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2014/02/27 | KAJIMOTO音楽日記

●シャイーとの二人三脚!映像作家シュマルツニに訊く:「コンサートを生きるという強烈な体験をリクリエイトしたい」

アバドの「ポートレイト」、バレンボイムの「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」、また「エル・システマ」の演奏やドキュメンタリーなど、受賞作も多く、注目すべき映像作品を精力的に手掛けているパウル・シュマルツニ。
ACCENTUS Music(ライプツィヒ)代表で映像作家のシュマルツニは現在、リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による「マーラー交響曲全曲シリーズ」の収録を続けています(詳細はこちら)。
昨11月、来日したシュマルツニを直撃!シャイー&ゲヴァントハウス管による3月の「マーラー:交響曲第7番」公演(東京&京都)に先駆け、興味深いお話しを伺うことが出来ました。
(このインタビューの全文は、当日の公演プログラムでお読みいただけます)




――まずは貴方についてお聞かせください。アバド、バレンボイム、ブーレーズ、アルゲリッチ等、世界的な演奏家たちの演奏映像やドキュメンタリー映像を発表し続けているシュマルツニさんですが、ご自身では演奏なさるのですか?

★アバド&モーツァルト管(ザルツブルク音楽祭)


両親はプロの音楽家ですが、私自身は演奏はしません。学生時代には文学、言語学、芸術等を学びました。仕事として音楽と密に関わるようになったのは、パリで映像プロデューサーとして活動するようになってからです。元々は演劇をよく撮影していましたが、その後に対象をクラシック音楽にシフトしました。


――貴方の映像作品の対象の多くがオーケストラです。初めての「オーケストラ体験」は記憶に残っていますか?

幼い頃、ミュンヘンで両親に連れられ、オーケストラの公演によく足を運んでいました。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏に初めて触れた時のことは明瞭に覚えています。1970年代の始め、レーゲンスブルクでの公演です。指揮は当時のカペルマイスター、クルト・マズアでした。ソリストはクレーメルとグリンデンコ、曲はバッハの協奏曲だったと記憶しています。強烈な感銘を受けました。


――そうして今では、ゲヴァントハウス管の現カペルマイスターであるリッカルド・シャイーはじめ、前述のアバドやバレンボイム等の真の「マエストロ」たちとお仕事を共にしていらっしゃいます。彼らとの共同作業の醍醐味とは、ずばり何でしょうか。

各映像プロジェクトによって性格が異なりますので、一概に申し上げるのは難しいのですが、やはり最もエキサイティングなのは、文字通り「全身全霊」で、「これ以上素晴らしい演奏はできない」という最高の域にまで自らの演奏を高めようとする演奏家の姿に、直に接する時ですね。

★バレンボイム&シュターツカペレ・ベルリン



――そして貴方が現在、プロデューサーとして全指揮を執っている映像プロジェクトの一つが、シャイー指揮ゲヴァントハウス管のマーラー・プロジェクトですね。マーラーの交響曲全曲の演奏をDVDとして発表していく計画だと伺いました。ゲヴァントハウス管と生前のマーラーの密な関係を思い起こすと、わくわくします。どのような背景でスタートしたのでしょうか。

2011年にマエストロ・シャイーと共に始めた映像プロジェクトです。2011年といえば言わずもがな、マーラーの没後100年の節目ですね。前年の2010年が彼の生誕150年を祝う年でしたので、マーラー関連の様々なイベントが2年にわたり、各地で行われていたことはご存じかと思います。当然、マーラーが活躍したライプツィヒもこれに漏れず、2011年にライプツィヒ・マーラー・フェスティバルが盛大に催されました。この時、シャイーとゲヴァントハウス管がマーラーの交響曲第2番と第8番を演奏しました。これを映像化したのが、私たちのDVDプロジェクトの始まりです。当初はチクルスとして映像を発表していく予定はありませんでした。シャイーとゲヴァントハウス管の第2番・第8番の演奏がいずれも素晴らしく、手前味噌でお恥ずかしいのですが――良い映像に仕上がりました。そこで、これなら折角だから全交響曲を映像で残そう、ということになったのです。

★シャイー&ゲヴァントハウス管:マーラー交響曲第8番



――第1番から順に演奏していないのはそういう理由なのですね。

その後すぐに第4番と第6番を撮影しました。これに続いたのが2013年の第5番と第9番の撮影です。2014年に第3番と第7番、2015/16年に第1番と第10番を撮ろうということになっています。

