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2015/10/14 | KAJIMOTO音楽日記

●ベルリン・ドイツ交響楽団、来日を前に―― トゥガン・ソヒエフ、ベルリン・ドイツ響を語る

音楽監督トゥガン・ソヒエフ&ベルリン・ドイツ響の来日まであと10日ほど!
先日はこのドイツの名門楽団についての座談会を3回にわたってお送りしましたが、
今度は音楽監督のソヒエフのインタビューです。
(公演の折の販売プログラムに掲載するものからの抜粋です)



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―― 興味深いのは、ベルリン・フィルにデビューした年に、ベルリン・ドイツ響のシェフになる発表がされたことです。やはり、ライバルの動向は何かと影響を及ぼすようですね。

「それぞれ、素晴らしいオーケストラです。ほぼ毎シーズン、ベルリン・フィルにも客演していますが、私のオーケストラは、ベルリン・ドイツ響です。ベルリンには複数のオーケストラがありますが、それぞれのオーケストラに固有の聴衆がいる。だから、私たちはベルリン・ドイツ響の聴衆にどんな音楽を提供できるかをまず考えます」


―― ベルリン・ドイツ響の聴衆の特徴はどんなものですか?

「ベルリン・ドイツ響の聴衆は、新しいもの好きだと思います。ドイツの聴衆はともすると保守的な傾向が強いですが、このオーケストラが過去に新しい作品をたくさん演奏してきたこと、それに若年層に開かれたオーケストラであることで、新しいレパートリーを喜んで受け入れてくれます。例えばプロコフィエフ。彼は有名ですが、ドイツ国内で演奏されるのは、交響曲なら第5番、第1番、それにピアノとヴァイオリンの協奏曲を幾つか、ぐらいではないでしょうか。でも、プロコフィエフは交響曲を7曲。そのほか、管弦楽曲、独奏楽器の協奏曲やアンサンブル、バレエ、カンタータ、オペラと実に様々なジャンルの作品を作曲しています。私は、そうした作品を演奏することで、もっとプロコフィエフについて深く知ってもらいたいのです。そして、ベルリン・ドイツ響の聴衆は大変気に入ってくれています」


―― あなたは名門レニングラード音楽院で教育を受けましたが、ロシアに居てどの程度ドイツ音楽の勉強をできたのですか?

「ロシアの音楽院がロシア音楽しか教えていないとしたら、良い指揮者を輩出できなかったでしょう(笑)。私の学校では、ドイツ音楽をきちんとマスターしないで、音楽院を卒業することはできません。レパートリーは、ベートーヴェン、ブラームス、モーツァルトの交響曲が、ロシア音楽同様に基本です。授業は、教授とのマンツーマン。そして、いつ、どの曲を指揮するかは、教授が決めます。ですから、我々は常に基本的なレパートリーは振れるようにしておかねばならない」


―― ムラヴィンスキーのベートーヴェンやブラームス解釈は最高ですね。

「その意見には全く同意します。我々は構成というものを重視する。そして、如何にフル・オーケストラで良いアンサンブルをつくって演奏をするか、そのスタイルを身につけるのです。昨今では、古楽奏法が広まっていることを知っています。しかし、私個人は現時点では興味ありません。モーツァルトやベートーヴェンを少人数で演奏すれば、当然音が変わる。でも、その間、演奏しない楽団員はどうなるのでしょう。彼等には、古典音楽を演奏する機会がなくなってしまう。それではオーケストラとして、良いアンサンブルの技術を磨くことはできません」


―― 古楽同様、近年、スコアの研究が進みましたが、使用する版へのこだわりはありますか。

「基本的に最終版を使います。確かに版の問題は興味深い。しかし、作曲者も試行錯誤して、今の形に落ち着いた訳です。それを、遡って、最初はこうだった、とほじくり返すことがいいこととは思いません」


―― しかし、例えばチャイコフスキーの交響曲第2番の初稿は、演奏する価値があるように思います。初稿はロシア五人組を熱狂させた作品ですし、現在の版は泥臭さがなくなって、整然とし過ぎている。

「でも、初稿は今我々が知るチャイコフスキーではないですよね。彼は結局、五人組に加わらなかった訳だし、自分の意思で新たな方向へ進んだ。だから、私は演奏するときに現行版を使います」


―― 来日もあり、ベルリン・ドイツ響との新ディスクがリリースされました。

「オラトリオ《イワン雷帝》です。ライヴ録音で、当時の聴衆の反応も大変良かったです。おそらくほとんどの人は初めて聴いたと思いますが。日本では映画『イワン雷帝』について知られていますか?」


―― 映画好きには、エイゼンシュタイン監督の作品は知られています。しかし、今回の「オラトリオ」としての《イワン雷帝》は日本でもまだなじみのあるものではないのではないでしょうか?

「これは、プロコフィエフが、カンタータにする前に亡くなったので、死後、同僚のスタセーヴィチによって編纂されたものです。が、名作カンタータ《アレクサンドル・ネフスキー》に劣らぬ、素晴らしい出来映えです」


―― 他に録音したい作品、或いはする予定のものは?

「ベルリン・ドイツ響とは、すでに来年のプロコフィエフ生誕125周年に向けて、プロジェクトをスタートさせています…が、リリースは戦略的なものなので、まだ話せない…」


―― 交響曲第3番や第4番などいいですね。

「オペラやバレエと親和性がある作品ですが、そこがまたプロコフィエフの音楽の魅力です。彼の音楽は、誰にも真似できないユニークなもの。最初の作品からそうです。こうした作品も皆さんに聴いて欲しい!」


―― チャイコフスキーの全集は、考えていますか?

「私は始めから、全集をつくろう、というタイプの指揮者ではない…ので、録音するとしても、徐々にやっていくほうが良いと思っています」


聞き手・文: 山田 真一(音楽評論家)


*当インタビューの完全版は公演当日の販売プログラムに掲載しておりますので、ご来場の方々はぜひご購入いただければ幸いです。


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<ベルリン・ドイツ交響楽団 公演情報>
2015年11月3日(火・祝) 14:00開演 サントリーホール
指揮: トゥガン・ソヒエフ
ピアノ: ユリアンナ・アヴデーエワ

メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」 op.26
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37
ブラームス: 交響曲第1番 ハ短調 op.68

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