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2016/09/02 | KAJIMOTO音楽日記

●祝!バンベルク響創立70年・来日を前に(2)―― ブロムシュテット蔵出しインタビュー(その2)


前回に引き続き、2012年のバンベルク響来日公演プログラムから、マエストロ・ブロムシュテットのインタビュー後半を。
ブルックナーという作曲家について、そして今一度、バンベルク交響楽団への思いを語っています。
ぜひご一読ください。



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◎ブルックナーのこと
 私は最初からマーラーよりブルックナーの方がずっと好きでした。マーラーは、とくに若い時はあまり好きではありませんでした。というのも、神経質であまりにも分裂的だからです。反対にブルックナーの世界観には一つのまとまりがあります。ずっと後になってマーラーも好きになりましたけどね。 ブルックナーとの関わりはとても長いです。私は10代の青年の頃、初めてブルックナーの交響曲を聞いた時のことを覚えています。それはまさに今回演奏する「第4交響曲」でした(*注:2012年来日時です)。確か13歳か14歳だったと思いますね。スウェーデンのイェーテボリに住む生徒でした。イェーテボリには素晴らしいコンサートホールとオーケストラがあって、彼らのブルックナー演奏はとても強い印象を私に残しました。そのコンサートを聴き、兄と一緒に家に帰った後、2人で旋律を覚えようとしたのです。忘れまいと口ずさみました。当時はちゃんとしたスコアを買うお金もなかったものですから、覚えておくために歌うしかなかったのです。鳥みたいに・・・。(歌う…) 「忘れちゃダメだ!」と思いました。当時は録音もありませんでしたし、店に行って何かを買うこともできませんでした。ですから、書き残す必要があったのです。私はその音楽に完全に夢中になりました。理由はきっと――そこには美しい自然の景色があるからですね。山々やずっと続く地平線といった美しい世界。マーラーの場合は街が目に浮かびます。都市の音楽です。しかしブルックナーは田舎の音楽です。私はそれがとても好きです。後になってどうしてマーラーがあんな風なのか理解しましたし、彼の音楽が好きになりました。私たちは多かれ少なかれ彼と同じように分裂的な状況に置かれていますから。私たちは田舎が好きですが、都市に住んでいます。ですから色々な衝突を知っています。仕事、宗教、哲学など・・・。しかしブルックナーの世界は違います。自由な世界です。天国のようです。ブルックナーは私の人生です。 この種の音楽は崇高さをもっています。私が思うに、現代人は以前にも増してこうした音楽を好むようになっています。私たちの生活は引き裂かれるような緊張感に満ちています。悲劇もとても多い。津波だけではありません。家族の中、政治・・・。悲劇がいっぱいあります。
ブルックナーの世界は平和と美の世界です。しかしそれは脱力すると言う意味の平和ではありません。夢に満ちています。常にドラマの解決があります。そして日本に来てブルックナーを指揮するときはいつも聴衆に恵まれます。日本人が彼の音楽を深く理解しているからだと思います。


◎再びバンベルク響のこと
 バンベルク響はドイツを代表するオーケストラです。とても深い音色をもっていますし、もちろん音楽の理解も深い。つまり、今回のようなレパートリー(ベートーヴェン、ブルックナー)を演奏するとき、あらゆることにとても素早く反応する、ということです。とても多才なオーケストラでレパートリーもとても広い。現代、古典を問わず、多くの録音を残しています。レパートリーの中心はドイツの古典、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、マーラー、そしてシューベルトです。それからR.シュトラウスも。
ただ、日本の皆さんはドイツの音とまた少し違うものを聴かれると思います。非常にドイツ的なのですが、プラハで設立された時から残る、ボヘミアの香りもします。つまり、ブラームスとブルックナーのオーケストラであると同時に、ドヴォルザークのアクセントももつオーケストラでもある、ということです。私はチェコ・フィルと数年前に日本ツアーをしましたから、今回の組み合わせは丁度良いと思います。チェコとドイツの音の組み合わせですね。 ボヘミアの音には、自然と湧き出てくる感じがあるのです。オケはそういったものを決して捨てられません。生き方ですから。 ところでボヘミアの子どもについて、素晴らしい、小さな笑い話があります。ご存知でしょうか?赤ん坊が生まれて、ゆりかごに入れられる。そして、その赤ん坊が何になるかをテストするのです。小さなヴァイオリンをゆりかごの上にかざします。もし赤ん坊がそれに手を伸ばせば音楽家になるでしょう。もしヴァイオリンに手を伸ばさないようだったら、銀のスプーンをかざします。もし赤ん坊がスプーンを握ったら、その子は泥棒になるでしょう(笑)。これはチェコ人が彼ら自身について言うジョークです。チェコ人は音楽家か泥棒。しかも、ここから分かる何かがある…それはボヘミアの心です。つまり、音楽が彼らにとって最初の選択肢だということです。 それから、モーツァルトがウィーンで非常に成功したものの、それは数年しか続かなかったことはご存知だと思います。そしてモーツァルトはウィーンから追われてしまいました。そして彼はプラハへ行きます。王様のように迎えられました。プラハの人々はモーツァルトを理解することができたのです。《フィガロの結婚》のプラハでの初演が成功し、《ドン・ジョヴァンニ》がプラハのために書かれました。プラハでは音楽が愛されているのです。 また話がそれかけましたが、こうしたボヘミア人の自由な心が音楽にも大いに関係しています。それがドイツ的なものに上手く植えつけられ、それはもっと深いものになり、真剣味も増し――バンベルク響には本当に素晴らしいコンビネーションがあります。


(2011年10月 東京にて 聴きて・文: 編集室)


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