NEWS

ニュース

トリフォノフ、来日迫る! Vol.2 ──「Decades」プログラムについて トリフォノフ、来日迫る! Vol.2 ──「Decades」プログラムについて

4月の来日公演までもう間もなくとなった、若手きっての鬼才ピアニスト、ダニール・トリフォノフ。
4/12(火)の紀尾井ホールの公演では、「Decades」と名付けられた、今のトリフォノフならでは、目を疑うような(?)スゴいプログラムを披露します。

この「Decades」プログラムについて、トリフォノフの言葉や、レビューなどを紹介いたしましょう。

©Dario Acosta/DG

ダニール・トリフォノフが披露する「Decades」プログラム。20世紀ピアノ史を10年ごとに区切り(Decades)、横断する壮大なリサイタルだ。これはニューヨークのカーネギーホール、ザルツブルク音楽祭をはじめ、ここ数年にわたってトリフォノフが力を入れてきたプログラムの一つであり、
「20世紀の各10年間の音楽イディオムに最も新しいアイディアをもたらしたと思える作品を選び、徐々にそれらの候補曲から絞っていって、現在のプログラムにたどり着きました。それら“10年”の中から選んだ曲は、ほかの10年とは根底からまったく異なる革新的なサウンドを聴かせます」
とトリフォノフは言う。では、これらを結びつけるものは何なのだろう?

「もしそうした何かがあるとすれば、それは“多様性”に他なりません。」

そしてトリフォノフの考えによれば、
「ピアニストの音楽的成長を最も助けるのは、ロマン派と古典派のレパートリー」
であって
「これらが土台となって初めて20世紀以降の現代の音楽が生まれてくるし、弾くことができる。家を屋根から建て始めるなんてできますか?屋根を支える土台や階が先に必要です。」

 ここで言う屋根=20世紀以降の音楽はどのように発展したかについて、トリフォノフはさらに語る。
 「プログラム全体を一つのチクルスのように機能させるべく、各曲が前後の曲とコントラストを成すように配慮しました。そして20世紀の後半に関して私が気づいたのは、作曲家たちが“球状の(Spherical)”な表現へと向かう傾向にあったということです──つまり、ただ空間に存在するサウンドへと。時間的な発展への関心がうすれたということですね。例えばペルトやコリリアーノの音楽では概してサウンドスケープ(音風景)に、より意識が向いているように思います。対して20世紀の前半は、音楽の複雑さが極限を迎えました。シュトックハウゼンは、耳がサウンドをどのように知覚するかという点に強い関心を寄せていますが、それに比べてバルトークの強烈な《戸外にて》やプロコフィエフの《風刺》では、不協和な響きは複雑な表現に至るために用いられます。20世紀後半には、場合にもよりますが、不協和な響きは簡明な表現に至ります。」

 「20世紀の音楽史は前の時代より、いっそう速く進展しました。音楽のスタイルがより頻繁に、ラディカルに変わったのです。特に前半はおそらくクラシック音楽史上、最も波乱な時代でした── 今回のプログラム前半のベルク、プロコフィエフ、バルトーク、コープランド、メシアンらのスタイルはこれ以上ないほど互いに違います。だからこそ、時に私たちには、現代の音楽が以前のものよりさほど多くのルーツをもたない音楽のように感じられるのです。極端に速いペースで音楽が発展したために。」

(*トリフォノフの言葉は、2020年のザルツブルク音楽祭のあとにDeutsche Welleで配信された記事から抜粋)

+ + +

さて、この「Decades」プログラムの演奏について、ニューヨーク公演のさまざまな評のなかで、以下のような言葉が印象に残る。(2018~19年のNew York TimesやNew York Classical Reviewで配信された記事の抄訳から抜粋)

──聴衆は汗をかくトリフォノフを見慣れていない。ラフマニノフであれ、リストであれ、どんな圧倒的な難曲が相手であっても、いつも彼は限界を突破しているようには見えず、易々と弾いているように見える。しかしそれは今回のリサイタルで覆った…。

──この公演は、並々ならぬ精神的集中とスタミナを必要とする極めて困難な試みであり(聴衆は時に彼の荒い息遣いを聞いた)、だからこそいっそう感銘を受けた。

──ヴィルトゥオジティには2種類ある。一つは音楽が想像できる限り素晴らしく演奏される場合。もう一つは演奏が人々の想像を超越している場合。トリフォノフのそれは後者である。

──今回、各曲がまったく新しい方法で提示されたことで、まるでどの曲も初めて聴いたような印象を抱いたし、さらに言えば、各曲の“そうあるべき姿”を初めて聴かせてもらった。

ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル 2024 – KAJIMOTO

LATEST NEWS

最新ニュース