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2017/10/24 | KAJIMOTO音楽日記

●ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の来日まで間もなく!―― ブロムシュテットの言葉


創立275年を迎えるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、90歳の名誉カペルマイスター、ヘルベルト・ブロムシュテットとともに来日するまで、あと10日余り。

昨年、ブロムシュテットがバンベルク交響楽団と来日した折、今年のゲヴァントハウス管日本ツアーのためのインタビューを行い、その記事は公演会場で販売されるプログラム冊子に掲載されます。 ここでは、そのうち印象に残る言葉のいくつかをセレクトしました。

深い洞察と重みのある、そしてポジティヴなマエストロらしい言葉ばかりです。公演前にお読みください!

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「ゲヴァントハウス管は、まずなによりも、典型的なドイツのオーケストラです。どういうことかと言うと、音色がかなり暗めで、ずっしりとした豊かな響きをもっている。低音が土台であるためコントラバスは5本の弦をもっています。4本であるのが普通で、たとえばアメリカでは、5弦をもつコントラバスはほとんど見かけません。4本のものばかり。しかしドイツのオーケストラは、低音を基盤に響きをつくるため、さらに低いC音の絃を備えた楽器を用いるわけです。
 ゲヴァントハウス管の第二の特徴は、古典的なレパートリーに腰を据えて取り組んでいるということです。演奏会は録音されて放送されることになっていますが、ゲヴァントハウス管は、(公共放送の文化役政策上の役割を考慮して)新しい作品を優先的に紹介しなければならないという義務を負っていません。ゲヴァントハウス管のレパートリーの中心にはドイツ音楽があります。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、ブルックナー、マーラー…。もちろん近・現代の音楽も演奏しますし、さまざまな国の音楽を取り上げてきました。ゲヴァントハウス管のフランス音楽の演奏はとても素晴らしいし、イタリア音楽も見事です。さらにロシアのもの、北欧やイギリスのものも一流です。でも中心は、やはりドイツ音楽にあります。

 したがって11月の日本公演で演奏するのも、すべてドイツ音楽です。それどころか、すべてライプツィヒで、ゲヴァントハウス管によって初演された作品です。ブラームスの《ドイツ・レクイエム》も、そのヴァイオリン協奏曲も、シューベルトの大ハ長調の交響曲も、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲やブルックナーの第7交響曲も、すべてがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の演奏によって産声をあげた作品ばかりです。もちろん時代は変わりましたが、このオーケストラの演奏様式は世代から世代へと引き継がれて、それほど大きく変わってはいません。新しい世代の楽員たちは、つねに演奏をとおして経験から伝統を身に着けてゆきます。この伝統は、とくに楽節のつくり方に顕著です。私たちは「バーン」と荒々しく音を出すことはなく、「ティー」とつねに美しく音をつくります。つねに美しく柔らかで、非常に力強い音を出すときにも、「ビャン!」と突発的な乱暴な音ではなく、「ブワァーン」と温かく柔らかです」


「私が80歳を過ぎてからウィーン・フィルと初共演をすることになったとき、友人の或る音楽批評家が、きみは大丈夫さ、楽員たちはみな君のことを尊敬しているから自動的にうまく進むよと言ってくれましたが、無論これは冗談で、演奏が自動的に進んでしまうのは、けっして望ましいことではありません。音楽の演奏に必要なのは表現の密度の高さなのです。しかも、それは物理的な音の密度ではなく、精神的なそれなのです。そこに音楽の芸術としての偉大さもあります。大きな動きを伴った物理的活動は音楽とは無縁のもので、そのエネルギーは芸術家の個性に由来するものなのです。指揮者が及ぼす物理的な作用が少なければ少ないほど、精神的な密度がより高ければ高いほど、よい結果が生まれることはよく知られています。オーケストラというのはタクシーではないのですから、あっちへ行け、こっちへ行けと次々に指示されてもうまく走れるわけではありません(笑)。よい結果は高度な集中から生まれるものなのです」


「たとえば演奏旅行ですと、同じ作品を繰り返して何度も演奏しますが、そのひとつひとつが違ったものでありたい。もっとよいものでありたい。いつも、そう念じています。繰り返しではなく、毎回が新しい始まりでありたいと願っています。音楽家は、やはり探究者なのです。新しいものに到達することを目指して、だが、永遠に果てしがない。指揮者はオーケストラと手を取り合って、その道を進んでゆくのです」


聞き手・文: 岩下眞好(ドイツ文学・音楽評論家)


*このインタビューは昨年11月に東京で行われました。岩下先生はこの取材の数か月後に逝去され、このプログラム用記事は弊社との仕事において最後の原稿となりました。改めて、心からの感謝とともに謹んでご冥福をお祈り致します。(KAJIMOTO編集室)

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