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2014/05/09 | KAJIMOTO音楽日記

●公演間近!ネゼ=セガン&フィラデルフィア管の演奏曲目をめぐって(1)~マーラー

 昨晩、15年ぶりに来日したボストン交響楽団を聴きに行ってきました。相変わらず(少し若やいだか?)、どのセクションをとっても磨かれた超一流の音で、厚みのある品のある極上サウンドを堪能しました。しかしアメリカのトップ・オーケストラというのは、シカゴ響、クリーヴランド管、ボストン響、そして来月あたまに来日するフィラデルフィア管と、1つの国の中でよくもまあ、各々が超一流である上に、これだけサウンド・カラーが違うのか、と驚き呆れてしまいます。実に面白いです。
(コンセルトヘボウ管、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、パリ管などは国の文化が全然違うゆえに各々のサウンドもまた全然違う、というので理解しやすいですが。)

というわけでボストン響を聴いて、その次元の双璧であるフィラデルフィア管弦楽団の来日・・・それも飛ぶ鳥を落とす勢いのライジング・サン、ヤニック・ネゼ=セガン新音楽監督とのコンビ初来日が一段と楽しみになってきた次第です。
ネゼ=セガンの動画インタビュー第2弾は近日アップ致しますが、同時に、今回の演奏曲目とフィラデルフィア管、およびネゼ=セガンの小話(?)を、何回かに分けて自由にご紹介させていただこうかと思います。

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まずはマーラー「第1交響曲」。



フィラデルフィア管のマーラー、といいますと、1916年まで遡り、レオポルト・ストコフスキー「第8交響曲」のアメリカ初演をしているわけですが、そういったことを引き合いに出すこともともかく、「フィラデルフィア・サウンド」の特質(代々の音楽監督によって少しずつ変化があるとはいえ)―― 艶々とした光沢を帯びた、とろけそうな粘りのある弦楽器の音や、それに融け合う木管楽器の鮮やかな色合いや隈取りの濃い音色というのは、ブラームスやワーグナーあたりのロマン派や、マーラーやラフマニノフなどに至る官能性にはぴったり。
オーマンディが音楽監督を務めていた頃は、こうした音色の特色を最大限に活かしたマーラー「第1」「第2」、「大地の歌」や「第10(クック版)」などの豪華な演奏を録音に残しています。



そしてフィラデルフィア管のマーラー、といえば忘れてはならないエポック・メイキングは、ジェイムズ・レヴァインが指揮したマーラー・シリーズのディスクの中で「第5」や「第9」、「第10」です。(他の曲はロンドン響、シカゴ響が担当)
これらの演奏は、60年代に、バーンスタインやショルティ、クーベリックらの大指揮者たちによって、前世代のワルター、クレンペラー、メンゲルベルクらによる時代から一段と確立されたマーラー演奏のさらに後をいき、音そのものを素晴らしくクリアに解きほぐして明快に、アバドや小澤征爾らと共に後の“古典化”していくマーラー演奏の基盤を作るものでした。(今聴いても、実に新鮮)
フィラデルフィア管との「第5」でいえば、オーマンディの時代とはまた違った意味で「フィラデルフィア・サウンド」の美しさ、巧さを駆使し、あの耽美的なアダージェット楽章も遅いテンポながら、すべての音の絡みがキラキラ輝きながら透けて見えるような演奏を達成しました。「第9」でもかつて、故・吉田秀和先生が「驚くべき音が鳴りだした・・・」といったことを書いておられたのを思い出します。



そして80年代、ムーティの時代にもマーラー「第1交響曲」を録音していますし、1985年の来日公演でも取り上げています。これがまた前者2人とは違って、今度は「フィラデルフィア・サウンド」の音色の豊饒はそのままなれど、グッと全体のサウンドを引き締め、いかにもイタリア流な造型となめらかなカンタービレ、情熱の爆発を余さず描いてみせました。
(そう、ムーティ&フィラデルフィア管といえば、ブラームス「第4交響曲」でのなめらかな、あまりにもなめらかで艶のある弦楽のカンタービレは忘れ難いものがあります。後にも先にもオーケストラからあんな音を聴いたことがありません)



そしてエッシェンバッハもまた、マーラーをレパートリーの中心とする一人で、2005年のエッシェンバッハ&フィラデルフィア管の来日公演では、マーラーの「第1」「第5」「第9」を演奏しました。その時のマーラーは、これまたバーンスタインの頃にタイムスリップしたかの如く、レヴァインあたりとは似ても似つかぬ濃厚な、腹の底までズシッとくる(ちょっとあたりそうなくらい?)のサウンドであり、音楽でした。だからこそ、例えば「第9」のフィナーレなどは、「フィラデルフィア・サウンド」の豊麗でこってりした一面に傾斜したものが最大限現れたかたちとなり、それに管楽器がギラッとアクセントを添える(ダニエル・マツカワの吹くファゴットの不気味さと凄み!)といった、これもちょっとやそっとでは忘れられない大熱演でした。



さて、今回のネゼ=セガンのマーラーは如何に?
強いて想像すればこのコンビのマーラーはムーティに近いものになるのだろうか?と思ったりもするのですが、どっこい、結構違ったものになるかもしれません。いずれにしても、フィラデルフィア管の厚みある「マーラー伝統」に、また新しい1ページが加わるのは間違いありません。

どうぞお楽しみに!


<ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団 2014年ツアー>

【チケットのお申込みはこちらから】

6月2日 (月) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35(ヴァイオリン: 諏訪内晶子)
  チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」

6月3日 (火) 19:00 開演 サントリーホール(詳細)
  モーツァルト: 交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
  マーラー: 交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

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