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「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル in 東京」25周年を迎えて── その思い出(1)

今年2020年はベートーヴェンの生誕250年という、愛好家はもちろん、音楽に関わる全ての人間にとって記念の年でありましたが、それを吹き飛ばしてしまうくらい、なんという大変な苦難の1年になってしまったことでしょう。

そして、そのベートーヴェンの10分の1ではありますが、今年はまた、1995年に弊社が主催した「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル in 東京 1995 ~21世紀へのプレリュード」から25年となる年なのです。皆さまは覚えていらっしゃいましたでしょうか?

「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル in 東京 1995」とは?

フランス出身、20世紀最高の作曲家の一人であり、指揮者でもあるピエール・ブーレーズが1995年に70歳となる節目に、「多様すぎるくらい多様、しかも豊穣たる20世紀の音楽を(自分なりのセレクトで)まとめ、俯瞰することで、来る21世紀の音楽を展望してみたい」と企画した一大プロジェクトです。そして「近現代の音楽の真価を聴き手に真に理解してもらうには、古典以上に、最高のクオリティによる演奏が必要となる」という信念のもと、当時最高の、ブーレーズが信頼するオーケストラやソリストの面々が集められました。その陣容で10日間以上のチクルスをしようというのです。
彼は世界の主要都市いくつかでの開催を考えており、当然東京でもやりたい、という希望をもっていました。

そこで弊社への申し入れがあったのですが、さすがにすぐにそれを受け入れるのには躊躇がありました。それはこれだけの規模に比して、それまでの(日本の)近現代音楽の集客状況を考えたとき、恐らくはまったく採算がとれない…それどころか会社が傾きかねないほどの大赤字となるのでは?と考えたわけです。今思っても当然のことです。
そのわずか数年前に現社長になったばかりの梶本眞秀と当時の幹部たちは悩み苦しみ、何度も話し合いました。しかし、その懸念以上にこのプロジェクトをやることで日本の音楽界に大きな意義をもたらすのではないか?弊社がやらずして誰がやるのだ?と決意を固め、この前代未聞のフェスティバルを開催することを決めたのです。

“前代未聞”… その内容は以下の通りです。

[ピエール・ブーレーズ・フェスティバル in 東京 1995]
5月18日 東京文化会館
シェーンベルク:3つのピアノ曲 op.11 / 6つのピアノ小品 op.19 / 5つのピアノ曲op.23
ウェーベルン:ピアノのための変奏曲 op.27
ブーレーズ:ピアノ・ソナタ第2番

  ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ

5月19日 サントリーホール
ブーレーズ:弦楽のための本
ベルク:7つの初期の歌 / アルテンベルク歌曲集
      (ソプラノ:ジェシー・ノーマン)
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲 / 交響詩「海」

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  ロンドン交響楽団

5月20日 サントリーホール
シュニトケ:合奏協奏曲第5番
     (ヴァイオリン:ギドン・クレーメル ピアノ:ヴァディム・サハロフ)
マーラー:交響曲第6番 イ短調 「悲劇的」

  指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
  ロンドン交響楽団

5月22日 サントリーホール
J.S.バッハ=ストラヴィンスキー:カノン風幻想曲「高き天より我は来たれり」BWV769
J.S.バッハ=ウェーベルン:「音楽の捧げもの」BWV1079から 6声のリチェルカーレ
J.S.バッハ=シェーンベルク:前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV552「聖アン」
ストラヴィンスキー:詩編交響曲
ラヴェル:クープランの墓
ストラヴィンスキー:「プルチネルラ」組曲

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  ロンドン交響楽団
  合唱:晋友会合唱団

5月23日 ベイN.K.ホール
ブーレーズ:二重の影の対話 
    (クラリネット:アラン・ダミアン)
ブーレーズ:レポン

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン

5月24日 紀尾井ホール
シュトックハウゼン:コントラ-プンクテ
ダルバヴィ:王冠
ブーレーズ:ル・マルトー・サン・メートル(主のない槌)
    (ソプラノ:フィリス・ブリン・ジュルソン)

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン

5月25日 紀尾井ホール
ラヴェル:序奏とアレグロ
リゲティ:ピアノ協奏曲
    (ピアノ:ピエール=ロラン・エマール)
ブーレーズ:エクスプロザント=フィクス(爆発・固定)

