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2015/09/25 | KAJIMOTO音楽日記

●ロンドン響来日直前!Vol.2 ――ハイティンクとロンドン交響楽団

86歳になる名匠ハイティンク&ロンドン響の来日は、いよいよ今週末。

気持ちがますます盛り上がるところ、今回は、公演会場で販売されるプログラムに掲載しております、ロンドン在住の音楽ライター、ジェシカ・ドゥシェンさんによるエッセイの一部をご紹介します。

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ベルナルト・ハイティンクは、ロンドン交響楽団(LSO)と“特別な何か”で結ばれている。遠い昔に始動した両者のパートナーシップは、現在もなお進展を見せている。その関係は、モーツァルトからブルックナー、マーラーを経てショスタコーヴィチに至るレパートリーの――さらに他の作品の――演奏を通して、今日まで継続されてきた。



彼らの演奏が放つ不思議な魅力は、いつまでも記憶に残る。たとえば筆者は、このコンビが2009年のBBCプロムスに登場し、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでマーラーの交響曲第9番を演奏した際に、こう評した。「単に効果を狙って成される表現は一切なく、いかなるフレーズも不誠実な瞬間をはらむことはない。ハイティンクは、この音楽の繊細さ、この音楽がえぐり出す魂の脆さに光を当てていく。それでも“告別の交響曲”は、この大作にふさわしく壮大に発展し、力強さを増していった。」

現在86歳のハイティンクだが、引退の兆しを未だ感じさせない。もちろん、「一般的な」職種の人々が定年を迎える年齢をはるかに越えても、なお活動を続ける指揮者は多い。とはいえ、若さや美しい外見がしきりにもてはやされる今日のクラシック音楽界において、確固たる経験と円熟に支えられた年長のマエストロが紡ぐ音楽の偉力は、かつてないほどの実直さを湛えているように思える。

(中略)

意外にも、ハイティンクがLSOの正式なポストに就いたことは一度もない。むしろ彼は、1967年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者となり、1970年代中、この職を維持し続けた。やがてグラインドボーン音楽祭の音楽監督も任され、1987年から2002年まではロイヤル・オペラ・ハウスも率いている。他方、LSOは、歴代の首席指揮者たち―アンドレ・プレヴィンやクラウディオ・アバド、サー・コリン・ディヴィス、最近ではヴァレリー・ゲルギエフ―と共に歩みながらも、絶えずその指揮台に、最上の客演指揮者たちを迎えてきた。ハイティンクもそのひとりである。彼がLSOと共演を重ねるようになると、その演奏は熱狂と喝采を呼び起こし、2000年に自主レーベル「LSO Live」が立ち上げられると、主要レパートリーであるベートーヴェンとブラームスの全交響曲の録音が、ハイティンクの指揮に委ねられた。

もともとヴァイオリニストであったハイティンクは、指揮者としては珍しく謙虚な性格の持ち主である。かつてアメリカのラジオ番組に出演した際には、第二次世界大戦中に輝かしい才能を誇る多くの人々の命が奪われたことに触れ、あの恐ろしい出来事さえ無ければ、今日もっと多くの天才演奏家たちが活躍しているはずであり、自分は指揮者にはならなかったに違いない、と述べている。

ハイティンクはアムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を25年余り率いた後に、ロンドンに移った。実際、彼は比較的じっくりと時間をかけ、これまでの役職の大半を務めている。しかし、彼がシカゴ交響楽団の首席指揮者(2006-2010)であった時代に、ある英国の新聞のインタビューを受けた際には、謙遜して自らをオーケストラの「世話人」になぞらえ、音楽監督のポストを辞退したのは、自分を含む「すべての指揮者には、賞味期限があるから」だと答えている。

演奏家たちの間では、ハイティンクは何よりもまず、言葉ではなく実際の演奏によってリハーサルを進めていく指揮者として知られている。その温かく慈悲深い人となりは、彼がもたらすあの独特のサウンドを通じて輝き出る―絹のような、率直で誠実でまとまりのあるサウンドが、音楽の伝達力を強めていく。数年前、筆者は春のルツェルン・フェスティバルのマスタークラスを訪れ、ハイティンクが若い指揮者たちを指導する場に同席した。彼はブルックナーの交響曲第7番を振る生徒に向かって、「神ではなく山について、もっと考えを巡らせなさい」と声をかけた。この助言に応えた生徒のサウンドは、より柔らかく温もりのある、親しみやすいものに変化した。

(後略)


文:ジェシカ・デュシェン(クラシック音楽ライター・在ロンドン)



*エッセイ全文は、公演会場で販売されるプログラムに掲載されています。



<ロンドン交響楽団 東京公演>
2015年9月28日(月) 19:00 サントリーホール
モーツァルト: ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
マーラー: 交響曲第4番 ト長調

指揮: ベルナルト・ハイティンク
ピアノ: マレイ・ペライア
ソプラノ: アンナ・ルチア・リヒター

●発売中 【チケットのお申し込み】


<ファイナルシンフォニーII by ロンドン交響楽団>
2015年9月27日(日) 15:00 フェスティバルホール(大阪)
2015年10月4日(日) 13:00/18:00 横浜みなとみらいホール

●発売中 【チケットのお申し込み】


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