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2011/07/08 | KAJIMOTO音楽日記

●ピーター・ゼルキン「A to Z」パート3:ピーター誕生!

8月に東京でのリサイタルと「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」への参加のため来日するピアニストのピーター・ゼルキン。
この「A to Z」は、「ピーターのこと、あまり知らないな~」という方々に、"ピーター通"になっていただこうという連載です!
***




これまでピーターの父ルドルフ・ゼルキン、そして祖父アドルフ・ブッシュを特集してきたわけですが、本日第3回目のテーマは、ついに「ピーター誕生!」

1947年7月24日ニューヨーク生まれの亥どし&獅子座のピーターですが(誕生日、もうすぐです)、彼が大ピアニストのルドルフ・ゼルキンを父に、そして大ヴァイオリニストのアドルフ・ブッシュを祖父に持つサラブレットであることは、前回ご紹介したとおりです。

(とはいえ、ピーターが「親の七光り」とは縁のない芸術家であることはいうまでもありませんが。)

さて、「幼少より、大ピアニストの父から最初のピアノの手ほどきを受け・・・」と語り始めたいところですが、
実はピーターの最初のピアノ教師は彼の父ではありません。
まずピアノを習ったのが、リー・ルヴィージというアメリカ出身のピアニスト。ルヴィージは父ルドルフとホルショフスキーの弟子でした。
1958年、11歳でカーティス音楽院に入学したピーターは、今度は父ルドルフと、そしてほぼ100歳まで現役を続けた(日本でも大変人気があった)かの大ピアニスト、ミェスチワフ・ホルショフスキーに師事することになります。
ピーターは、師ホルショフスキーの指導法について以下のように振り返っています。

「先生でもホルショフスキーのような人は、押しつけることはしませんでした。彼の教育はとても心の開けたもので、とても探求的なものでした。法則を押しつけるものではなく、とても創造的なものでした。彼が言うには、彼の先生のレシェティツキもそんなだったとのことです。ですから、自分自身でいかに考えるかを学ぶことの方が多かったのです。それは、常に新たなプロセスとなるのです。はっきりいえなくて申し訳ないけれど、非常に伝統的なものとの混じりあったものでした。」
(「CASALS HALL FRIENDS 23・24」1990年11月30日発行号より)

ピーターにとっての、音楽家として後に個性が開花していく鍵は、こういった自立したアーティストを育てる自由な環境、そして彼自身の家庭――ゼルキン家では音楽は一切強制されなかったといいます――にあるのかもしれません。

その後、ピーターはカール・ウルリッヒ・シュナーベル(アルトゥール・シュナーベルの息子)にもピアノを学んでいます。ピーターの演奏の特徴のひとつに、音が発せられた後の響きに最後まで心を配る、そのために鍵盤上の指やペダル上の足まで振るわせる、という興味深いところがありますが、これはシュナーベルに学んだことです。

さて、ピーターの舞台デビューは父ルドルフ主宰のマールボロ音楽祭(1959年:12歳のとき)。プログラムは指揮者アレクサンダー・シュナイダーとの共演によるハイドンのピアノ協奏曲でした。
その後はジョージ・セル指揮クリーヴランド管との共演でカーネギー・デビュー(14歳)。このときは父ルドルフとの共演でモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」のソリストを務めています。

やがて1966年にはソロ・アルバム『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』で19歳にしてグラミー賞「最優秀新人賞(クラシック部門)」を受賞することになります。
父ルドルフが若き日にアンコールで「全曲」を弾いてしまった「ゴルトベルク変奏曲」のエピソードは前々回に書きました。ピーターもまた、この曲を若き日からレコーディングして評価され、しかも彼はその後2度もこの曲を再録音していて、これはやはり血のなせる業なのでしょうか? しかし親や祖父に世界に冠たる大音楽家をもつ、ということは私たちが考える以上のプレッシャーや、一方で反抗心があったであろうことも想像できます。

18歳で親元を離れ、ニューヨークで一人暮らしをはじめたピーター。
彼が青春を過ごした60年代のアメリカは、建国以来最もはやいスピードで経済的な繁栄を続けていました。しかし一方では、モンスターのごとく社会をコントロールする高度資本主義経済やアメリカ式合理主義への疑問、既成の文化への反抗心がアメリカの若者たちの間で芽生えます。
こうした激動のアメリカで、大ピアニストの父と同じ道を歩み始めたピーターには、いかなる心境の変化が起こっていくのでしょうか?

次回は、~ピーター・ゼルキン「A to Z」パート4:ピーター=ヒッピー?です。お楽しみに。



【ピーター・ゼルキン ピアノ・リサイタル】
8月31日(水)7時 東京オペラシティ コンサートホール
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ピーター・ゼルキン プロフィール


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