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トリフォノフ、来日迫る! Vol.1 ──ラモー、モーツァルト、メンデルスゾーン、ベートーヴェン・プロのアメリカ公演レビュー トリフォノフ、来日迫る! Vol.1 ──ラモー、モーツァルト、メンデルスゾーン、ベートーヴェン・プロのアメリカ公演レビュー

若手世代のピアニスト群の中でも図抜けた才能を誇り、すでに鬼才の名をほしいままにするダニール・トリフォノフ。
いよいよ4月の来日公演が近づいてきました。

今回トリフォノフは、対照的な2つのプログラムを披露します。その一つであるラモー、モーツァルト、メンデルスゾーン、ベートーヴェンによるプログラムは、昨年11月から12月かけてのアメリカ・ツアーで弾いており、いずれも絶賛されました。

各地での、以下のレビュー抄訳を紹介いたしますので、どうぞお読みになった上で、今回の来日公演にご期待ください。

©Dario Acosta/DG

〈ニューヨーク(カーネギーホール)公演〉

トリフォノフは、その非凡な才能と旺盛な想像力によって確かな健在ぶりを示し、いつもながらの音楽的なラモー、モーツァルト、メンデルスゾーン、ベートーヴェンを聞かせた。ステージ上にも追加席が置かれたカーネギーホールに空席はなく、詰めかけた聴衆が彼の演奏に耳を傾けた。

彼は(ラモー《組曲》の終曲)〈ガヴォット〉を、リュートのように優しいタッチで弾き始めた。暗いハーモニーには、ただ時おり長調の陽光が射す。いつのまにか対位法が忍び込み、饒舌なスタッカートの変奏が現れ、やがてアルペッジョが鍵盤上で飛び跳ねる─トリフォノフは自制を手放し、自身のみなぎる活力を存分に堪能しているようだった。

この〈ガヴォット〉とは意外にも格好の組み合わせのメンデルスゾーン《厳格なる[sérieuses]変奏曲》では、暗い短調の主題が、万華鏡のように変奏を花開かせていく。作曲者の「厳格な[真面目なsérieuses]」意図─ベートーヴェン記念碑の建立のための資金集め─に敬意を表しながらも、トリフォノフのエネルギーの高揚は、メンデルスゾーン的な落ち着いた輝きよりもむしろ、リスト的な炎を作品に吹き込んでいた。

David Wright / New York Classical Review
2023年12/13配信

休憩を挟んで舞台に戻ってきたトリフォノフは、興奮冷めやらぬままにピアノ椅子に座り、まだ数人が拍手をしているさなかに、ただちにベートーヴェンの《ハンマークラヴィーア・ソナタ》冒頭の和音をフォルテシモで響かせ、この記念碑的なソナタの─流麗で、快速で、機敏で、際限なく創意に富んだ─演奏を届けた。密度の濃い、極めてドラマティックなアレグロ楽章から、トリフォノフは次なるスケルツォ楽章へと切れ目なく移行した。その旋律は、舞踊を想起させる弾んだ触感に支配されている。詩的なアダージョ楽章は魅惑的な弱音で紡がれ、印象深い静寂が広がった。トリフォノフの自信に満ちた厳然たる演奏には舌を巻く。じっさい彼は、このリサイタルを堂々と締めくくる終楽章の複雑なフーガにおいて、完璧にテンポを維持し、説得力のある演奏を聞かせた。

Susan Stempleski / Bachtrack
2023年12/15配信

〈サンフランシスコ公演〉

トリフォノフはデイヴィス・シンフォニーホールでのリサイタルの幕開けで、スタインウェイの前に、ほぼ身じろぎせず座っていた。両手だけをかすかに動かしながら、瞑想しているかのようにラモーの〈アルマンド〉を奏でていく。この曲の哀愁を帯びた主題に添えられる全ての装飾音には、意図があり、入念に考え抜かれた必要性があるように感じられた。2時間半の大曲にも比肩する壮大さを秘めた数分の音楽を通して、トリフォノフの静穏な演奏と研ぎ澄まされた感覚が聴衆を魅了した。
ラモーの《組曲》は、トリフォノフの指を介してさまざまに姿を変えていく。〈クーラント〉のいぶかしげな語調、〈サラバンド〉の断固たる明快さと暗鬱な黙想、〈ファンファリネット〉の優雅さと落ち着き、〈ガヴォット〉の華麗な6つの「ドゥーブル」(変奏)の輝かしく熱烈なパワー。この終曲においてトリフォノフは、怒濤のごとく動きまわる両手にいっそう神経を集中させるべく、ようやく前屈みになった。

Steven Winn / San Francisco Classical Voice
2023年11/21配信

〈ボストン公演〉

(前回の公演から)8年が過ぎても、(ボストンの)“トリフォノフ熱”は一向に冷めていない。彼のシンフォニーホールへの待望の再登場によって、期待を裏切らぬ妙技と深く精到な解釈が、漏れなく聴衆の耳に届けられた。この日の演奏が示したとおり、彼は今もなお、偉大なるロシアン・ピアニズムの遺産を余すところなく体現している。

トリフォノフのモーツァルト《ソナタ第12番 へ長調 K.332》へのアプローチは、ことによると時代錯誤的かもしれないが、それは功を奏した。彼はアレグロ楽章の経過部において、各エピソードを対比させるよりもむしろ、豪快にムードを変化させていった。第1主題は奔放に突進し、短調への一時的な転調はシュトルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)の悲痛な一吹きをもたらす。さらに彼は、モーツァルト作品の演奏では滅多にお目にかからない高速なテンポで終楽章を疾走させた。それでもデリケートな箇所では、トリフォノフの惜しみないルバートが、どの声部にも、どの抑揚にも、細やかに光を当てる。最も胸を打つアダージョ楽章では、ささやき声からかろうじて浮かび上がるフレーズが、燃えさしのように照っていた。
出だしから勇猛果敢で荒々しいベートーヴェン《ハンマークラヴィーア・ソナタ》の第1楽章は、色とりどりのキャンバスとなって現前した。トリフォノフの真珠のような音は、穏やかなパッセージをちらちらと光り輝かせ、より重厚な表現が、展開部で巧みに内声を引き出していく。続くスケルツォ楽章は悪戯っぽく飛び跳ね、アダージョ楽章の聖歌を彷彿させる静穏は、中央のワルツで一転して束の間のユーモアに道を譲る。そしてトリフォノフは、終楽章のフーガで渦巻く緊張感の全てを、曲尾で凄まじく鳴り響く和音群の中に開放した。

Aaron Keebaugh / The Arts Fuse
2023年11/18配信

ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル 2024 – KAJIMOTO

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