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2017/07/28 | KAJIMOTO音楽日記

●ピーター・ゼルキン、来日!―― ちょっと教えましょう、秘密の(?)調律




巨匠ピーター・ゼルキンがいよいよ来日。八ヶ岳高原音楽堂のコンサートを皮切りに日本ツアーが始まりました。
次は8/1(火)はすみだトリフォニーホールでのリサイタル。J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」を弾きます。

ところで、知る人ぞ知る(?)実は本人も「そんなに皆さんに知らせることじゃないよ」と言っているのですが、いやいや秘密にしなくてもいいことなので、ここでお教えしてしまいましょう。
ここ数年、ピーターからは弾くピアノに特殊な調律をするように頼まれます。「ミーントーン」という滅多に使われないものなのですが、これについて、実際にピーターのコンサートで調律をなさっている、外山洋司さんが説明してくださいました。

ちょっと専門的ではありますが、よかったらぜひお読みください。

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 現在モダン・ピアノの演奏会ではそのほとんどが「平均律」で調律されていますが、ピーター・ゼルキン氏はこの数年「1/7シントニックコンマミーントーン」という調律法で演奏会を行っています。この調律法が平均律とどのような違いがあるのかを簡単にお話ししてみましょう。

 まず音階の仕組みですが、基本となる音(この場合Cとします)の弦の長さを半分の1/2にするとオクターブ上のC音が出来ます。このオクターブ関係にある音は同時に鳴らした際、唸りの無いハーモニー(純正)とならなければなりません。
 次に基本のC音の弦を2/3の長さにすると5度音程上のGの音が出来ます。
 ここで出来たGの弦長をさらに2/3にすると5度上のD音が出来ます。このDはオクターブ高い音となりますので弦長を2倍の長さにしてオクターブ下のDとします。これでC D G…ドレソと3つの音階が出来たことになります。
 同様にDの2/3はA、Aの2/3はE…というふうに次々とこの純正5度を積み重ねていくことでC G D A E B F♯ C♯ G♯ E♭ B♭ F C と1オクターブ(C~C)に12の音階が出来上がります。
 こうして純正5度を積み重ねて造られたオクターブは、唸りの無いハーモニーとはならず、半音の約1/4(24セント)広くなり、オクターブをはみ出してしまうのです。先にもお話しした通りオクターブは必ず純正でなくてはなりません。この問題をどのように解決するのか…ということでこれまで様々な調律法が考案されてきました。

 「平均律」はこのはみ出した24セントを12等分し、各5度を2セントずつ狭くした5度(約2秒に1回の唸り)を積み重ねて純正オクターブを実現した音階です。調律はこのように各音程間の唸りの数を加減しながら音階を作ります。平均率ではどの調でも同じ唸りを発し、転調をした際も均一に響きます。
 一方、今回お聴きいただく「1/7コンマミーントーン」は5度の唸りは平均律より多く(約1秒に1回の唸り G♯~E♭の5度のみが約1秒に4回の唸り分広い)してありますが、♯や♭の調合の少ない調性では平均律に比べ3度の唸りが少なく、穏やかなハーモニーで柔らかく響きます。逆に調号の多い調性の時は3度の唸りが平均率より多く、緊張感のある響きとなります。
 このように各調により緩急あるハーモニーの違いを聴かせることが出来ます。

 今回のプログラムでもこの調律法がどのような響きを与え、ゼルキン氏がそれぞれの曲を聴かせてくれるのか楽しみです。

 

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