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2012/09/28 |

●「ピアソラ没後20年・フランセ生誕100年とブーランジェの弟子たち」~鈴木大介との対話 (2):ブーランジェの教え方~

連載“鈴木大介との対話”第一回では、~ブーランジェという視点~と題し、名音楽教師ナディア・ブーランジェとピアソラの出会いを取り上げました。
本日の二回目の鈴木との対話では、鈴木のリサイタル(12月)で取り上げられるジャン・フランセ、エリオット・カーター、エグベルト・ジスモンチを中心に、ブーランジェの様々な“教え子たち”について考えを巡らせてみたいと思います。



*鈴木のリサイタル曲目(12/6)*(公演詳細
◆ジャン・フランセ: パッサカイユ
◆エグベルト・ジスモンチ: セントラル・ギター
◆ジャン・フランセ: セレナード より
◆エリオット・カーター: SHARD
◆アストル・ピアソラ:
  アディオス・ノニーノへのイントロダクション
  平原のタンゴ
  ブエノスアイレスの秋
  バンドネオンとギターのための協奏曲から
  ブエノスアイレスの冬
  ロマンティックなタンゴ
  伊達男のタンゴ
  ブエノスアイレスの春


***


<ブーランジェと1200人の弟子たち?!>


―ブーランジェはとにかく弟子が多いですね。アメリカで教えた弟子だけで600人近く。全世界で総計1200名の教え子がいたといわれています。

[鈴木(以下、鈴)] アメリカにも、そんなにたくさんいるんですか?!

―第二次世界大戦中に米国に渡って、ジュリアード音楽院やラドクリフ大、ウェルズリー大等で教えています。弟子といわれるフィリップ・グラスは米国とフランス、どちらで学んだのでしょうか・・・

[鈴] 国もそうですけど、弟子の“音楽ジャンル”も広いですよね。

―フランスのミュージカル映画の作曲やジャズで有名な巨匠ミシェル・ルグランもブーランジェに学んでいますよね。『シェルブールの雨傘』の、ルグラン。それからバーン・スタインやキース・ジャレットも、彼女に教えてもらったことがあるようです。

[鈴] リパッティは愛弟子ですね。イギリスの作曲家レノックス・バークリーもそうです。彼の作品は残念ながら今回のリサイタルではプログラミングできなかったんですが、多くのギター作品を書いています。

 

<“弟子”の定義>


―ただし、どこまでを弟子と言えるか、というのは難しい問題ですね。マスタークラスを一度だけ受講して“師事した”と略歴に書く方もいますし。何回以上レッスンを受けたら弟子と称せるのか・・・。ピアソラみたいに、付き合いは短くとも、人生を大きく変えてもらったという場合もあります。

[鈴] そういう意味では、ピアソラとフランセというのは、ブーランジェからの影響がかなり濃いチームです。今回のプログラミングでは、そこが面白いと思いました。


 

<フランセとカーター>
 

―フランセはパリ音楽院でブーランジェに師事したわけではないのですよね?

[鈴] 1920年代、つまり子供の時に彼女に出会っています。当時、彼が10歳前後で出版した楽譜をブーランジェが大絶賛して、フランセに音楽を続けるようアドヴァイスしたそうです。

―カーターも、ブーランジェに師事したのは比較的はやい。1930年代、パリ音楽院留学時代です。フランセはその後、ひたすら新古典主義を貫き、12音技法にも手をつけませんでしたが、カーターはその後、数学的な、前衛的な方向に向かっていく。そして大介さんが今回リサイタルで取り上げるジスモンチは、この二人とは全く違う路線ですね。

[鈴] ピアソラのエピソードが象徴的ですが、教師として自分の何かを押し付けるのではなく、生徒それぞれの個性を見つけて伸ばしたのでしょう。だからこそ、古楽に携わる人も、ジャズの奏者たちも、カーターのように前衛作曲家に育っていく者たちも、みんな生徒だった。音楽に対してどういうふうに接するべきかを教えてくれる存在というのでしょうか。「スコラ」における坂本龍一さんのような存在。ブーランジェが「音楽の先生である」ということは実に面白いと思います。作曲の先生でもなく、ピアノの先生でもなく、“音楽”の先生。

 

<ブーランジェの弟子たちの共通点>
 

―あえて主な弟子たちの共通点を挙げるとすると、何でしょう?

[鈴] 弟子の多くが音楽家としてのアビリティが高い、という考え方をしてみると興味深いと思います。とくに和声の規則や対位法といった作曲におけるルールに対する態度、という意味で。こうした“決まり”は、耳に不快なもの、つまり聴いていて音楽として不快であったり、音楽として意味をなさなかったり、音楽として意味が不明瞭になってしまいがちなったりすることの弊害を避けるためにあるのだと思うんです。言い換えれば、自由にやることの弊害を避けるためのルール。もちろん作曲は自由なものです。極論、何を書いてもいいですし、平行和音があっても綺麗ならよいでしょう。でもその無限の可能性の中でも、規則を知っているか知らないかということは大きい。表現の伝わり方が弱まり、表現していることが伝わりづらくなることは避けられますから。

―ブーランジェの弟子たちには、それを理解している人が多い、という仮説ですね。

[鈴] 少なくとも言えるのは、実現困難なことは書いていても、実現する意味がないことは書いていない印象を受ける、ということです。
 

◆次回の連載~ギタリストとしてのピアソラへの想い~につづく。

 

***


<鈴木大介 ギター・リサイタル 2012>
~アストル・ピアソラ没後20年 ジャン・フランセ生誕100年とナディア・ブーランジェの弟子たち~
日時 2012年12月6日 (木) 19:00 開演
会場 サントリーホール ブルーローズ
出演 ギター: 鈴木 大介
料金 全自由席¥4,000

[プログラム]
ドメニコ・スカルラッティ: ソナタ集
ジャン・フランセ: パッサカイユ
エグベルト・ジスモンチ: セントラル・ギター
ジャン・フランセ: セレナード より~愛の歌/エピグラム/リリパット王国のファンファーレ
エリオット・カーター: SHARD
アストル・ピアソラ作品集
アディオス・ノニーノへのイントロダクション
    平原のタンゴ
    ブエノスアイレスの秋
    バンドネオンとギターのための協奏曲から ~イントロダクションの断章
    ブエノスアイレスの冬
    ロマンティックなタンゴ
    伊達男のタンゴ
    ブエノスアイレスの春

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