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若きヴァイオリンとピアノの鮮烈デュオ── アイレン・プリッチン&北村朋幹が10/17(月)、トッパンホールでリサイタルを行います 若きヴァイオリンとピアノの鮮烈デュオ── アイレン・プリッチン&北村朋幹が10/17(月)、トッパンホールでリサイタルを行います

アイレン・プリッチン / 北村朋幹 ©TAKA MAYUMI

アイレン・プリッチンといえば、多くの方が2019年のクルレンツィス率いるムジカエテルナ来日公演でゲスト・コンサートマスターを務め、アンコールではチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のフィナーレをオーケストラと一緒に弾いた…それも唖然とするほど鮮烈に…ことを記憶されている方も多いと思います。サンクトペテルブルク生まれのプリッチンはもちろんヴァイオリンのソリストであり、ヴィエニャフスキ・コンクールやチャイコフスキー・コンクールに入賞し、今年に入って指揮者でもあるマクシム・エメリャニチェフのピアノと録音したブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集は、濃密な音色と内面的な演奏でとても高く評価されました。

今回の来日で東京・トッパンホールにおいて共演するのは、近年、先鋭的で旺盛な活躍が光るピアニスト、北村朋幹。2人はじっくり相談して、今回のプログラムを組みました。
ロンドンで活躍、ついに祖国ロシアに戻らなかったメトネル。チェコのモラヴィア地方に生まれたヤナーチェク。母親がバスク人であったフランスの大家ラヴェル。そしてルーマニア出身で第2次世界大戦後はパリから祖国に戻らなかったエネスク、この4人の作曲家によるヴァイオリン・ソナタを演奏します。
ラヴェルのソナタも遺作の方ですし、それぞれ複雑な背景をもっていたり、またヨーロッパ辺境にルーツをもつ作曲家たちによる、独特の色合いのソナタたちです。このクリエイティブな2人の演奏による公演、聴き逃せません。

[トッパンホール〈エスポワール スペシャル 16〉 アイレン・プリッチン(ヴァイオリン)]
10/17(月)19時 トッパンホール

メトネル:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ロ短調 Op.21
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
エネスク:ヴァイオリン・ソナタ第3番 イ短調 Op.25《ルーマニア民俗風》

共演:北村朋幹(ピアノ)

全席指定 ¥5,500 U-25¥2,500

【公演の詳細、チケットのお申込みはこちら】
アイレン・プリッチン(ヴァイオリン) / TOPPAN HALL

以下、トッパンホールプレス Vol.119 2022年9月号に掲載されている、アイレン・プリッチンのインタビューと北村朋幹のメッセージです。ぜひお読みください。

〈アイレン・プリッチン インタビュー〉

──ヴァイオリンをはじめたきっかけと、影響を受けた音楽家がいらしたら教えてください。

5歳のとき、両親とクラシックのコンサートに行きました。そこでコントラバスを見た私は、「見て!大きなヴァイオリン!」と叫びました。その後、私たちはホールから追い出されてしまったのですが(笑)。それから両親にヴァイオリンを買ってほしいと頼み、今に至ります。両親は音楽家ではありませんが、私はいつもレコードやCDを聴いたり、ラジオで放送されるコンサートをカセットテープに録音したりしていました。11、12歳のとき、初めてマリア・カラスのレコードを聴きました。彼女は、私が意識的に尊敬するようになった最初の音楽家です。その後はワーグナーに、そしてオペラ全般に夢中になりました。現代の演奏家のなかでは、イアン・ボストリッジとトーマス・ツェートマイヤーが好きです。

──日本の印象、聴衆の印象をお聞かせください。

初めて日本を訪ねたのは確か2004年、「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」に参加したときでした(編注:この年は倉敷市で開催。プリッチンが優勝)。まるで別の惑星に来たみたいに、すべてが異なりました! どこへ行っても、日本のような聴衆を見つけることはできません。その素晴らしさは世界的に知られています。日本でのコンサートは、まるで150年前、ベルリンでヨーゼフ・ヨアヒムがベートーヴェンの弦楽四重奏曲を弾いたときのようで、人々が演奏のどんな細かいところも聴き逃すまいと、固唾をのんでいたときを彷彿とさせるのです。日本で演奏できることをいつも光栄に思っています。

──さまざまなピアニストと共演されていますが、初めての共演者と弾くときにどんなことを考えますか? 共演の条件や選曲のこだわりはありますか?

