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こんなときだから…公演プログラム冊子より、はみ出しページを特別蔵出し!(3)── ゲルギエフ&ミュンヘン・フィル編

今日は、2018年12月に来日したゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルのプログラム冊子から。


B子:ミュンヘン・フィルは今年創立125周年なのね。(編注:2018年当時)

A男:そうなんだなあ。25を区切りとして周年とするのは、自分たち日本人にはちょっと馴染みがうすいけど、それにしても長い歴史だよね。ミュンヘンのもう一方の雄といえば、バイエルン放送響。でも彼らは戦後の創設だから、ミュンヘン・フィルの方が随分長い。まあ、ブルックナーやマーラーの交響曲を初演したくらいだし。

B:そしてA男くんはミュンヘン・フィル「中興の祖」セルジュ・チェリビダッケの指揮でこのオケを聴いているのよね。

A:うわ、中興の祖なんて言葉、久しぶりに聞いた(笑)。
そう、聴いたのですよ、チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルの実演。1986年と90年、92年、そして93年か。

B:そんなに聴けたの!?羨ましい…

A:さすがにこのコンビの演奏はずっと記憶に残るよ。特に90年にBunkamuraオーチャードホールとサントリーホールでそれぞれやったブルックナーの交響曲第4、7、8番のチクルス。これらはCDにもなっているけど(ソニーから発売)、凄かったなあ。あと、92年に世紀のピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリと共演したシューマンの協奏曲。

B:話に聞くけど、本当にコントラバスから高い音域の楽器へとチューニングしていくの?すごく時間をかけて。

A:うん、あたかも儀式のように。だから聴衆もその間、じっと待っていなければならないんだ。低音域から音をピラミッドのように順に乗っけていってのチューニングというのは理に適っていると思うし、それだけピッチを緻密に合わせると演奏サウンドがすごく透明になってね。透明なのにどっしりして、実にブルックナーらしい音になる。そしてチェリビダッケの指揮は全体的に遅くて、ピアニシモの部分で丁寧に音を解きほぐしてみせるにはあのテンポが必要だったのだろうけど、私たちの耳に届く音楽は実に独特だよ。そして逆にフォルティッシモに至る部分でマエストロは「ウーン!!」と咆える。そうするとムチの入った馬の如く、オーケストラのサウンドがますます豊かに透明に、そして西欧の教会の大伽藍のように音がそびえ立ってね。これがブルックナーだ!てなものだった。
あの時は、「怪物」ティンパニストとして有名だった故P.ザードロがいてさ、チェリビダッケから絶大の信頼を受けていた彼の音が、それに一役も二役もかっていたことが忘れられない。
そして、あの頃から素晴らしいフルートを吹いていた首席のコフラーが今もいるのが嬉しい。

B:なんか話聞いているだけで凄いわ。宗教みたい。

A:うん、チェリビダッケとミュンヘン・フィルを聴く、という行為は確かにそういうところがあった。でもさっき言ったように、実際のサウンドが素晴らしくてね、たしか作曲家の諸井誠さんだと思うんだけど、新聞批評で、「彼らが作り出す音空間を体験して、“交響曲”という言葉を文字通り、そして音楽とは空間芸術でもある、ということを理解することができた」といったことを書いていたけど──ちょっと記憶があいまいで言葉が不正確かもしれず申し訳ない──なるほど、確かにそうだ!と思った覚えがある。

B:チェリビダッケのあと、様々な大マエストロが首席指揮者(音楽監督)の任を継いだけれど、そういうところ、ミュンヘン・フィルには残っている気がする。
ゲルギエフみたいな全然違うタイプの指揮者が振る今回のブルックナー、さあ、どうかしら?

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