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2017/01/18 | KAJIMOTO音楽日記

●続いて「ワールド・ピアニスト・シリーズ2017」もまもなく先行受付開始!


昨日アップいたしました「ワールド・オーケストラ・シリーズ」に続き、
こちらもお待たせいたしました、今年の「ワールド・ピアニスト・シリーズ2017」(WPS)は4人。
以下のラインアップ、そして発売日がようやく決定致しました!


【ワールド・ピアニスト・シリーズ2017】

6月8日(木)19:00 紀尾井ホール
ハオチェン・チャン

シューマン: 子どもの情景 op.15
シューマン: 交響的練習曲 op.13
リスト: 超絶技巧練習曲集S.139から 第5番「鬼火」/第12番「雪あらし」
ヤナーチェク: 霧の中で
プロコフィエフ: ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調 op.83 「戦争ソナタ」

6月22日(木)19:00 紀尾井ホール
ダン・タイ・ソン

ショパン: 前奏曲 嬰ハ短調 op.45
ショパン: マズルカ集から
ショパン: スケルツォ第3番 嬰ハ短調 op.39
リスト: 巡礼の年第1年「スイス」から ジュネーヴの鐘
リスト: ベッリーニ「ノルマ」の回想
シューベルト: ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960

7月4日(火)19:00 すみだトリフォニーホール
ネルソン・フレイレ

J.S.バッハ(ブゾーニ編): コラール「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」BWV639
J.S.バッハ(ブゾーニ編): コラール「来たれ、創り主にして聖霊なる神よ」BWV667
J.S.バッハ(ヘス編): コラール「主よ、人の望みの喜びよ」BWV147
シューマン: 幻想曲 ハ長調 op.17
ドビュッシー: 子どもの領分
ショパン: ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58

■主催:すみだトリフォニーホール


10月20日(金)19:00 サントリーホール
イーヴォ・ポゴレリッチ

モーツァルト: アダージョ ロ短調 K.540
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」
リスト: 超絶技巧練習曲第10番/第8番「狩」/第5番「鬼火」
スクリャービン: ピアノ・ソナタ第3番 嬰ヘ短調 op.23
ラヴェル: ラ・ヴァルス

カジモト・イープラス会員限定先行受付
1月28日(土)12時 ~ 31日(火)18時  ●お申し込み
一般発売
2月1日(水)10時 ~ 3日(金)18時  ●お申し込み


WPSの方も駆け足で。




6月はアジア出身の2人のピアニストです。
中国出身ハオチェン・チャンは2009年のヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝した(辻井伸行と2人)ことで注目されましたが、私が「おっ!?」と思うのは、ラン・ラン、ユジャ・ワンと同じくアメリカに渡ってカーティス音楽院に入学、学長のゲイリー・グラフマンという名教師に学んでいることです。どうやらカーティスという学校の特徴らしいのですが、レオン・フライシャーとともにグラフマンも、奏者の個性とともに音楽の「内容」を大切に、それに即した演奏をしていくことに重きをおく指導をする、ということで、なるほど3人は同じ中国出身といえど三者三様。
ハオチェン・チャンはマゼールに賞賛されたという「巨匠のような」テクニックももちろんですが、前回のリサイタルの時に弾いたシューマンの「クライスレリアーナ」で特に印象的だったのは、幻想を拡げ、一方底へ深く潜っていくような真摯な音楽への態度。それがまた優美な印象を伴います。華々しい技巧を発揮するところと、祈るように沈潜していくコントラストが大きいのです。
それと今回もそうですが、時代や地域を超えて、幅の広いバランスのとれたプログラミングをすることですね。今回もシューマン、リスト、ヤナーチェク、プロコフィエフと偏りがなく、その分「曲に相応」した、スタイルを弾き分ける演奏が求められるわけですが、それを果敢にモノにするのがハオチェン。ぜひ今度も期待したいところです。




続いてベトナム出身のダン・タイ・ソン。
彼については多くを説明しなくていいですよね。1980年のショパン国際コンクール優勝者で(アジア人初)、とにかく音の美しいピアニストです。その美しさは西洋のピアニストのそれとはちょっと質感が違っていて、「清冽」というのか、清らかにせせらぐ山間の湧水のように澄み切ったもの。音だけでなく、ダン・タイ・ソンの「人」そのものも謙虚で澄んだ人なのだろうなあ、と思わせ、心洗われる・・・。こうした音と演奏ですから、ショパンのほか、フォーレやドビュッシー、ラヴェルで人気を博したのも当然。(それに、ベトナムは旧フランス領でしたから、フランス文化というものが根付いている、という背景も。そして彼は現在モントリオールに在住)

