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2011/06/19 | KAJIMOTO音楽日記

●同時代、その名演に立ち会える幸せ ~ゼルキンの「ディアベッリ」リサイタル、米で高評価~




「サイトウ・キネン・フェスティバル松本2011」への参加と、8月31日(水)の東京オペラシティでのピアノ・リサイタルを控えているピーター・ゼルキンの来日が、刻一刻と近づいています(梅雨があければ夏はすぐそこですね!)。
今回の東京公演の目玉はもちろん、2003年の来日の際に彼が名演を披露し、「伝説」とも騒がれたベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲」。リサイタル前半には、シェーンベルクの「3つのピアノ曲op.11」ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第31番変イ長調」がプログラミングされています。
みなさまご存知の通り、ピーターの父で大ピアニストのルドルフ・ゼルキンが作曲を師事した人物こそ、このアルノルト・シェーンベルク。さらにベートーヴェンの晩年の冒険的な作曲スタイルが、シェーンベルク初期の実験的なこころみに多くの影響を与えていたことを思うと、今回のリサイタルのプログラムが少し立体的に見えてくるのではないでしょうか。

さて、ピーターはこのエキサイティングなプログラムを携え、海外ですでにリサイタルを行っています。
本日は、今年2月にアメリカ・カリフォルニア州のサンタバーバラで開かれた彼のリサイタルのレビューをご紹介します!

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ゼルキン、ロベロ劇場でシェーンベルクとベートーヴェンを演奏


 音楽出版者・作曲家のアントニオ・ディアベッリは、ある平凡なワルツのテーマを元に変奏曲集を作るという試みをベートーヴェンに持ちかけた。1819年にベートーヴェンがこの依頼を受けた時には、いかなる結果が生じるかは未知だった。他の作曲家たちもこの依頼を引き受けたが、彼らは多数の作曲家による共同作品集のために各自1曲を提供しただけである。このアイデアを超越したベートーヴェンは、33曲から成る変奏曲を完成させる―多くの人々が史上最高のピアノ曲とみなすことになる作品の誕生である。その舌を巻く複雑さと和声の創意という点において、「ディアベッリ変奏曲」は、アーノルト・シェーンベルクの言葉を借りるなら「ベートーヴェンの最も大胆な作品」(著書『和声の構造的機能』より)である。火曜夜にロベロ劇場で開かれたピーター・ゼルキンの素晴らしいリサイタルの中心曲が、音楽の記念碑ともいえるこの作品だった。

 リサイタルはシェーンベルクの「3つのピアノ曲op.11」でスタートした。脅迫的なこの作品は、音楽史上初の完全な無調作品とみなされている。ゼルキンはこの曲の憂うつな雰囲気と形式の自由さをあますところなく伝えた。つづいて彼が演奏したのが、ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第31番変イ長調op.120」である。このソナタはシェーンベルクに多大な影響を与えており、ベートーヴェン晩年の実験的な様式にしばしばみられるフーガの要素と死の暗示に満ちている。リサイタル前半にこの2作品があわせて演奏されると、今夜は忘れられないものになりそうだという印象は確信に変わった。

 リサイタル後半は、ちょうど1時間の演奏時間を要する「ディアベッリの主題による33の変奏曲op.120」に捧げられた。当時いかなる音楽体験をしていた者にも、ベートーヴェンのこの驚くべき力作は真新しく聴こえたことだろう。作品の構造はほぼ理解不可能なのだが、全てのパッセージからベートーヴェンの先見性があふれ出ている。ゼルキンの非の打ち所のないテクニックと驚異の集中は、このうえなく美しい倍音の波の数々を生み出し、ベートーヴェンが作曲当時、どれほど弦楽四重奏と交響曲の分野に精力を注いでいたかを聴き手に思い起こさせた。今世紀にサンタバーバラで開かれた最も印象的なリサイタルのひとつであり、これを凌ぐ公演には今後当分めぐり合えないだろう。

By Charles Donelan

米「サンタバーバラ・インデペンデント」紙(2011年2月18日付)

引用先:http://www.independent.com/news/2011/feb/18/pianist-peter-serkin-recital/



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■ピーター・ゼルキン ピアノ・リサイタル
2011年8月31日 (水) 19:00 開演 (18:30 開場)
東京オペラシティ コンサートホール

プログラム
シェーンベルク: 3つのピアノ曲 op.11
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ベートーヴェン: ディアベッリの主題による33の変奏曲 op.120

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