NEWSニュース

2014/03/10 | KAJIMOTO音楽日記

●【現地レポート】アンドラーシュ・シフ:来日直前のウィーン公演を振り返る!

本日、アンドラーシュ・シフが無事に来日しました!(ツアー初日は大阪公演です)。
さて、日本へ発つ直前、シフはウィーンに滞在。去る3月8日にウィーン・コンツェルトハウスで行われたシフのリサイタルを聴いた(何とも幸運な!)音楽評論家・山崎睦さんに、現地レポート&日本ツアーのプログラムへの期待をお寄せいただきました。
早速どうぞ!


***

「ピアノ界の頂点に立つアンドラーシュ・シフ」
山崎 睦/在ウィーン


 近年、演奏家として円熟のときを迎えているアンドラーシュ・シフ。
 ウィーン・コンツェルトハウスで1月からスタートさせた全7回に及ぶベートーヴェン「ピアノ・ソナタ全曲ツィクルス」が3月8日に3回目に進み、まさに佳境に入ったところだ。なかでも「第14番“月光”」を含む作品27の二曲の幻想曲風ソナタ、続く「第15番“田園”」がたいへんな名演で、拍手喝采の止むことはない。中期の作品群にさしかかって、厳格な古典の枠組みのなかに佇(たたず)むロマンの息吹が、この人の真骨頂だろう。卓越したテクニックにより、ピアノの響きの“抜け”が抜群に良いことが注目に値する。両手の分厚い和音がダンゴ状に潰れることなく、構成音のひとつひとつがくっきり立ち上がって、じつに全体の風通しが良い。シフの演奏に聞かれる重厚さと軽みの素晴らしいバランスを可能にしているのが、このような万全のスキルなのだ。
 2004年からヨーロッパ、アメリカと世界的規模でベートーヴェン・ツィクルスを展開していたシフが、07年に作曲家縁(ゆかり)のアン・デア・ウィーン劇場で同プロジェクトをスタートさせた。ところが劇場側の不手際で中断を余儀なくされたため、いまウィーンで会場を替えて再度ツィクルス完走に挑戦している渦中なのだ。音楽的に7年前よりいっそう完成度を増し、気力・体力も相変わらず横溢して、いまシフがピアノ界の頂点に立っていることを実感させる今回の連続演奏だ。
 

*      *      *




 8日のウィーン・コンサートを終えて、わが国に向かったシフの日本での演奏曲目を眺めて、まず目を奪われたのがベートーヴェンの「ソナタ」作品111と『ディアベッリ変奏曲』を並べたAプロ[※末尾のプログラム一覧をご参照ください]で、これは類を見ない超絶プログラムだ。
 じつは2012年のザルツブルク音楽祭で彼はピアノ(鍵盤)音楽の最高峰とされるバッハ『ゴールドベルク変奏曲』と『ディアベッリ変奏曲』をプログラムに組んでいる。シフがこれらの作品を弾き出すと、いつしか深遠なる宇宙空間に旅立つような様相を呈して来て、そのうち聴衆もいっしょに引き込まれて連れて行かれるような、じつに不思議な感覚に捉えられる。加えてアンコールとして、これまた屈指の大曲、ベートーヴェンの「作品111」の第二楽章「アダージョ」(変奏曲)を弾き通したため、驚きは極限に達した。夜9時の開演だったため、終演が翌日にずれ込んだのはともかく、すべての作品で超弩級の演奏を成し遂げて、いまや“伝説”として語り継がれているコンサートだ。
 曲目は多少異なるものの、今回、わが国でそのときの感動が蘇るのは必至であろう。これ以上、興奮させられるイヴェントは他にあるだろうか。
 (さて、ここでアンコールは????)
 シューマンを弾くCプロでは、前記のように音の“抜け”の良さが発揮されて、あの音符の多い、ほとんど真っ黒な譜面から暑苦しくない音楽を引き出して、作品の別の側面を見せてくれることだろう。ここで「交響的練習曲」(これも変奏曲)を取り上げており、彼のマニエリスムに対する偏愛ぶりを垣間見ることができる。最後に、Bプロでは同じハンガリー人で精神的な拠り所となっているバルトーク、そこにバッハを組み合わせたユニークな構成が、じつに興味深い。


山崎 睦(音楽評論家)



 

アンドラーシュ・シフ(ピアノ) 2014年3月 日本ツアー・スケジュール
 

■2014年3月12日(水) 19:00/大阪 いずみホール 【プログラムA】
【問】いずみホールチケットセンター 06-6944-1188

■2014年3月14日(金) 19:00/東京 紀尾井ホール 【プログラB】
【問】紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061

■2014年3月16日(日) 19:00/東京 サントリーホール 【プログラムA】
※「東北に捧げるコンサート」
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年3月19日(水) 19:00/東京 東京オペラシティ コンサートホール 【プログラムC】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年3月21日(金・祝) 15:00/横浜 神奈川県立音楽堂 【プログラムC】
【問】神奈川県立音楽堂 045-263-2255

■2014年3月23日(日) 15:00/名古屋 三井住友海上しらかわホール 【プログラムA】
【問】しらかわホールチケットセンター 052-222-7117


【プログラムA】
ベートーヴェン: 6つのバガテル op.126
べートーヴェン: ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111
             ***
ベートーヴェン: ディアベッリの主題による33の変奏曲 ハ長調 op.120

【プログラB】
J.S.バッハ: 2声のインヴェンション 第1番 ハ長調 BWV772/第2番 ハ短調 BWV773
                       第3番 ニ長調 BWV774/第4番 ニ短調 BWV775/第5番 変ホ長調 BWV776
バルトーク: 子供のために Sz.42から 10曲(番号未定)
J.S.バッハ: 2声のインヴェンション 第6番 ホ長調 BWV777/第7番 ホ短調 BWV778
                       第8番 ヘ長調 BWV779/第9番 ヘ短調 BWV780/第10番 ト長調 BWV781
バルトーク: 3つのブルレスク Sz.47
J.S.バッハ: 2声のインヴェンション 第11番 ト短調 BWV782/第12番 イ長調 BWV783/第13番 イ短調 BWV784
                       第14番 変ロ長調 BWV785/ 第15番 ロ短調 BWV786
バルトーク: 組曲 op.14,Sz.62
             ***
J.S.バッハ: フランス風序曲 ロ短調 BWV831
バルトーク: ピアノ・ソナタ Sz.80

【プログラムC】
メンデルスゾーン: 厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
シューマン: ピアノ・ソナタ第1番 嬰ヘ短調 op.11
             ***
メンデルスゾーン: 幻想曲 op.28
シューマン: 交響的練習曲 op.13 (1852年改訂版)
 

PAGEUP