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2014/12/04 | KAJIMOTO音楽日記

●東京公演迫る!―― ポゴレリッチ、来日プログラムについて語る

イーヴォ・ポゴレリッチは一昨日いよいよ中国入り。
5日の上海でのリサイタルから始まる4公演の後、来日します。

先日発売された「音楽の友」12月号に彼のインタビューが掲載され、そこでは具体的にリスト「ダンテを読んで」とシューマン「幻想曲」についての考察が語られていますが、ここで掲載されなかったブラームス「パガニーニ変奏曲」とストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」についてのインタビューをここでご紹介します。
是非「音楽の友」誌と合わせて、ポゴレリッチの今回のプログラムについて、予習していただければ!


さて、今回のインタビュアーである台湾出身の焦元溥(YuanPu Chiao)氏は、ポゴレリッチの演奏に魅せられ、長年彼との対話を重ねてきた音楽ジャーナリスト。
代表著作は最近話題となった、
『遊藝黒白:世界鋼琴家訪問録 (The Colors Between Black and White : The Interviews of 55 Concert Pianists) 』(2007)の日本語版『ピアニストは語る~ピアニズムの系譜と芸術観~』(訳:森岡葉)
があります。


***


―― 《パガニーニの主題による変奏曲 op.35》のテクニックも(他の演奏曲と同様に)、実に独特です。作品は当時のリストの弟子たちの中で最も高名だったカール・タウジヒに献呈されていますが、これはいわゆる“リスト派”の面々へのメッセージと解釈してよいのでしょうか?ポゴレリッチさんは、2部構成のこの作品をどのように捉えていらっしゃいますか?

(ポゴレリッチ)
タウジヒは若くして亡くなりましたが、彼の演奏を聴いた人々は誰でも、その印象をずっと心に留めていたそうです。ブラームスが、この伝説的なピアニストのヴィルトゥオジティに心動かされ、新しい“練習曲集”に着手したというのは、あり得る話だと思います。これに関連することですが、《パガニーニの主題による変奏曲》には、もう一つのタイトルがあります。
私が使用している楽譜では、まず「Studien für das Piano Forte(ピアノのための練習曲)」とのタイトルが掲げられ、その下に「パガニーニの主題による変奏曲 op.35」と書かれています。作曲のプロセスを経て、ブラームスは最終的に、並外れた個性を持つ音楽作品を創るに至ったのでしょう。つまり、決して忘れてはならないのは、創作の出発点は練習曲であったということです。事実、この曲集の多くの部分が練習曲として残されており、それは絵画におけるような綿密な探究を経て、到達されているように思います。優秀な画家たちが、例えば人間の手や馬の頭部のデッサンを重ねる際に、細部に払っていた並々ならぬ注意力を思い起こしてみてください。
ブラームスは、その様な探究において、他の作曲家を凌いでいたのだと思います――結果として作品は、これを初めて目にし・耳にした同時代の人々にとって、演奏困難・理解不能なものとなりました。それゆえに、複雑なリズム型や、ピアノ音楽ではそれまで使用されたことのなかった音型が導入されています。ピアノのためのテクニックは、この曲集を経て進歩しました。それは時に、ウィット(ユーモア)を含んだ、あるいはアクロバティックな対応をもピアニストに要求します。ブラームス自身がそれを好んだかどうかは疑わしいところですが。
いずれにせよ、私が確信しているのは、ブラームスがこの“練習曲集”を通して、自らのピアニズムを進歩・発展させたということです。




―― 「これを初めて目にし・耳にした同時代の人々にとって、演奏困難・理解不能なもの」とおっしゃいましたが、それはまさにストラヴィンスキーの《「ペトルーシュカ」からの3楽章》にも当てはまる言葉ですね!技術的な難易度が極めて高いこの作品において、ストラヴィンスキーが伝えたかったこととは何だったのでしょうか?

(ポゴレリッチ)
まずは原点に立ち返り、「ペトルーシュカ」が同名のバレエ作品の登場人物であることを思い起こしましょう。バレエとは当然、人間の動きや姿形と関わるものですが、通常、指揮者たちは全体的にこの作品のテンポをあまりに急き立てているように思えます。もう一つ思い起こしておくべき点は、ストラヴィンスキーが同じ音楽から2つの全く異なるリアリティを生み出すことに成功したということです。輝かしいバレエ作品としてのリアリティと、同じく輝かしい3楽章のピアノ組曲としてのリアリティです。
さて、このバレエがオーケストラによって演奏される場合、特定の楽器が軽やかに響くために、速く聴こえます。しかしピアノは、ある一つのシンプルな理由ゆえに、このスピードを模倣できませんし、模倣すべきではありません――ピアノは、メカニカルな楽器だからです。つまり、ピアノの場合、弦にも鍵盤にも息を吹き込みません。
しかしその点が、《「ペトルーシュカ」からの3楽章》のキャラクターを完全に決定づけているとは言いません。というのもストラヴィンスキーは、もう一つ、驚くべきことを成し遂げています。彼は、ピアニストが通常に用いているバランスの重力軸を移動させたのです。つまり、音素材の配分が独特なために、左手と右手の間にまったく新しい関係が構築されています――これが達成されてから、ちょうど100年が経ちました。手の鍵盤に対する位置や、両手の同時性、そして身体のポジションは、一新されただけでなく、この音楽を適切に演奏するために欠かせない指標となっています。曲中に現れるテクニックと関連するこうした問題に答えるのは、極めて難しいことです。
ストラヴィンスキーが《「ペトルーシュカ」からの3楽章》を書いた際に、実際に念頭に置いていたピアニストは誰なのでしょうか?私の手はこの作品を弾くに十分な大きさですが、そのような私でさえも、指を限界まで伸ばしきる/この作品だけに通用する指使いを採用する・・・といった技術的な難題を突き付けられます。
最後に、貴方の質問にきちんと答えなければなりませんね。《「ペトルーシュカ」からの3楽章》を演奏する各々のピアニストには、作品と特別な関係を築くこと、そして手のサイズや能力に見合った技術的な解決策を自ら見出すことが、暗に求められています。
 

***


それぞれの曲に対する彼の想いが伝わってきますね。
どうぞ当日の彼の演奏にご期待ください!

(なお、「音楽の友」誌のインタビュー記事と上記記事を合わせたもののほぼ大部分が、当日会場で販売される公演プログラムに掲載されます)


<公演情報>
イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル
2014年12月14日(日) 19:00 サントリーホール

(曲目)
リスト: 巡礼の年第2年「イタリア」から
     ダンテを読んで(ソナタ風幻想曲)
シューマン: 幻想曲 ハ長調 op.17
ストラヴィンスキー: 「ペトルーシュカ」からの3楽章
ブラームス: パガニーニの主題による変奏曲 op.35

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