノの斬新な作品が数曲演奏されますが、イタリアの俊英フルーティスト、マッテオ・チェザーリとともにこれに挑むのは日本の若くてとびきり優秀な演奏家7人

その中の5人に、それぞれに演奏曲の魅力や聴きどころを聞いてみました!

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金子 平(クラリネット)
【演奏曲   シャリーノ: 「反転した空間」】

クラリネットパートは曲の中に重音と言われるファとソ♯を同時に鳴らす、一種類の音しかありません。音の長さやリズムは違いますが、他の音を吹くことは一切ないのです。強弱もPPPからPととても弱い音ばかり。こんなシンプルな楽譜は今までに見たことがありません。




中川 賢一(チェレスタ)
【演奏曲   シャリーノ: 「反転した空間」】

頭を空っぽにして聴いてみましょう。自然の音、風の音、空気の音、虫の声、いろんなものが想像できるものが聴こえてきます。電光石火!突然宇宙的な音が?空間がねじれる、 歪む、面白い!!素敵な音たちに身を委ねて一緒に素敵な音の幻想の旅をしましょう!!




岡本 侑也(チェロ)
【演奏曲   シャリーノ: 「反転した空間」】

全体を通して、特別な静寂の空間に包まれ、非常に繊細な流れを持つ曲だと思います。
静けさの中、各楽器のほのかなささやきや息づかいが高まったり落ち着いたりするのですが、チェレスタの、小さなガラスの破片が散らばっていくような音に度々遮られた後、また静寂に戻るというイメージを自分は持っています。
チェロパートは殆どがフラジオレット奏法なのですが、ガラスのように冷たく透き通った音色が映えます。





辻 彩奈(ヴァイオリン)
【演奏曲   シャリーノ: 「6つのカプリッチョ」から 第1、2、3、6番】

私が演奏する「6つのカプリッチョ」という曲は、ソロ・ヴァイオリンのための作品です。
現代音楽を初めて聴く方は、びっくりしてしまうのではないでしょうか!
とてもインパクトが強く、高い演奏技術が必要で、毎日必死に取り組んでいます。
私にとって初挑戦となるこの現代曲、6つの楽曲を通じて、全てハーモニクス奏法(フラジオレット)で書かれており(!)、わざとかすれた音を出したり、強弱がとても細かく書かれています。いろいろな特殊奏法も出てきており、例えば第6曲の最初は指板を叩くだけの指示なのです。
聴くだけでなく、視覚的にも楽しめる作品になるのではないでしょうか!





若林 かをり(フルート)
【演奏曲   シャリーノ: 「反転した空間」「地平線の壁」】

私のシャリーノ作品への印象は『「静謐」「夜」「闇」に輝く一瞬の光』というイメージと、「架空の世界」というイメージがあります。
自分の呼吸までも、ステージで行われている音楽と溶け合って共演してしまうのではないかというほどの微細な音から、突如現れる一瞬のフォルティシモ、そして、その後に続く沈黙…
スタンダードな楽器奏法を打ち捨てて奏でられる音は、フルートやヴァイオリンの音という概念から離れて、例えば目をつぶって聴くと、今までどこかで聞いたことのある…例えば、時計の針の音であったり、木々を渡る風の音のようであるように感じます。
哲学的な謎かけとも思えるタイトルから空想を拡げると、それらの音たちは物語の一場面のようであったり、作品によっては、架空の生き物たちのささやきのように聴こえてきたりもします。

この2曲、実際にお聴きいただくと分かるのですが、作品中には、ほとんど、いわゆる普通の音(いわゆる、みなさんがクラシック音楽をお聴きになる時に想像される楽器固有の音)は聴こえてきません。
楽譜は、クラシック音楽でも使う五線譜を使って書かれており、リズムや拍子はしっかりあるのですが、記されている音符は▲だったり×だったり、一体どうやって演奏するのだろう?と思うような記号だったりします。それらは、息の音が(吸う、吐く、まで細かく)示されていたり、キーのノイズ音だったりします。
ですので、演奏するにあたっては、「これはこの楽器の音だろう!」と分かるような音をできるだけ出さないような練習を心がけているつもりです(笑)

こうやって、(普通の音が鳴らないようにして)紡ぎ出したこれらの音は、一聴するとただの雑音のような音に聴こえるかもしれません。ですが、固定概念を取り払って、別の視点(聴点)から感じると、楽器の音色の新たな魅力であるとも言えるのではないでしょうか。(「シャリーノの音楽は、私たちの従来の聴き方を根底から覆してしまう。」とも評されています。)

楽器本来の音色や特性を知り尽くしたからこそ描くことのできる手法と、溢れ出る音への新たなイメージとその独創性によって生み出されたこれらの作品たちは、まるで、この世の価値観が反転した世界のように、聴き手に楽器の存在をも忘れさせてしまうほど特別な〈音響空間〉を作り出していると思います。



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皆さんの話を通して読むと、ますます興味がわきますね。

実は私もシャリーノの曲を、これまで色んな機会で何曲か聴いたことがありますが、「あれ!?これはどうやってこんな音を出しているのだろう??」とか、「このコロンブスの卵的なアイディアはすごい!」など、ユニークで楽しめるものばかりでした。頭を白紙にすればするほど面白い、という感じでしょうか。


どうぞ「ポリーニ・プロジェクト2018」で演奏されるシャリーノの音楽、多くの方々に聞いてもらえると嬉しいです!


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