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2012/10/24 |

★ポリーニ・パースペクティヴ開幕!初日を聴いて。

これこそがポリーニの「熱情」だ!。
・・・のっけから個人的な興奮調で恐縮ですが。・・・偽らざる気持ちです。


いよいよ昨日10/23から開幕した「ポリーニ・パースペクティヴ2012」。ベートーヴェンと現代の音楽と並置することで、古典でも現代作品でも「新しいことをしよう!」という革新意識には通じるものがある、ということを展望(パースペクティヴ)し体感してほしい、とポリーニが強く願うプロジェクトです。

初日は「ベートーヴェン――マンゾーニ」。
1932年生まれのイタリアを代表する作曲家、ジャコモ・マンゾーニの「Il rumore del tempo」(直訳すれば“時のノイズ”)が前半に演奏されました。ソプラノが歌うロシア語、ドイツ語、イタリア語による抽象的で悲しみを含んだ無調的な歌に、ヴィオラが、クラリネットが、パーカッションが絡み、ピアノが間奏曲的に奏され、全員がいっぺんに鳴らされることはほとんどない、ストイックで室内楽的な曲です。もしかすると現代の私たちの耳で聴くとそんなに斬新さや奇抜さはないかもしれませんが、大家の筆による確固たる深さをもった「前衛」姿勢が感得できたような気がします。
また全体に、響きの厳しさに反してゆったりとしたカンタービレが感じられるのが、不思議な落ち着きを醸し出していました。

演奏者ですが、かの無敵の現代音楽演奏集団アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーら、さすがにポリーニの眼鏡にかなった人たちで(もちろん名高い人たちですし)、初めて聴き手が接する曲、特にこういう(一見)複雑な音楽は最高の腕前の演奏者たちにして明確に伝わる、というテーゼが証明されたのでは?
客席にいたマンゾーニ氏がステージ下まで呼び出され、演奏者たちと何度も握手を交わし、それを盛大な拍手で讃えるお客様・・・・・・という様子は実に清々しいものがありました。

***

さて、休憩後はマウリツィオ・ポリーニの弾くベートーヴェンのソナタ第21番「ワルトシュタイン」、第22番、第23番「熱情」。
前半のマンゾーニ作品を聴いた後、私には「ベートーヴェン」が違った聞こえ方・・・単独で聴くのとは違った角度からベートーヴェンを見られたように感じました。―― ただ、これは人によってかなり異なることと思うので、一概には言えないことですが――。私の持っている個人的感覚のせいかもしれませんし、ポリーニの演奏によるものかもしれませんが、ベートーヴェンのソナタが普段より、創意に充ちた先鋭的な音楽に聴こえたのは確かです。

ところでお客様の中にもそう仰っていた方が多かったですが、マエストロ・ポリーニの「姿」、ステージでの老いた感じの様子には少し驚きました。そして演奏も(ここ数年感じていたことではありましたが)少しばかりエンジン全開まで時間を要するようになってきたようです。
日本では実に31年ぶりとなる、最初の「ワルトシュタイン・ソナタ」の第1楽章提示部あたりまで、音が小さかったり、ダイナミクスの幅が拡がらなかったりしていましたが、段々熱がこもってくるのに同調して音量、音のキレともに上がってきて、深みのあるアンダンテ楽章を経た後のフィナーレではほぼ万全の響きになってきました。(私なぞはそこでようやく安心した、というのを告白しておきます。)

そしてここ数年、何というのでしょう、演奏の「一筆書き」的(?)な感覚が増している気がします。休符や楽章間もたっぷり息をつくことなく、前へ前へ、流麗に音楽が駆け抜け、曲全体が一篇の“歌”のように聴こえるといいますか・・・。それも音色の純度(これはポリーニのタッチの特質プラス、ファブリーニさんの調律したピアノのおかげ?)と相まって、美しく輝く歌です。

次の「ソナタ第22番」が面白かったです。滅多にコンサートで聴けない曲ですし、ポリーニも日本で弾くのは初めて。可憐な第1楽章と、泡立つような無窮動風の第2楽章。これも“一筆書き”で力沸き立つ不思議な時間でした。
(次回ポリーニが出演する11/2には「ソナタ第25番」が演奏されます。これもまず演奏されない曲ですし、なおかつポリーニにとっては1978年以来の演奏となりますが、この分だと同様に新鮮な体験が出来そうです。)

さて、この2曲を経て最後に来たのが、冒頭に書きました「熱情」ソナタ。ここへきてタッチと音色の冴え、力感は完全に自分たちの知るいつものポリーニで、以前と――私なぞは20数年前になりますが――本当に変わりません。両端楽章の息もできないようなキリキリ張り詰める緊張感、「熱い」明晰、衝迫感、迫真の圧倒的な興奮が、彫刻作品のようなアポロ的に美しい演奏フォルムとせめぎ合い、どんどん会場の空気が変わっていきます。
その間にはさまれた第2楽章の、ぐんぐん高みへ登っていく祈りの清澄な響きには、ほかに代え難いものがありました。


割れんばかりの満場の拍手と、総立ちの大歓声に包まれるマエストロは本当に幸せそうです。自分の「伝える」使命を全うする充実した笑顔なのでしょうか。

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思った以上にスリリングなこの「ポリーニ・パースペクティヴ」です。
今日の室内楽公演を含め、あと5回。
きっと得難い体験が出来、お聴きになられた方の内面に新しい世界が拓けるコンサートとなると思いますので、ぜひ多くの皆様のご来場をお待ちしております!


チケットのお申込みはこちらまで (ポリーニ・パースペクティヴ特設サイト)

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