  指揮:デイヴィッド・ロバートソン
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン

5月26日 サントリーホール
ラヴェル:バレエ「マ・メール・ロワ」組曲
メシアン:クロノクロミー

シェーンベルク:3つのピアノ曲 op.11 / 6つのピアノ小品 op.19
  (ピアノ: マウリツィオ・ポリーニ)

ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  ロンドン交響楽団

5月27日 Bunkamuraオーチャードホール
シェーンベルク:管弦楽のための5つの小品 op.16
ブーレーズ:ノタシオン
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 op.40

  指揮:ダニエル・バレンボイム
  シカゴ交響楽団

5月29日 サントリーホール
ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲
カーター:パルティータ
ラヴェル:スペイン狂詩曲 / ボレロ

  指揮:ダニエル・バレンボイム
  シカゴ交響楽団

5月30日 サントリーホール
バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」
ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  NHK交響楽団
  合唱:晋友会合唱団

5月31日 サントリーホール
ウェーベルン:パッサカリア op.1 / 大管弦楽のための6つの小品 op.6
バルトーク:ピアノ協奏曲第1番
    (ピアノ:ダニエル・バレンボイム)
ベリオ:シンフォニア
    (歌:スウィングル・シンガーズ)

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  シカゴ交響楽団

6月1日 サントリーホール
シェーンベルク:室内交響曲第1番 ホ長調 op.9
シェーンベルク:管弦楽のための3つの小品
ウェーベルン:管弦楽のための5つの小品 op.10

シェーンベルク:ヴァイオリンとピアノのための幻想曲
ベルク:ピアノ、ヴァイオリン、13管楽器のための室内協奏曲
   (ヴァイオリン:ギドン・クレーメル ピアノ:ダニエル・バレンボイム)

  指揮:ピエール・ブーレーズ
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン

音楽ファンの方なら眩暈がするほどの陣容…と思ってくださるのでは?
もっともブーレーズ自身のセレクトですし、もちろんやれる時間には限りがあるわけで、あの作曲家のこの曲がない、だとか、今ならもっと“尖った”曲をやれるだろ?等、思うところはあると思いますが。

しかし当時の弊社としては全精力を傾けて取り組み、すべての演奏会は予想を超える質・量ともに大変なものとなり反響も大きかった反面、やはり当初からの懸念であった集客は伸びず、近現代の音楽に理解あるような大きなスポンサーは獲得することができませんでした。
(もちろん、日頃お世話になっている会社、企業から様々なご協力をいただくことはできましたが…)
こちらは予想通り、収益としては苦しいものとなったわけです。

ただ、先に書いたようにお客様はじめ多方面からの反響は大きく、例えば朝日新聞の批評欄では故・吉田秀和さんが「これは選ばれた作品とそれを演奏する人たちの質の高さ、幅の広さからみて、わが国ではほとんど空前絶後の行事といって過言ではない。私はまずこの企画実行に当たった人々に大きな拍手と敬意を送る」と書いて下さったのをはじめ、主要各紙や様々な雑誌その他から絶賛の言葉を多くいただいたのは、私たちにとって何よりの励ましであり、「やってよかった」という充足感を得ることができたことは本当に感謝しなければならないでしょう。
また、NHKが13公演のうち、実に6公演を収録し、その演奏プラス、アーティストたちのインタビューを交えながら、6回にわたる「20世紀音楽の歩み」ともいうべき大規模のシリーズをBSで放映して下さったのも、今では考えられないような壮挙でした。

会社全体のことで言いますと、このフェスは、新しいことへの挑戦を続けなければ未来はない、というポリシーをさらに強固にするきっかけとなった気がしています。また私個人(KAJIMOTOの編集室長、石川)のことでも、入社から5年ほどの当時、まだまだ近現代の音楽には馴染めず、その質的な良さなどが見えなくて茫漠としていた自分に、はっきりとした光と広がりを与えてくれたのは確かです。
これらの楽曲にいっぺんに触れたこと、そしてブーレーズら最高の演奏家の姿勢を間近で見たことは、それほど大きなことだったと思います。

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