★シャイー&ゲヴァントハウス管:マーラー交響曲第6番



――ところで、シャイーはすでにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマーラーの全交響曲の録音を残しています。

マーラーの音楽はマエストロ・シャイーの音楽家としてのキャリアの基盤でしょう。かつてのコンセルトヘボウ管との録音と今回のゲヴァントハウス管とのそれは当然、全く異なります。有名な「アダージェット」楽章を比較するだけでそれは手に取るように明らかです。テンポはゲヴァントハウス管版のほうが速いですし、色彩も解釈も違いますから。テンポといえば・・・マーラーと直接交流をもった往年の巨匠たち、メンゲルベルクやワルターが指揮したマーラーの交響曲の録音を聴き直してみると興味深いですよ。当時は快活な速さで演奏されていたマーラーの交響曲が、その後、時代とともにどんどん遅くなったのだと気付かされます。近年のシャイーのテンポ設定からは、マーラー演奏のルーツ、言い換えればマーラー自身の意図に立ち返ろうという意志を読み取ることができるわけです。


――興味深いですね。シャイーのマーラー演奏を追いかけてきて、他にお気づきになったことはありますか。

私はすでにクラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団によるマーラーの演奏をフィルムに収めています。「全」交響曲は網羅していません。例えば第8番の映像はアバドの意志で存在しませんし、第10番は一楽章「アダージョ」しか残っていません。これは、シャイーとは異なり、アバドが(マーラーが未完で残した)第10番のクック補筆版を認めていないからです(訳注:本インタビューはアバドの逝去前に行われた)。前置きが長くなりましたが・・・ご存じのとおり、シャイーは若い頃にアバドのアシスタントを務めていましたし、二人の間にはたくさんの共通点があります。それでもやはり、二人のマーラーの音楽へのアプローチは、全く異なるのです。うまく言葉にするのは難しいのですが、誤解を恐れずに言えば、シャイーのマーラーは20世紀後半の演奏スタイルを象徴・統合するもの、シャイーのマーラーは、21世紀の、よりモダンな――色々な意味で――それと言えるでしょう。

★アバド&ルツェルン祝祭管:マーラー交響曲第9番



――演奏家の旅も容易になり、世界中で生演奏を聴く機会は増えています。そのような時代にコンサートの映像を撮り続ける貴方の背中を押すものがあるとすれば、それは何でしょうか。

もちろん、生演奏の臨場感をそっくりそのまま映像で再現できるとは微塵も思っていません。しかし、もしもベストを尽くせば、コンサートを生きるという強烈な体験を多少なりともリクリエイトできると信じています。そういう意味で、私の仕事は翻訳作業に似ているところがありますね。なぜ、そしてどのように、マーラーの音楽世界を視覚的に表現すべきなのか。どうしたらフィルムを介して、マエストロ・シャイーやゲヴァントハウス管の高い芸術性を伝えることができるのか。そうした問を自身に投げ続け、事前準備やサウンドの質にも徹底的にこだわります。資料としての映像に留まるのではなく、音楽家の身体を通して生まれる演奏の真のクォリティや、それを支えるパワーを視聴者に伝えたい。それが私の情熱です。


ACCENTUS Music リリース作リスト


<ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 2014年ツアースケジュール>

指揮: リッカルド・シャイー
ピアノ: ネルソン・フレイレ(3/17)
ヴァイオリン: 五嶋みどり(3/18、19、21)

■2014年 3月17日(月) 19:00/東京 東京オペラシティ 【プログラムA】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 3月18日(火) 19:00/川崎 ミューザ川崎シンフォニーホール 【プログラムB】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 3月19日(水) 19:00/大阪 フェスティバルホール 【プログラムB】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
*フェスティバルホール オープニングシリーズ

■2014年 3月21日(金・祝) 18:00/東京 サントリーホール 【プログラムB】 ※完売
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 3月22日(土) 17:00/京都 京都コンサートホール 【プログラムC】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 3月23日(日) 18:00/東京 サントリーホール 【プログラムC】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960


【プログラムA】
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」 (ピアノ:ネルソン・フレイレ)
        * * *
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

【プログラムB】
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 (ヴァイオリン:五嶋みどり)
     * * *
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

【プログラムC】
マーラー: 交響曲第7番 ホ短調 「夜の歌」

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