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2015/03/19 | KAJIMOTO音楽日記

●新連載始まります!・・・来日公演に向けて / ロンドン響の現在(1)――サイモン・ラトルのもたらすもの




イギリス最高にして世界屈指のオーケストラ、ロンドン交響楽団(LSO)が巨匠ベルナルト・ハイティンクに率いられて9月に来日します。

その9月に向け、この名オーケストラの現地ロンドンにおける多彩なコンサートについて、概ね1か月に1度、ロンドン在住の音楽ジャーナリスト、後藤菜穂子さんにお書きいただくエッセイがスタート!
ぜひLSOの質の高い、多面的な演奏会の数々を知っていただければ、と思っています。

第1回目は、LSOの新音楽監督にサー・サイモン・ラトルが決定したことと、彼が1月に指揮したLSO公演について。

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 長いこと噂されてきたが、3月初旬、サー・サイモン・ラトルがロンドン交響楽団(LSO)の次期シェフに就任することが発表された。任期は2017年9月からで、音楽監督のポストに就く。LSOの歴代指揮者の中で、首席指揮者(Principal Conductor)ではなく音楽監督(Music Director)のポストを保持していたのはクラウディオ・アバドのみ(しかも任期中1984~87年の3年間だけ)だそうだが、ラトルがLSOの仕事を引き受けるとしたら、単なる首席指揮者ではなく、もっと決定権(および責任)のあるポストを要求するだろうと思っていたので、意外ではない。
 LSOの場合、音楽監督のポストが首席指揮者と具体的にどう違うのかについては明確にされていないが(なお、英国のシンフォニー・オーケストラは概ね首席指揮者のポストのところが多い)、楽団側の発表によればラトルは「音楽監督としてLSOの活動に全面的に関わると同時に、音楽および音楽教育の推進に力を入れていく」ということなので、彼がLSOの将来について、そして英国の音楽シーンでLSOが果たす役割について具体的なヴィジョンを持って率いてくれることはたしかであろう。そのヴィジョンの一つが、最近急に浮上してきたロンドンの新しいコンサート・ホール構想であり、ラトルはさっそく強い支持を表明している。まだこれからフィージビリティ・スタディをするという段階ではあるが、とりあえず政治的な支持は取り付けているようなので、こちらの展開も期待を持って見守りたい(個人的には、ロンドン市民のパリの新フィルハーモニーに対する対抗心もあるのではないかと思うのだが)。

 なお、現首席指揮者のゲルギエフの任期が今年末までなので(最後のコンサートは10月18日のようだ)、そのあと一年半ほどシェフ不在の期間ができるわけだが、その間は首席客演指揮者であるマイケル・ティルソン・トーマスやダニエル・ハーディングのほか、エルダー、パッパーノら常連の客演指揮者を多用することで対応し、ラトル自身ももちろん登場する(ラトルはLSOの2015/16年に5つのプログラムで登場する)。



 今回の就任発表の前になるが、ラトルは1月にLSOを2公演指揮し、筆者はそのうち彼の得意曲であるシューマンのオラトリオ《楽園とペリ》を聴いた(1月11日)。ラトルは以前よりシューマンのオーケストラ作品に強い愛着を抱いており、最近ではベルリン・フィルの自主レーベル第一弾にその交響曲全集を選んだり、また昨年6月のLSOの客演の時もシューマンの交響曲第2番を取り上げたりと、彼にとっていわば勝負時のレパートリーといえるかもしれない。
 シューマンのオーケストラ曲を演奏する上で何よりも必要なのは、オーケストラのテクスチュアをくっきりと浮かび上がらせ、その繊細で情感豊かなハーモニーを引き出すことだと思うが、ラトルはさすがにこの作品を知り尽くしているだけあって、絶妙な響きのバランスとテンポ運びで独唱陣(サリー・マシューズ、マーク・パドモア、ベルナルダ・フィンク、フローリアン・ベッシュ他)、合唱およびオーケストラを率い、異国情緒とファンタジーに満ちたスコアに光を当てた。

 今回の公演だけでラトルとLSOの相性について語るのは時期尚早だろうが、LSOの特色である骨太で輝かしいサウンドと大らかな表現力、そしてプレイヤーたちのフレキシブルで好奇心旺盛な姿勢は、ラトルの音楽作りやレパートリーに合うのではないかと感じた(それに音響の良いホールがあれば最強だろう)。2017年秋からのシーズンが待ち遠しい。


文: 後藤 菜穂子(音楽ジャーナリスト)


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ベルナルト・ハイティンク指揮ロンドン交響楽団の来日公演情報はこちらまで
 

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