ところで今回のプログラムで目を引くのはシューベルトの最後のソナタを弾くことと、リストの作品です。
後者の、演奏によってはケバケバしくなってしまう作品がきっと清潔なものとして気持ちよく響くのでは?という興味と、前者シューベルトのあの深遠の美を湛えた、音楽史上屈指のソナタをついにダン・タイ・ソンが弾くのか!と。
先に書いた清澄の美がこの音楽に活きないはずもなく、また彼自身もこのソナタの魂の深淵を通ることで、また違った面が発現したり、ひとまわりもふたまわりも大きな存在になるのではないか?と想像しないではいられないのですが、それは私だけでしょうか?




ネルソン・フレイレが日本でソロ・リサイタルを開くのはなんと12年ぶり。

この大家中の大家を聴いてまず耳につくのは、なんといっても驚異的に鮮やかなピアニズム。どんなパッセージでも音の粒がきれいにそろい、生き生きとした躍動感と力強さ、この精度と迫力たるや唖然とするほどです。清潔なレガート、澄み切ったピアニッシモ、音色の透明で柔軟な美しさといい、ピアノを鳴らす上での技術が格段で、それだけでも星の数ほどいる今時の、あるいは往年の大ピアニストの中でも抜群の一人です。こういう人が1940年代前半にアルゲリッチ、バレンボイム、ゲルバーらと一挙に南米で生まれたというのはまったく自然の驚異のようで、彼らはそして今でも変わらず、加えて本物の「大家」となっています。
その中でフレイレは、演奏に「凄み」よりも「優しい」風情を漂わせ、にもかかわらず、一歩ステージに踏み出ると誰よりも静かに大家の風格が聴衆を包みます。

前回来日したのは、シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とベートーヴェン「皇帝」を弾いた2014年。冒頭の輝かしいカデンツァから、ああ、このピアニストはそんじょそこらの人とは違う、選ばれし巨人!という音と音楽の深い手ごたえ、あふれ出て誰も止めることのできないコン・ブリオ・・・、これは世界屈指のピアニストへの期待に違わぬ素晴らしいものでした。
今度のリサイタルでのプログラム。懐かしいですね、往年の巨匠たちの多くが、聴衆の心を静かに落ち着かせるように、祈りをこめてこうしてバッハのコラールから始めたものでした。それからフレイレが若い時から十八番にしているシューマン、そしてドビュッシーとショパンというピアニストにとっての最高のレパートリーが続きます。
ピアノ好きの方々に、いや音楽を愛する方々には必聴の公演と思います。




昨年末に、またまた・・・いや今度はポジティブな・・・大反響を巻き起こしたポゴレリッチが、再び今年も来日します!

「だって彼は天才よ!」
今更改めて引き合いに出すこともないのでしょうけれど、1980年のショパン・コンクールで彼がファイナリストになれなかったことに審査員の一人アルゲリッチが放ったひと言です。そして程なく世紀の鬼才イーヴォ・ポゴレリッチは世界のスターダムに駆け上がりました。しかし現在までの道のりは平坦ではなく、90年代終わりから2000年代初頭は紆余曲折に満ちていたわけです。元々テンポやフレージング、声部のバランスが独特で、聴き慣れた曲がまったく違ったものに聞こえるほどの法外な才能でしたが、その「解体・再構成」は人生の危機により、極端な‟カオス“と化して聴衆を戸惑わせたのでした。その間ファンの議論がやむことはありませんでした。

 しかしポゴレリッチは帰ってきました!2010年にはその兆しがあり、昨年12月の来日公演では彼の独自さがすべてにプラスへ作用。ショパン、シューマン、モーツァルト、ラフマニノフ・・・以前とは違う、光輝くロマンティシズムに包まれ、圧倒されたことは聴かれた方々にはまだまだ記憶に新しいところでしょう。
そして今度のプログラムは古典からロマン派、近代まで網羅したものですが、形式に囚われてはいけません。なぜならポゴレリッチの演奏会には、いつもまったく新しい感動体験が待っているのですから。
 

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