NEWSニュース

2016/09/05 | KAJIMOTO音楽日記

●各公演地におけるユジャ・ワンの演奏曲目


先に告知をさせていただきましたが、ユジャ・ワンのピアノ・リサイタル・ツアーにつきまして、各公演地でそれぞれ発表されている曲目から変わる可能性がありますので、この欄に公演後、実際に演奏した曲目を順次掲載させていただきます。

また、各会場で販売しております公演プログラムに載っていない曲目解説文についても、ここに併記させていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。





【9/4(日)横浜・神奈川県立音楽堂】
シューマン: クライスレリアーナ op.16
カプースチン: 変奏曲 op.41
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106「ハンマークラヴィーア」


【9/5(月)仙台・日立システムズホール】
シューマン: クライスレリアーナop.16
ショパン: バラード第1番 ト短調 op.23
カプースチン: 変奏曲 op.41
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106 「ハンマークラヴィーア」


【9/7(水)東京・サントリーホール】
シューマン: クライスレリアーナ op.16
カプースチン: 変奏曲 op.41
ショパン: バラード第1番 ト短調 op.23
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106「ハンマークラヴィーア」


【9/9 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール】
スクリャービン: ピアノ・ソナタ第4番 嬰ヘ長調 op.30
シューマン: クライスレリアーナ op.16
ショパン: バラード第1番 ト短調 op.23
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106 「ハンマークラヴィーア」


【9/11 長野市芸術館】
シューマン: クライスレリアーナ op.16
カプースチン: 変奏曲 op.41
スクリャービン: ピアノ・ソナタ第4番 嬰ヘ長調 op.30
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 op.106 「ハンマークラヴィーア」



シューマン:クライスレリアーナ op.16
 シューマン(1810-1856)が婚約中のクララに宛てた1838年4月14日付けの手紙には、次のような一節が見いだせる。「なんと妙なる音楽が僕の心の中に湧きあがり、美しいメロディーが浮かんでくることだろう。……新作をノート1冊分も仕あげたよ。《クライスレリアーナ》と名づけるつもりだ。ここでは、君自身と君への思いが主役を演じているので、君にこの曲を捧げようと思う」。
 《クライスレリアーナ》とは「クライスラーに関すること」の意。クライスラーとはドイツ・ロマン派の作家E.T.A.ホフマン(1776-1822)の一連の著作に描かれた芸術家肌の楽長の名だ。つまりシューマンはクララへの思いを楽長クライスラーに託してここに表現したのである。E.T.A.ホフマンは法律家ながら幻想的作風による多数の小説を発表し、指揮者、作曲家としても活躍した人物で、楽長クライスラーはホフマンの分身だ。文学と音楽に憧れながら一旦は法律家を志し、結局音楽を選んだシューマンにとって、クライスラーこそ自分の心情を重ねあわせるのにぴったりの存在に思えたに違いない。 ホフマンの未完の長編小説《牡猫ムルの人生観》に登場するクライスラーは宮廷顧問官の娘ユリアを恋し、恋敵と闘う。クララとの恋をクララの父ヴィークに妨げられていたシューマンはこの設定に自分を重ね合わせた。曲は全部で8つの小曲から構成され、各曲はほぼ急-緩-急-緩の順に配されている。また各曲は緊密に関連づけられているため、全曲通して演奏されてこそ意味がある。心情的にはクララに捧げられているが、形としてはショパンに献呈された。

(萩谷 由喜子)


ショパン: バラード第1番 ト短調 op.23
ショパン(1810-1849)の「バラード第1番」(1831-35)は、最初にスケッチされてから完成にいたるまで、5年もの月日がかかった作品である。その5年間のあいだにショパンは、パリでデビュー・コンサートを開いて成功を収め、上流階級のサロンに出入りするようになり、マリアに恋をし、ロマン主義思想に触れ、シューマン(1810-56)と出会った。様々な経験を積んだ20代前半、ショパンの傍らには常にこの曲の譜面があったことになる。
両手のユニゾンによるレチタティーヴォ風の序奏。一言一言、語りかけるようなワルツ主題。それは次第に情熱的な調べとなる。ピアニスティックなアルペジオを経て、甘美な第2主題が奏された後、いよいよクライマックスへ向かい、3度目のワルツ主題が登場する。ワルツ主題は力強さを携え、「プレスト・コン・フオーコ(急速に、火のように)と書かれたコーダへ突入。ト短調の音階によって斬新な結びとなる。

(池原 舞)


カプースチン: 変奏曲op.41
 ニコライ・カプースチン(1937-)はウクライナ出身。モスクワ音楽院でピアノを学んだが、在学中からジャズに開眼してクラシックとジャズを融合させた独自の作風で作品を書き始めた。ジャズ・オーケストラと共にソヴィエト国内演奏旅行を展開したのち作曲に専念、ピアノ曲を中心に150曲以上を発表してきた。この変奏曲は1984年作曲。軽快なジャズの主題が即興演奏風に変奏される。終盤はテンポを速め、鮮やかな下降句と上下の和音で結ばれる。

(萩谷 由喜子)

 

PAGEUP