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2017/03/18 | KAJIMOTO音楽日記

●シャイー指揮ルツェルン祝祭管・発売の前に!―― 昨夏のルツェルン・フェスティバルにおける祝祭管レポート


昨日、今秋の来日が決定したシャイー指揮ルツェルン祝祭管の速報をお伝えさせていただきましたが、昨2016年夏のルツェルン・フェスティバルでシャイー指揮、そしてハイティンク指揮のルツェルン祝祭管弦楽団の演奏会を音楽評論家の松本學さんが聴いており、そのレポートを書いてくださいました。

この機会に掲載させていただきますので、ぜひお読みください!

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LFO第1プログラム:マーラー

開幕コンサートは、いつも通りルツェルン祝祭管弦楽団(LFO)のコンサート。アバドを失い今後の展開が心配されていたLFOだが、没後3回目となる今夏、ようやく後継の音楽監督としてリッカルド・シャイーが就任し、新たなスタートを切った。その再出発の門出を飾ったのは、マーラーの交響曲第8番。2012年にアバドが採り上げるはずだったが、芸術上の理由ということで変更されてしまい、そのまま実現を見ないままになってしまっていた作品である。



LFOとは初共演となるシャイーだが、オーケストラの優秀さもあり、とても整理されたサウンドで、これだけ巨大な作品であるにもにもかかわらず、室内楽的なアンサンブルのようにまとめ上げた。また、219名(内、児童合唱は39名)のコーラスの精緻な歌いぶりも素晴らしい。声楽陣では、何よりも藤村実穂子(エジプトのマリア)の声の存在感と表現の細やかさが群を抜く。彼女以外にもサラ・ミンガルドは持ち前の深い声を、また昨年もマーラーの交響曲第4番で出演したアナ・ルチア・リヒターは栄光の聖母として短い出番ながらも清澄な声を聴かせた。マリア崇拝の博士を担当したアンドレアス・シャーガーはいささかオペラ風(というか、シャーガー風)で、他とのバランスが気になるところもあったが、パワーは抜群。



2014年や15年の頃のLFOは、指揮が誰であろうと、音楽が高揚するととかくアバド風に歌い始めがちだったが、ここに来て彼以外の指揮者との呼吸が合うようになってきたという印象を受けた。とはいえ、後日トロンボーンのライエンやクラリネットのカルボナーレたちが「このオーケストラにいると、今でもふとアバドと演奏しているように感じる瞬間がある」と語っていたのはやはり感慨深い。

当日のメンバーは、管楽器はフルートがジャック・ズーン、クラリネットにアレッサンドロ・カルボナーレ、ファゴットがマティアス・ラッツ(トーンハレ管)、ホルンはアレッシオ・アレグリーニ、トランペットはラインホルト・フリードリヒ、トロンボーンはヨルゲン・ファン・ライエン、テューバはトーマス・ケラー(シュターツカペレ・ベルリン)、ティンパニはレイモンド・カーフス、ハープはレティツィア・ベルモンドとレギュラー陣が揃った中、オーボエ首席にイヴァン・ポディヨモフが初登場した(彼は2011年にLFOメンバーの室内オケ公演でシェーンベルク《室内交響曲第1番》には出演している)。
多数のVIPを含む会場には、エクサン=プロヴァンスでも見かけた俳優のマチュー・アマルリックの姿もあった。


LFO第2プログラム:ブルックナー

2つ目のLFOプログラムには、スケジュールの都合でシャイーが出演できなかったため、昨年に続きベルナルト・ハイティンクが登場。彼にとっては今期が当音楽祭にデビューして50周年という記念イヤーでもある。



ハイティンクは年齢のせいだろう、近年脚の調子が好ましくなく、そのため今回は椅子を用意し、楽章間はそれに腰掛けて一息ついていた。が、演奏している際の気力は充実し、密度の高い演奏を繰り広げる。ましてや、ブルックナーの第8交響曲は彼が最も得意とする作品のひとつ。動きこそ減ったが無駄のない棒で、第1楽章から深々とした息遣いでスケールたっぷりに造形し、光沢のある輝かしい音楽を聴かせた。第3楽章Nの前のチェロの弱音の美しさや、ワーグナー・テューバの名演も記憶に残る。ハイティンクも満足したようで、アダージョ楽章を終えた際には、彼らに投げキスを送っていた(彼お得意のポーズ)。1981年にコンセルトヘボウ管と録音したあのシャープでキビキビしたスタイルとはずいぶん変わり、フィナーレのIiからKkの間などイン・テンポでなく、少しだけ後ろに引っ張るようにもなったが、音楽の包容力は一層増している。
また、全体を通して第1フルートが積極的で強い存在感を発揮した(これはハイティンクの指示ではなく、奏者のアイディア。確かにスコア上でも他の楽器よりフルートだけデュナーミクが大きく指示されている部分は幾つかある)。
なお、ハイティンクは以前の録音ではハース版使用であったが、近年変化したようにここでもノヴァーク版を用いていた。



こちらの出演メンバーはズーンが松本のサイトウ・キネン・オーケストラに参加するため、フルートはマーラー・チェンバー・オーケストラのキアーラ・トネッリが首席を務めた。その他は、オーボエがルーカス・マシアス(=ナバロ)、ファゴットはギヨーム・サンタナ、ホルンはイーヴォ・ガスにチェンジし、あとは皆同じ。
弦楽器陣は、トゥッティは入れ替わりがあるものの、両プログラムを通じて首席はほぼ共通。コンサートマスターがグレゴリー・アース、ヴィオラはヴォルフラム・クリスト、チェロがイェンス=ペーター・マインツ(その横はクレメンス・ハーゲン)、コントラバスがスワヴォミール・グレンダ(ミュンヘン・フィル首席)である。今回いつもと異なったのは、第2ヴァイオリン首席のラファエル・クリストが初めて降りたこと(マーラーには参加)。代わりにブルックナーではコルビニアン・アルテンベルガー(バイエルン放送響第2ヴァイオリン・コンサートマスター)がトップの席に座った。
 

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