NEWSニュース

2011/08/12 | KAJIMOTO音楽日記

●伊からの熱き風!~サンタ・チェチーリア管が秋の音楽界に旋風を巻き起こす~ 連載パート2「イタリアの血が歌う、熱血漢パッパーノの魅力」



連載第2回目では、人間アントニオ・パッパーノの魅力に迫るべく、世界の舞台を席巻するマエストロのルーツを追います。

***
1959年、ロンドンに住むイタリア人の両親の元に生まれた少年"アントニオ"は、毎朝学校に行く前にピアノを弾き、午後には父親から歌を習って少年時代を過ごしました。(これが結構な頻度だったようで、当時、2階上のフロアに住んでいた女性が練習のたびに降りてきてドアを叩いて文句を言っていたそうです・・)。
転機は1973年。一家はアメリカに移住し、アントニオ少年は父親の指導する歌手のコレペティトゥーアとして多くの時間を過ごします。父親の練習は厳しく、午後2時に帰宅すると、練習が夜9時まで続けられることもありました。



22歳のとき、アントニオ青年はニューヨーク・シティ・オペラのコレペティトゥーアの職に就く機会を得ます。その頃になると青年は改めてピアノと作曲を学び直し、歌手のリサイタルでの演奏や、教会でのオルガン演奏、バーでのカクテル・ピアニストもこなすようになっていました。
そして1987年、28歳になったアントニオは、オスロ国立歌劇場で≪ラ・ボエーム≫を指揮してついにオペラ・デビューを果たします。1990年には同歌劇場の音楽監督に就任。アントニオは当時の心境をこう振り返っています。

「それまでは指揮者になることなんて夢にも思わなかった。既に指揮者を志すには遅い段階で、その道に進む方法を簡単に見い出せなかったんだ。でも、僕には音楽への愛と、音楽から何を引き出しどういう音楽をしたいのかを表現することが出来たんだ。」

この頃、アントニオはバイロイト音楽祭でバレンボイムのアシスタントを務めます。この経験やマエストロからの様々な助言が、その後のワーグナー作品の上演はもちろん、音楽家としての大きな糧になったことをアントニオは後に認めています。

天性の情熱と細部にまで染み渡る歌心とで、めきめきと実力をつけていったアントニオは、その後、コヴェントガーデン王立歌劇場(英ロイヤル・オペラ)、サンフランシスコ・オペラ、パリ・シャトレ座、ベルリン州立歌劇場などにデビュー。そして、32歳と言う若さでモネ劇場(ベルギー王立歌劇場)の音楽監督に就任するのです。



公私ともに充実していた1995年、彼は最愛のパメラと結婚します。モネ劇場での10年間をとても充実した形で迎えることとなるのです。当時ふたりは、あるお城の一角に住み、フットボール場の約半分の大きさの庭を持っていたといいます。仕事場や日常の喧騒から離れた別世界で自然と触れ合うことが、彼の後の爆発的な飛躍につながる素地や器量を築いたのかもしれません。

さて、ここからが更に物凄い快進撃。

93年、パッパーノはウィーン国立歌劇場でドホナーニの代役としてデビューして≪ジークフリート≫を指揮、97年にはMET、99年にはバイロイト音楽祭へそれぞれデビューを果たして、2002年には世界のオペラハウスの最高峰に数えられるコヴェントガーデン王立歌劇場の音楽監督に就任します。
コンサート指揮者としてもヨーロッパ、アメリカで幅広く活躍。ボストン響、シカゴ響、クリーヴランド管、ニューヨーク・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ロンドン響、パリ管など、超一流のオーケストラと次々に共演。
"マエストロ"と呼ばれるにふさわしい破竹の快進撃を続け、2005年、ついにローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団の音楽監督となるのです。
それまでオペラを振ることが多かったパッパーノにとって、初のシンフォニー・オーケストラのシェフという役職。交響曲、管弦楽作品の魅力について、彼はオペラと比較しながらこう語っています。

「オペラを指揮する際は、歌手の伴奏、演出、視覚的要素を高める役割を常に担っているわけですが、交響作品を指揮する場合は、自分と音楽家と音楽だけから成る世界で、純粋に音楽的なことに集中できるのが魅力です。」



イタリア人でありながらロンドンに生まれ、13歳からはアメリカで暮らしたパッパーノ。国際的な活躍を続けるコスモポリタンなスター指揮者である一方、そのルーツは忘れない。そんな彼が自らの特徴を端的に表したコメントをご紹介すると・・

「これまでもイタリア・オペラを指揮するたび、自らのイタリア人としてのルーツを感じていましたが、サンタ・チェチーリア管を指揮するようになって、本場で自分の本来の姿を発見するというすばらしい経験をしました。例えるなら、私の前に大きな鏡が置かれ、自分の奥にひそんでいたものが映し出され、それと対峙させられているような感覚です。たとえば、オーケストラと私はフレージングや音楽の感じ方などにおいてとてもよく似ているところがあり、強い結びつきを感じます。」

うーん、確かに彼らの音を聴いていると、この言葉に素直に納得させられます。
その演奏のフレージングやアゴーギグは絶妙な伸縮具合で、あっという間に風が通り過ぎたかのような自然さ、それでいて圧倒的な力強さと説得力、そして一体感を持ちあわせています。サンタ・チェチーリア管を指揮するようになって彼はまさに、「手兵」を手にしたと言えますね。

 

(引用は2009年10月30日付Financial Timesより訳出)

***

さぁ、そろそろ皆様もパッパーノの次なる活躍の舞台が気になってきたのではないでしょうか。
来る10月の日本公演、ぜひお聴き逃しなく!


次回の連載では、名コンビ:パッパーノ&サンタ・チェチーリア管が放つ珠玉の音楽世界を掘り下げ、意外に演奏機会の少ない交響組曲「シェエラザード」の魅力に迫っていきたいと思います。


チケットのお申し込みはこちらまで


【パッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団 関連記事】
注目コンビ・その2―― A.パッパーノ&サンタ・チェチーリア管、発売中 (2011.5.9)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管の演奏動画が見られます! (2011.5.25)
イタリアからの熱き風!サンタ・チェチーリア管が秋の音楽界に旋風を巻き起こす!連載パート1:「"サンタ・チェチーリア"って何?」の巻 (2011.7.21)
緊急企画!パッパーノから来日に向けたメッセージが届きました!(その1) (2011.8.26)
緊急企画!パッパーノから来日に向けたメッセージが届きました!(その2) (2011.9.1)
緊急企画!パッパーノから来日に向けたメッセージが届きました!(その3) (2011.9.10)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管、来日直前特別編その1――絶賛の2007年来日 (2011.9.13)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管 来日直前特別編その2―― 今夏ロンドン・プロムスでの絶賛 (2011.9.23)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管 来日直前特別編その3 ~サルツブルク音楽祭初登場での賛辞~ (2011.9.26)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管の新譜をEMIサイトで試聴できます! (2011.9.27)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管が挑む「シェエラザード」の魅力をとことん! (2011.9.27)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管 来日直前特別編4 ~地中海芸術の粋~ (2011.9.28)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管 特別編5 ~音楽先進国イタリア~ (2011.9.30)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管 絶好調のリハーサル真っ最中! (2011.10.1)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管来日中!-名古屋公演 (2011.10.2)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管来日中!――京都公演 (2011.10.3)
パッパーノ&サンタ・チェチーリア管来日中!――NHK音楽祭 (2011.10.4)
万事快調のベレゾフスキー&パッパーノ&チェチーリア管、今晩いよいよオペラシティ公演! (2011.10.5)


ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団 プロフィール

PAGEUP