NEWS

ニュース

「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル in 東京」25周年を迎えて── その思い出(2) 「レポン」への道・前編

弊社の興行的な面はさておき(無念…)、「ブーレーズ・フェスティバル」の音楽的な成功要因は前回にも書きましたが、ブーレーズが「近現代音楽の真価を聴衆に真に理解してもらうには、殊に最高の演奏が必要」と語ったように、この“最高の演奏者”たちが結集し、文字通りの最高の演奏が行われたからです。そして、中でもまさにブーレーズが指揮した演奏が多かったからではないかと。なぜなら、彼の指揮は私情の思い入れなく、音たちの構造を私たち聴き手がまるでスコアでも見ているかのように整理して、オーケストラを響かせるのですから。だからこそ、ストラヴィンスキーが、ドビュッシーやラヴェルが、シェーンベルクやウェーベルンが、余人にない特性と魅力を顕わにし、私たちをとらえたのです。
そしてさらにその中でも、ブーレーズが指揮した自作の演奏は白眉でした。

そう、5/23にベイN.K.ホールで日本初演された大作、「レポン」です。

「レポン」とは“応答”という意味のフランス語ですが、中央ステージには近現代作品を専門とする室内オーケストラ、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(EIC)がいて、その周囲には6人のソリストが配置され、双方が掛け合いをする曲です。しかし事はそれだけでなく、プラス、EICとソリストたちの音はマイクロフォンで拾われ、コンピューターによってリアルタイムでその音成分が分解・再構築・変形、それが外縁部のスピーカーから鳴らされる、という仕組み。つまりライブ・エレクトロニクスが使用される音楽なのです。
聴衆はEICとソリストの間にいます。

…わかりますか?私の書き方、わかりにくいでしょうか?汗
図面をご参照ください。

皆さま、イメージわきましたでしょうか?
正直、準備段階にあっても私含めスタッフにもよくわからず、そもそもライブ・エレクトロニクスってなんだ?という体たらく。今となっては恥ずかしい限りですが、何人かのスタッフで、かつてEICのピアニストを務めていた野平一郎さんに「レポン」のレクチャーを受けに行ったりもしました。当時の私にはそれでも…。
(書き遅れましたが、このフェスティバル、これだけの規模ですので、弊社のスタッフ全員が何らかのオーケストラ、指揮者、ソリストの担当などの兼任をせざるをえず、私は若いながら広報と、EICの担当を同期の同僚とやっておりました)

いずれにしても、この曲を演奏するには、図面を見てもわかる通り、通常の形状のコンサートホールでは無理です。
ブーレーズ・フェスティバルが開催する5月まであとたった半年強という1994年秋、私は下見で来日したIRCAM(フランス国立音響音楽研究所。パリのボンピドゥー・センターにあり、ブーレーズが1981年に創設)のメンバー数人と、いくつか見込みのある会場をあたって都内を巡りました。
要するにアリーナ型で、広大であり、ステージと客席がこの図面通りにうまく設けられ、その周囲の上方にスピーカーなど機材がしっかりセッティングできる余地のあるところを探さねばならない…。

これがまた行く先々でIRCAMスタッフからNGがでました。大学の講堂とか、体育館とか、5つか6つ廻ったでしょうか?
最後にこれはデカすぎてダメだろうな…と当初思っていた、浦安の東京ディズニーランドの隣にあったベイN.K.ホールに行きました(今はありません。当時は大規模なロックやポップスのコンサート、プロレスの興業などが行われていました)。そこに至って、「大きすぎるし、難はあって工夫はいるが、ここならなんとかできるだろう」ということでOKが出たのです。やった!ひとつホッとしました。

もっともクラシック音楽を主にやっている我々としては、いつも使用するコンサートホールとは色々と運営の“仕組み”が違いすぎ、ここからも苦労の連続でした。
ホールには舞台監督がおらず、こちらで雇わないといけません。リハーサルでも当日でも、ホール常駐スタッフ全員のお弁当を用意しないといけないとか、当日各所に配置する警備の人間を多数手配しないといけないとか、あとはホールが舞浜駅からちょっと遠いのでシャトルバスの手配を…等々。
これはIRCAMスタッフと組んで日本側スタッフとして、初めてのことばかりなのにチャレンジ精神旺盛に目覚ましい活躍をしてくれた音響チーム、「音のスタッフふぉるく」さんに今でも感謝です。こうした現場経験の足りない若い私たちスタッフを助け、そうした人員手配のアドバイスや紹介など、多くを請け負ってくれたのです。「いいコンサートにしましょう!」と熱量あるここでのチームワークは忘れられません。何事にあたっても、それこそが成功の源だと教えられました。
(続く)

ベイN.Kホール

LATEST NEWS

最新ニュース