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2014/05/25 | KAJIMOTO音楽日記

●公演間近!ネゼ=セガン&フィラデルフィア管の演奏曲目をめぐって(3)~チャイコフスキー




他のところに書きましたように、ネゼ=セガン&フィラデルフィア管、北京公演を皮切りに、いよいよアジア・ツアーが始まりました。この後は上海――本日、ライブ・ストリーミングです!――や深玔、マカオを経て、来週末には日本上陸!
(ところで北京ではタン・ドゥンの曲や、メンバーたちによる室内楽をやっているのです。ちょっと羨ましい・・・)

さて、当コンビと今回の演奏曲目を語る小話(?)の最終回。
チャイコフスキーです。
ロマンティックなチャイコフスキーやラフマニノフの音楽こそ、こってり濃厚で色彩的なフィラデルフィア・サウンドの質感が最も活きるレパートリーでしょう。真打ち的な。

過去のレコーディングを見ても、オーマンディもムーティもエッシェンバッハも、皆チャイコフスキーの交響曲やバレエ音楽を録音し、いずれも名盤として誉れ高いものばかり。(ムーティが1985年の同管との来日で指揮した「第5交響曲」なんて忘れられません。第2楽章や第3楽章の甘い甘い、なんて甘美なカンタービレ!)
デュトワはラフマニノフの交響曲全集を録音していますし、前回2010年の来日公演では、この楽団のためにラフマニノフが作曲した「交響的舞曲」が演奏され、それはそれは豪壮でロマン漂うものでした。
ラフマニノフはロシア革命後、アメリカに亡命して、フィラデルフィア管とは非常に近しい関係にありました(ピアノ協奏曲第2晩、第3番の自作自演の録音は同管と共演)。
そうして考えると、フィラデルフィア管の音のルーツは、一面にはラフマニノフの音楽的体質からの影響、というのもあるかもしれませんね。感触としてちょっと納得できます。

ところで、そんな話に関連して、音楽評論家・満津岡信育さんがご執筆下さいましたエッセイ(今回の来日公演プログラム掲載)から一部引用してみましょう。これを読んで、ちょっとしたインパクトがありました。かつてフィラデルフィア管とラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》を録音したピアニスト、レオン・フライシャーのインタビューで出た話だそうです。
「・・・あの厳格きわまりないジョージ・セルが、クリーヴランド管と《パガニーニ狂詩曲》のレコーディングを行った際に、甘美きわまりない第18変奏にさしかかったとき、手兵の面々に『フィラデルフィア管のように!』と指示したという話が伝わっている。・・・」
ゾクッとしませんか?自分が育て、当代無比の精確さを誇るあのクリーヴランド管に向かって!
(言われた団員たちは、さぞや悔しかったでしょうね)

・・・なんだか話がチャイコフスキーからラフマニノフにそれていってしまっていますが、この2人のロシア音楽がもつ「音の質」の共通、ということでお許しいただきましょう。

「悲愴交響曲」に戻れば、弦楽器の豊麗もさることながら、例えば冒頭のファゴット・ソロを吹くダニエル・マツカワや、第1楽章の中ほどでの「p」6つという最弱音を吹いたり、第3楽章を鮮やかに奏するだろうクラリネットの名手リカルド・モラレスの妙技を想像すると、実に愉しいです。

そして一方、指揮のネゼ=セガンはご存じの通り、昨年ロッテルダム・フィルと「悲愴交響曲」を録音してCDをリリースしています。しなやかに、心から歌うようにスウィングするカンタービレと、この作曲家一流の巧緻を極めたオーケストレーションを、クリアに、色鮮やかに現した演奏でした。昨年ロッテルダム・フィルと東京で演奏したラフマニノフ「第2交響曲」もそうでしたが、このしなやかな流れの中に、自然に“ドラマ”が湧き上がってくる、彼が触れる音はいやが上にもワクワクしたものになってしまう・・・まるで錬金術師のようです。
生まれついてのオペラ向きな体質の人だなあ・・・と思わずにはいられません。
ネゼ=セガンのインタビュー(これも公演プログラムに掲載します)にもありましたが、彼のフィラデルフィア管との出会いは、幼い頃に家のステレオで聴いた、まさにオーマンディ指揮の「悲愴」です。それからはいつもこの録音が彼と共にあり、無人島に持っていく5枚のCDにはもちろんこれがなきゃ!と言っているほど。これは相性でいっても、縁でいっても、ドンピシャな曲目であるとしか言いようがないですね。

そして最後にもうひとつの大きな興味であり楽しみは、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」をこれまで何度も国内外の一流オーケストラ、個性的な指揮者たちと共演してきた諏訪内晶子の演奏。(私は近年でいえば、トゥガン・ソヒエフ指揮トゥールーズ・キャピトル管弦楽団と共演した時が、とても印象深いです。そして先日「らららクラシック」でオンエアされた、尾高忠明指揮での演奏・・・ご覧いただきましたでしょうか?)
諏訪内がこの曲を弾くときに殊更明らかになる、凛然たる犯し難い剛い美と、
前述してきたフィラデルフィア管の豊麗で色彩的なチャイコフスキー演奏の音、ネゼ=セガンの生み出す自然なドラマが、どのようなバランスで結びついて、どのようなチャイコフスキー像に結実するんだろう?というのは、とても楽しみです。





<ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団 2014年ツアー>

【チケットのお申込みはこちらから】

6月2日 (月) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35(ヴァイオリン: 諏訪内晶子)
  チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」

6月3日 (火) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  モーツァルト: 交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
  マーラー: 交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

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