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2014/11/09 | KAJIMOTO音楽日記

●パッパーノ&ローマ・サンタ・チェチーリア国立管 東京公演初日を聴いて

いよいよ3年ぶりに、サー・アントニオ・パッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア国立管が来日し(この間にパッパーノは“サー”の称号が!)、
11/7(金)に東京公演初日を迎えました。



今年上半期シーズン、ニューヨーク・フィルやフィラデルフィア管、そして先日のモントリオール響と北米のパワフルなオーケストラを続けて聴いてきたせいか、サンタ・チェチーリア管、意外に音が小さいな、などと思ったのですが、これは相対的なもので錯覚? やはり音楽は劇的でスケールは大きく、そして初めてこのコンビで来た7年前に比べるとパッパーノとのコンビが格段に熟していて、音楽の運び、細かい部分での表情がさらに自在になってきましたね。その分、やや落ち着いてきた感じも受けます。

いや!しかし弦楽器、管楽器ともに音がきれいで色っぽい(特にクラリネットのカルボナーレ!)、そして何よりも美しいカンタービレ=「歌」がいやが上にも心に流れ込んで来ます。アンサンブルも、よく「縦が揃う」という言い方をする整然さではなく、腕自慢の奏者たちの音が自発的に集まり、調和し、時にはコントラストを作るという在りよう。
そして最強音でもどのセクションもつぶれずよく聴こえ、全体の均衡がとれている、というのが、コンセルトヘボウ管など超一流のオーケストラと同じ質をもつ証だ、と改めて聴いていて思われました。
またピアニッシモの領域での、ある時は心和む静けさ、ある時は時が止まったかのように緊迫した静寂を作るオケの(もちろんパッパーノとの共同作業での)ここまでの妙技は、以前には聴かれなかった気がします。



しかし彼らの「歌」のなんたる美しさ、高貴さたるや、それはソリストのブルネロが弾いたドヴォルザークのチェロ協奏曲での演奏とまったく軌を一にするもので、ブルネロのソロに集約的に表れていたものがオケの連中も同じ。息づかいの自然なカンタービレ(歌手の方々はぜひこのオーケストラを聴きに来たらいいと思います)が聴き手の心に注がれ、しみてきます。本当に感動です。
ある時は高らかに朗々と歌い、ある時は密やかに内面的にささやく、その間の無限のニュアンス、たくさんの種類の歌を歌うという技に、このオケの秘儀を見る気がしました。

その前述のマリオ・ブルネロのソロがドヴォルザークで歌うノーブルなメロディ・ラインに、“合いの手”を入れる木管群がこんなに冴え冴えと明確に(まるで鳥の声のように)響くのは初めて聴きましたし、今まで聴いてきた演奏よりも、「音楽が増えた」感じすらしたくらいです。



後半のブラームスの第2交響曲はさらに熱く、感動的でした。そもそもジュリーニやアバド、ムーティの指揮するブラームスを思い出せば自明なのですが、イタリアのマエストロ、そしてオケが演奏するブラームスにはドイツ系の人たちとはまた一味ちがった格別さがあるのです。
明るい音、陽光きらめくブラームス(北の憂鬱な風土で生まれたブラームスは、夏の湖畔のペルチャッハで南の国に憧れながら、こんな音楽が書きたかったのに違いありません)。

インテンポが基本の演奏なのですが、高らかに歌うところ、密やかにささやくところ・・・先に書いたように色んな歌が織り重なるので単調になるどころか、起伏や襞の多い、情の豊かなブラームスが、(そしてこれはイタリアをはじめ地中海のアーティストたちの特徴ですが)形の美しい全体像をもって提出されるのです。また、(いい意味で)弦楽器群が高弦・低弦と音色が不揃いなので、ブラームスの凝った対位法―― いっぺんにたくさんの旋律が重層的に聴こえるので、音楽空間としても立体的に聴こえてきました。
ブラームス演奏のひとつの理想形とすら思えました。これももちろんドイツ・オーストリア系のものとはまた違うベクトルのものですが。そして逆に言えば、彼らのように魅惑的な「歌」に満ちたオーケストラだからこそ、ドヴォルザークやブラームスがどれだけ素晴らしい作品を書いた作曲家だったかがわかる、という気がします。

ところでイタリアのオケらしいな、と思ったのが、このブラームスのフィナーレのコーダでの、イタリア・オペラであれば「ストレッタ」と呼ばれるような急な加速。最後はあくなき高揚ととともに一気に駆け抜けました。あれだけのブラボー、大歓声が沸いたのは当然ですよね!

アンコールは彼らお約束のヴェルディは「運命の力」序曲!これをやってサンタ・チェチーリア管以上のオーケストラはない、と私はこの3回の来日公演を聴いてきて思うのですが(スカラ座ですら)、如何だったでしょうか?最後にやったポンキエッリの「時の踊り」もそうですが、彼ら、あとロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲と、マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲をいつもやるのですが、今回は果たして・・・。
(私的には後者を絶対やってほしい!この曲もまた、ここまで陶然とするほど美しい演奏を彼ら以外から聴いたことがありません)


あ、そして最後に。ティンパニのエンリコ・カリーニさんにご用心(笑)。
彼の素晴らしいティンパニ―― 大地を裂き、オケ全体の音を底上げするような轟音・・・そのユーモラスは体躯から繰り出すアクションが面白すぎて、他に視線が移せなくなってしまうのです。
どんなアクションかは・・・ネタバレ禁で、ぜひ実演でお確かめ下さい。
11日(火)のR.シュトラウス「アルプス交響曲」でも存分に披露するハズですから。

そんなカリーニさんを典型として、サンタ・チェチーリア管を聴くことはとにかく楽しく、音楽は素晴らしく、人生こうでなくちゃ!と思わせること間違いなし、と思いますよ。
ぜひたくさんの方々とそんな味わいをシェアできたら、と願っています。


チケットのお申込みはこちらまで 



ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団 2014年 11月 来日ツアー


指揮:アントニオ・パッパーノ
ヴァイオリン:諏訪内晶子(11/9,11,12)
チェロ:マリオ・ブルネロ(11/5,7,10)

■2014年11月5日(水) 19:00 京都/京都コンサートホール 【プログラムB】 ※終了
【問】京都コンサートホール 075-711-3231/075-711-3090

■2014年11月7日(金) 19:00 東京/サントリーホール 【プログラムB】 ※終了
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年11月9日(日) 14:00 宮崎/メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場) アイザックスターンホール 【プログラムA】
【問】公益財団法人 宮崎県立芸術劇場 0985-28-7766

■2014年11月10日(月) 18:45 名古屋/愛知県芸術劇場 コンサートホール 【プログラムB】
【問】テレビ愛知 事業部 052-243-8600

■2014年11月11日(火) 19:00 東京/サントリーホール 【プログラムA】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年11月12日(水) 19:00 東京/東京芸術劇場 【プログラムA】
【問】公益財団法人都民劇場 03-3572-4311


【プログラムA】
ロッシーニ: オペラ「セビーリャの理髪師」序曲
ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 op.26 (ヴァイオリン: 諏訪内晶子)
    * * *
R.シュトラウス: アルプス交響曲 op.64

【プログラムB】
ヴェルディ: オペラ「ルイザ・ミラー」序曲
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 (チェロ: マリオ・ブルネロ)
    * * *
ブラームス: 交響曲第2番 ニ長調 op.73
 

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