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ネルソン・フレイレの訃報に寄せて

©Gautier Deblonde

現代最高のピアニストの一人、ネルソン・フレイレさんが11月1日、故国ブラジルのリオ・デ・ジャネイロの自宅で逝去されました。77歳でした。

フレイレさんはリオの神童として世に知られ、ブラジル大統領からの奨学金を受けてウィーンに渡り、当代きっての名教師ブルーノ・ザイドルホーファーに師事。若くして数々のコンクールの優勝や受賞を経て、22歳でロンドン・デビューを果たします。それは大センセーションを巻き起こし、以来50年余、フレイレさんは常に世界におけるトップ・ピアニストの地位にありました。指揮者、オーケストラ、室内楽での共演者の顔ぶれ、主要音楽都市での公演、出演する音楽祭、録音…すべてが超一流のものです。しかしその輝かしいキャリアに比して、彼の活動は「スター」という空気とは縁遠い、慎ましやかなものでした。

白銀のように、澄んだ青空のように美しい音。そして抜群の技術をもって冴えに冴えたピアニズムは音楽ファンに至宝のように尊ばれ、同僚ピアニストたちにとっても羨望の的でした。そのピアノに宿る限りなく優しい人間性は、フレイレさんの演奏を聴くどんな人をも魅了しました。またその人間性ゆえに、たくさんの音楽仲間や後輩たちがどれだけ彼を愛し、慕ったことか。

弊社でもこれまで数多く、フレイレさんを招聘させていただきました。ソロ・リサイタルはもちろん、親友マルタ・アルゲリッチさんとのデュオ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のツアー・ソリスト等々、そのすべてにおいて、フレイレさんはかけがえのない演奏を聴かせてくれました。

最後の来日は2018年の夏で、東京・すみだトリフォニーホールでのリサイタルと広島における「平和の日」コンサートです。特に前者での、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第31番」の深遠、光彩きらめくドビュッシーやアルベニス、そしてアンコールのグリーグ「トロルドハウゲンの婚礼の日」での素朴であたたかいヒューマニティは忘れることができません。

ネルソン・フレイレさんが私たちに与えてくれた、限りなく美しい人間的なときに深く感謝し、そのご冥福を心からお祈りいたします。

KAJIMOTO

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