いい質問ですね! 私にとって、共演者と共鳴するための適切なプログラムを選ぶことは、とても重要です。たいてい、まずは二人が合意する1曲を探します。それから良い組み合わせとなる曲を考えます。私は共演者と話し、ディスカッションし(これによってお互いをより知ることができます)、二人ともが気に入ったプログラムを完成させます。私は、常に新しいアイディアや弾いたことのないレパートリーを探し求めているので、プログラムを決めるプロセスはとても楽しいのです。

──音楽家として譲れない信念はありますか?

音楽は文法とルールを持つ言語です。無意識にナンセンスな演奏をしているのを聴くと、とても悲しくなります。

──音楽に触れている時間以外では、どのようなことをするのがお好きですか?

練習したり教えたり勉強したりすることに忙しく、音楽を聴く時間すら十分にとれていないので、答えるのが難しいですね(笑)。珍しい楽譜、例えば初版などを集めるのが好きなんですよ。

──トッパンホールは、コパチンスカヤの日本のホームホールでもあります。ムジカエテルナでは、コンサートマスターとして彼女と共演されましたが、彼女から受けた影響や感じたことはありますか?

パトリツィアは、パフォーマンスの限界を超え、音楽と聴衆との間にある壁を破る、ユニークな才能の持ち主です。私たちの多くは、彼女から自由と表現力を学んでいると思います。特別な人を真似しようとしても無駄ですが、彼女のエネルギーと、新しい世界を拓こうとする弛まぬ探究心は素晴らしいです!

──今回のプログラムの聴きどころ、そしてトッパンホールのお客さまへメッセージをお願いします!

〈エスポワール スペシャル〉という素晴らしいシリーズに出演する機会をいただき、さらに、とても才能のあるピアニスト北村朋幹さんと共演できることを、たいへん嬉しく思いますし、感謝しています。プログラムはいずれも、極めて近い時代に書かれていて、その頃の世界がどうであったかを如実に現し、バラエティに富んだ表現で私たちに示してくれる、特別な作品たちです。メトネルでその時代の郷愁を感じる一方で、ヤナーチェクの音楽からは、平和を切望する男の苦悩と狂気の世界が垣間見えます。ラヴェルでは自分自身に調和を見出し、エネスクではルーマニア民俗音楽の野性的な美しさの中に深々と飛び込んでいきます。
トッパンホールの聴衆の皆さんと、このエキサイティングな旅ができることを願っています!

〈共演に寄せて──北村朋幹〉

ピアニストとして活動していて最も嬉しいことは、あらゆる楽器と対話のような共演ができること、そして音楽をしていたが故に出会うことになる人がいることです。

アイレン・プリッチンの名前は、数年前から色々な方が口にするのを聞いておりました。なかには、もしかしたら合うのではないかと仰ってくださる方もいたのですが、僕はまだ彼の生演奏に触れたことがありません。
しかし今回、トッパンホールさんからいただいた共演のお誘いに添えられた、彼からの3通りの曲目案を拝見し、そのとても美しい独自の感性に心から惹かれました。

メトネルのソナタからリサイタルを始めようと誘ってくれる人が、どこにいるでしょうか。また、エネスクの3番という、触れるのも躊躇うほどの恐ろしい名作に初挑戦するのに、これほど素晴らしい機会はあるでしょうか。実はこの2曲はそれぞれ別案に入っていたのですが、どうしてもその両方を演奏したいという僕のわがままを叶えてもらうべく、間の2曲と共にご提案したところ、快く受け入れていただくことができました。

メトネルもヤナーチェクも、どこか遠いところにある懐かしい手触りがあり、そして心の柔らかいところにいつまでも残るような歌が満ちています。まだ学生であった若きラヴェルが書いた通称“遺作”ソナタの、初演のヴァイオリンを弾いたのは、他でもないエネスクです(諸説あるようですが)。

チャットでの何気ない会話(返事のスピードが驚くほど速い!)からも、強いこだわりと、開いた心が同居した音楽家であることが分かります。
作品、人…新たな出会いを今から楽しみにしています。

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