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二コラ・アンゲリッシュの訃報に寄せて 二コラ・アンゲリッシュの訃報に寄せて

©Jean François Leclercq / Erato

数ある名ピアニストの中でも最上級の一人であった二コラ・アンゲリッシュさんが、4月18日にパリ市内の病院で、慢性的な肺疾患のために逝去されました。51歳でした。

アンゲリッシュさんは1970年アメリカ生まれ。13歳でパリ音楽院に入学するという早熟ぶりで、チッコリーニやロリオ、ベロフ、フライシャーといった大家たちに師事。同音楽院をプルミエ・プリ(一等賞)で卒業して1994年にはジーナ・バッカウアー国際コンクールで優勝しています。
以降、余裕すらある、抜群に冴えたピアニズムと透徹した楽曲把握で演奏活動に邁進。世界各国からひっぱりだこの実力派として、その音楽を深めていきました。

アンゲリッシュさんはラ・フォル・ジュルネ音楽祭も含め、KAJIMOTOの招聘で数多く来日しています。早い時期の頃を振り返れば、2004年にクルト・マズア指揮フランス国立管弦楽団との日本公演でブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」を弾いたときなど、この誰もが苦労せずにはおれない難曲をいとも容易く涼しい顔で弾いてのけ、聴衆は呆気にとられたものです。
それ以後の彼の活躍は欧米の至るところで耳にすることになりましたし、2019年10月の来日では、トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団定期公演で聴かせてくれたラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」の類まれなる美しさ、そして紀尾井ホールのソロ・リサイタルにおけるブラームスの間奏曲集op.116やシューマン「クライスレリアーナ」での孤高の演奏は忘れることができません。ここでのアンゲリッシュさんは、音楽の、人間の精神の底に静かに沈み込み、かけがえのない大切な「何か」を取り出してきて聴衆に見せてくれました。それは確かに彼が踏み出していた新しい境地であり、「自分は音楽のしもべだ」と言っていました。

それだけに51歳で亡くなられるとは・・・なんということでしょう。ピアニストとしてはまだまだこれからであったはずなのに。

翌2020年の国際音楽祭NIPPONでの、ヴァイオリンの諏訪内晶子さんとの共演が最後の来日となりました。

これまで素晴らしい音楽を私たちに届けてくれた二コラ・アンゲリッシュさんに改めて深い感謝の意を表したいと思います。
真の音楽を探求し、聴衆にその高みを見せてくれたアンゲリッシュさんのご冥福を心からお祈りいたします。

KAJIMOTO

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