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2018/02/27 | KAJIMOTO音楽日記

●ロンドン響パーカッション・アンサンブル公演まで間もなく!―― 演奏曲目をご紹介します。


あの世界屈指、ロンドン交響楽団(LSO)の打楽器パートの精鋭たちがやってくるまで、あと1週間。
これほどの強者が集まるパーカッション・アンサンブルの来日公演というのは稀なことですし、その意味では楽しみ以外何物でもないのですが、一方、打楽器をやらない人間にとっては、楽しみではあっても、その発表された曲はどんなものなの?という思いがあるかもしれません。

そこで、メンバーからプログラムノートを送ってもらいましたので(当日の配布プロにも掲載)、どうぞ予習にお読みください!

(ライヒの2曲は先に既発売のCDで聴きましたが、面白い!そしてなんとも精妙です)





チック・コリア(S.キャリントン編):デュエット組曲

 このチック・コリアの作品は、サイモン・キャリントンによる編曲の「魔法」をかけられて、日本初演を迎える。これはLSOパーカッション・アンサンブルのために特別になされた魅力あふれる編曲となっている。
 このデュエット組曲は、チック・コリアとゲイリー・バートンがECMからリリースして反響を呼んだ、独創的アルバム《Duet》に収められている。今回は、2017年に音楽活動から引退したヴィブラフォン界の巨匠バートンに敬意をこめて、小曽根真のKato’s Revengeとともに捧げるものとなる。


ジョー・ロック:Her Sanctuary

 アメリカの偉大なヴィブラフォン奏者、ジョー・ロックによる美しい作品。今回のコンサートでは、ロック自身がLSOパーカッション・アンサンブルのために行なった編曲の日本初演を聴いていただく。心に深く残るメロディーは13/8の拍子による音型で漂うが、鍵盤楽器奏者にとってはまさにヴィルトゥオーゾ感あふれる作品と言えよう。


ジョン・アダムズ:ロール・オーバー・ベートーヴェン

 この20分ほどの魅力あふれる2台のピアノのための作品は、ベートーヴェンの後期の2つのピアノ作品からの抜粋を用いて、ジョン・アダムズによって生み出された。
 アダムズに言わせるなら「このように微細な音楽のフラクタルを、和声を巡る壮大な旅路、あるいはリズムの鏡で囲まれた広間へと誘う」作品であり、熱情的で感情豊かなベートーヴェン作品の持つ衝撃的なバイタリティへのオマージュでもある。同時に、生気にあふれ、決して容易でないヴィルトゥオジティと繊細な抒情性との間を行き交うような、予測のできない音楽がアダムズの手で構築されている。


小曽根真(S.キャリントン編):Kato’s Revenge

 LSOパーカッション・アンサンブルにとって、日本の卓越したピアニスト、小曽根真による魅力的な作品を取り上げられることは大きな喜びだ。この作品は、アルバム《フェース・トゥ・フェース》に小曽根真とヴィブラフォンの名手、ゲイリー・バートンによるデュオの初録音で収められている。そして同時に、このアンサンブルの才能ある編曲者、サイモン・キャリントンの手による3つの編曲作品の第1曲目であり、日本初演となる。


ライヒ:木片のための音楽

 この作品は5人の奏者による抑制された演奏で展開される。5人はA、B、C♯、D♯と1オクターブ高いD♯の音に合わせたウッド・ブロック、あるいはクラベス(*ラテンアメリカの打楽器、丸い棒の1つを左手のひらにのせ、もう1つを右手に持って左手の棒をたたく)を演奏する。ウッド・ブロックは確かに調音されてはいるが、そのピッチ(音の高さ)は2次的なパラメーターに過ぎず、むしろリズムパターンが相互に作用しあう流れに主眼が置かれている。
 曲は一番高い音を出すウッド・ブロックの音に始まり、作品の最後まで、メトロノームのように正確な拍を刻み続ける。これはこの作品を支える柱のような役割を果たしている。その一方で、残りの4人の演奏者は輪唱のように曲に加わっていき、徐々に濃密なリズムのネットワークを我々の目前に描き出していく。一人が加わるごとに異なる拍がさらに重なっていくのである。これは6/4拍子から12/8拍子へと突然にリズムが変わり、あたかも突然のギアチェンジがなされたかのように聴き手には響く。作品はリズムが少しずつ減退していく中で終わりを迎えるが、最後には小節から全ての拍が取り除かれてしまう。こうして一連の作品群は4/4と3/4拍子を経て、突然終わりを迎える。まるで作曲家がテープレコーダーのスイッチを押して不意に音楽を止めたかのようでもある。


ライヒ:六重奏曲

 タイトルが示すように《六重奏》は6人のプレイヤーによるアンサンブルだ。4人のパーカッション奏者が、マリンバ、ヴィブラフォン、バス・ドラム、クロタル(*古代ギリシャの打楽器とそれを復活させたもの)、タムタムと言ったそれぞれ異なる打楽器を演奏し、それに2台ピアノとシンセサイザーを演奏する2人の鍵盤楽器奏者が加わる。この作品は続けて演奏される5つの楽章からなり、全体を通してA-B-C-B-Aのアーチ・フォーム(ボーゲンフォルム)をとっている。楽章は徐々に構造上の核となる部分に向かってゆっくりとしたテンポとなっていく。それぞれの楽章は異なるテンポを取りながらも、拍節法を変化させながら、次の楽章へと移っていくが、新しいテンポは常に前の拍子との関係から生じたものになっている。和声的には、暗く、密度の濃い半音の和音の連続であるが、そこに内包される音の世界はライヒが1984年に作曲した大作、オーケストラと合唱のための《砂漠の音楽》を彷彿とさせるものだ。

 この《六重奏曲》は、新たに見出された豊かな和声を持った後期の作品ではあるが、ライヒの初期の作品の特徴的な要素やテクニックを回顧させるものがある。例えば、この作品の出だしにおいて、ピアノによって演奏される一連の和音の塊は唐突に両手で引き裂かれるが、これはテープ音を繰り返し、フェーズ(位相)させていく手法と似ている。第2楽章で主となるメロディーはアフリカの鐘の音のリズムに基づいており、これは《クラッピング・ミュージック(手拍子の音楽、1972)》や《木片の音楽》の基礎ともなっており、リズムのあいまいさがもたらすパターンの潜在力が生かされている。先の《木片のための音楽》でみられるような、パターンを蓄積していく手法は、この《六重奏曲》においてもとても重要である。それは比較的小さな音楽要素を織り上げていき、複雑なテクスチャーを完成させる。精通した聴衆は、ライヒのアンサンブル特有の限界点を超える、斬新な効果の数々とも相対していただけるだろう。第1楽章では弓で演奏するヴィブラフォンやシンセサイザーを用いることで持続音を演奏する楽器の欠如をカバーし、さらには通常では用いられることのないピッチのベースドラムが加わることで、高音域や中音域の楽器に偏りがちなアンサンブルに絶妙なバランスがもたらされている。それぞれの効果は決して通り一遍のものではない。ここで用いられているテクニックの全ては、音楽の中に見事に織り込まれており、1つ1つのプロセスを構築する礎となって、作品が進行するにつれ、徐々に明確になっていく。

資料提供: ロンドン交響楽団パーカッション・アンサンブル


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