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2015/10/15 | KAJIMOTO音楽日記

●イ・ムジチ合奏団来日ツアー中! ―― エッセイ「イタリアの音、イタリアの心」から

「永遠のベストセラー、イ・ムジチの“四季”」
ということで、ほぼ1年おきに来日しているイタリアの老舗合奏団、イ・ムジチがただ今日本ツアー中です。
「四季」はもちろん、「コンチェルト・ロマーニ」と名づけた、コレッリなどローマ派の作曲家の合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)を中心としたプログラム、そしてイ・ムジチが「コンフルエンシア」と呼ぶラテン、南米の音楽を中心とし、ギターの名手・荘村清志と共演するプロの2つを中心に、今回も快活に、突き抜けた青空のような演奏を繰り広げています。

20日紀尾井ホール、24日サントリーホールを前に、公演当日の販売プログラムに掲載しております、那須田務さんがお書きになったエッセイから一部抜粋して、「イタリアのイ・ムジチ」を、ひと足先にご紹介したいと思います。



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 音楽家を語るときに以前ほどナショナリティや国民性で考えることは少なくなった。日本の音楽家にも9つの頃から欧州で研鑽を積んで現在もドイツを拠点に活躍する人や、北京に生まれ、アメリカで学んで最近はパリに住んでいる人がいる。音楽は国境を超えるのだ。オーケストラも同様でその国固有のカラーが薄くなったと言われて久しい。とはいえ、個人の音楽家はもとより、オーケストラや室内合奏団にも出身地や地方固有のカラーがあるのも事実だ。世界中の名手を集めたベルリン・フィルのサウンドはドイツ以外のどこの国のものでもないし、パリ管弦楽団はやっぱりフランスの音がする。イタリアの室内合奏団を見てみよう。イ・ムジチ合奏団や古楽器のエウローパ・ガランテ。現代楽器と古楽器、個性や性格の違いはあるけど、彼らの演奏には紛れもないイタリアの香りがする。それは何か。どこから来るのか。

 一つは言葉だ。
(中略)
 ここでイタリア語を思い浮かべてみよう。明るい母音(基本的に単語は母音で終わる)となだらかな抑揚。イタリア語を母国語とする人は普段から喉を開いて喋るから声のよい人が多く、イタリア人の会話を聞いていて、歌を歌っているようだと感じた経験を持たれた方は少なくないだろう。だからイタリアの器楽奏者は基本的に明るい音色を好み、滑らかで歌うようなフレージングを持っている。

 音楽に影響を与えるのは言葉だけではない。その人の生れ育った、あるいは暮らしている街の気候や風景、歴史、文化、食事も大きく関わっている。地方で違いはあるけれども、イタリアの夏は明るくて大体において温暖でからりと乾いている。こうした気候が外向的で情熱的な気質を育む。また、古代ギリシャ・ローマ時代、中世、ルネサンス、バロックから現代に至る様々な時代の遺跡や建築物が同居しているから、イタリアの街を歩いているとなんだか歴史のテーマパークに迷い込んだような気になる。
 会話をすればそのまま歌になる言葉を話す人たちが、歌に深い愛情を抱くのは当然だろう。この国でグレゴリオ聖歌が編纂され、カンツォーネが歌われ、オペラが生まれた。19世紀末までイタリア音楽の主流はオペラや声楽だった。イタリアのラジオ番組でオペラの実況中継を聴いたことがあるが、まるでサッカーの中継のような熱狂ぶり。司会者も解説者も開演前や幕間で喋るのだが、テンションが限りなく高く興奮しているのが印象的だった。

 ここで具体的にイ・ムジチとエウローパ・ガランテについて考えてみよう。エウローパ・ガランテは1989年にヴァイオリニストのファビオ・ビオンディによって結成された古楽器のオーケストラで拠点はエミーリア=ロマーニャ州のパルマ。ここは歴史的にフランスと長い関係があり、イタリアの明るい情熱に加えて、フランス風の洒脱と洗練を併せ持つ。
 一方のイ・ムジチがローマの音楽大学の同窓生によって1952年に結成されたことは周知の通り。ローマは街中に古代の廃墟が点在し、抜けるような青空に松が緑の葉を拡げ、バルベリーニ宮殿などのバロック建築やベッリーニの彫刻が至るところにある。キリスト教カトリックの総本山ヴァティカーノ市国も忘れてはならないだろう。筆者はイ・ムジチの演奏を聴いていると、こうしたローマの文化の洗練と威厳と重厚を強く感じる。

 彼ら2つのグループの音楽的な共通点はイタリア語に由来する、明るい音色と歌うようなフレージング、オペラや演劇のような豊かな情感とドラマ性、高度な演奏技術と知性、洗練された芸術的センスにあり、ともに自国の音楽文化を愛し、歴史を尊ぶと同時にチャレンジ精神に富んでいる。デビュー盤がヴィヴァルディの《四季》というのも興味深い一致だ。エウローパ・ガランテが結成の年に発表した《四季》のCDは、洗練された技術と新鮮な解釈でたちまち80万枚をセールス。彼らの名を一躍世に知らしめた。イ・ムジチの《四季》にいたっては今さら多くを語る必要はないだろう。そのレコードは世界的なバロック・ブームを巻き起こしたが、彼らはそれに甘んじることなく、その後も楽団の長い歴史を通して様々な変革を行ない、新録音を発表するごとに新たな解釈を提示し続けている。
(後略)

那須田 務(音楽評論家)


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<公演情報>
2015年10月20日(火) 19:00開演 紀尾井ホール
ギター: ギター: 荘村 清志

2015年10月24日(土) 19:00開演 サントリーホール

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