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2014/05/21 | KAJIMOTO音楽日記

●公演間近! ネゼ=セガン&フィラデルフィア管の演奏曲目をめぐって(2) ~モーツァルト




今度の来日でこのコンビが演奏する曲目のうち、先日は「フィラデルフィア管のマーラー」について書きましたが、今回はモーツァルト。
フィラデルフィア管のたっぷりと艶々としたサウンドは、なんといってもロマン派と相性がいいものなので、モーツァルトというとイメージが・・・? などということはあるかもしれません。基本的なところをいえば。

しかしこれだけの世界に冠たる大オーケストラで腕達者な面々、そこが不得手などということもあるはずはなく、例えば1985年にリッカルド・ムーティと来日した時にも、まさに今回と同じくモーツァルトの「ジュピター交響曲」(とベルリオーズ「幻想交響曲」)を演奏しており、その折に朝日新聞に出た故・吉田秀和先生の批評には下記のように書かれていました。

・・・(ムーティの指揮下、)この交響曲は大理石の堂々たる大建築のように造型される。第2楽章アンダンテでは、時折、管楽器が混入する中で、弱音器つきヴァイオリンがかなでる嫋々(じょうじょう)たる旋律が、理想の冷房装置から送られる快い風となって、きくものの頬をなでたり、身体を包んだりする。逆に、終楽章は建物の奥まで強烈な陽光のさしこんでくる局面になり、ここでの音たちは頭の先から足の裏まで熱くなるような熱気と光の氾濫となって乱舞する。(中略)
・・・しかも、これは最小限度に切り縮められた弦と二管ずつの小編成の、このオケにしては異常な、ききなれない渋さをもった音色での演奏にしてあるのに、こうなのだ。(中略)
・・・極小最弱の音となっても、その一粒一粒がきちんとした輪郭を少しも失わないのだから、このオケの優秀さ、推して知るべしである。・・・


さて、オーケストラもさることながら、指揮のネゼ=セガンがまた、モーツァルトを得意のレパートリーとしているのですね。ファンの方々は、彼がザルツブルク音楽祭で《ドン・ジョヴァンニ》を指揮し、またドイツ・グラモフォン・レーベルから、これからのモーツァルト・オペラの録音はヤニックに! ということで彼に白羽の矢がたったことをご存じと思います。そして《ドン・ジョヴァンニ》(マーラー・チェンバー・オーケストラ)と《コシ・ファン・トゥッテ》(ヨーロッパ室内管)の録音を既に行っています。

モーツァルトの音楽の“核”はなんといってもオペラにあり、そこから交響曲やピアノ協奏曲というジャンルに分岐します。だからまず一面には、そういう意味でオペラ指揮を得意とするネゼ=セガンにはモーツァルト演奏がぴったりなのではないでしょうか? 彼が指揮棒を振りだした途端にわき出す生命感といい、どんな部分にも冴え冴えと豊かな表情を帯びるところといい。ネゼ=セガンの手にかかると楽曲は俄然生気を増します。
(METのライブ・ビューイングをよく観に行かれる方なら、いつも体験されることと思います)

もう一面。「ジュピター交響曲」という、古今東西、綺羅星の如くいる作曲家の中でも飛び切りの存在であるモーツァルトが生涯最後に書いた、畢生の交響曲の特にフィナーレ。「ド-レ-ファ - ミ」の基本音型が発展し、対位法技法の極致、広大な宇宙の彼方あちらこちらから鳴り響く「ドレファミ」の祭典となるわけですが(“ジュピター”のあだ名の所以)、ネゼ=セガンが、殊にフィラデルフィア管のような名技集団を指揮した場合、その音たちの分離や均衡の冴えは、「モーツァルトの“ジュピター”」に相応しい偉容を現す絶好の力となるはず。
(ネゼ=セガンが最近ヨーロッパ室内管と録音したシューマンの交響曲全集のCDを聴くと、こうした対位法的な音をクリアにさばく腕前とか、楽曲全体のかたちに対するセンスとか―― 古典には特に必要なもの ―― などがいかに優れているかがよくわかります)

6月3日にネゼ=セガン&フィラデルフィア管が演奏する、モーツァルト「交響曲第41番K.551・ジュピター」。
マーラー「巨人」と一対に、ぜひ楽しみにいただければ!

(考えてみると、最近は超一流のオーケストラがモーツァルトの交響曲を演奏する機会って、あまりないですよね・・・。どうしてなんでしょう?)


<ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団 2014年ツアー>

【チケットのお申込みはこちらから】

6月2日 (月) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35(ヴァイオリン: 諏訪内晶子)
  チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」

6月3日 (火) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  モーツァルト: 交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
  マーラー: 交響曲第1番 ニ長調 「巨人」



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