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2013/06/17 |

●「Yuja Says...」ユジャ・ワンが語るユジャ・ワン/連載3:“まだ若かったし、怖いもの知らずだった”

まもなく来日!のユジャ・ワン、ロング・インタビュー第3弾。
20代、まだまだ若~いユジャですが、さらに若かりし頃――デビュー時のこと、当時から共演を重ねてきたデュトワのこと、近年意欲をみせる室内楽のこと…について語ります。


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「Yuja Says...」
インタビュー・文 青澤隆明

#3 「まだ若かったし、怖いもの知らずだった」


 ユジャ・ワンは、ここ10年ほどで華々しい躍進をしてきた。いま20代の半ばを歩く彼女自身はいま、これまでの歩みをどのように振り返るのだろう。

そうね。年をとった(笑い)。確かにそう、デビューして10年になる。16歳のときに始めたので。長かったとも思えるし、短いとも感じる。それほど経った気はしないけど、思い出せば一世紀も前のことのようね。たくさんのリスクを超えてきたのをうれしく思うし、若くて、怖いもの知らずだったから、勇気をもってやってきた(笑い)。だけど、いまも過去より、ずっと前をみているし、できるだけ長く演奏できたらと思う」。

--自らに課しているリスクは、若い頃よりもやはり大きくなっているのでしょう?

うーん……、違うものになった。たとえば、チャイコフスキーの協奏曲第1番を、テミルカーノフの指揮でサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団と演奏するとき、いまだったら仕事を受ける前によくよく考えると思う。でも、私はいつもリスクをもって決断してきた。小さなことからすべて……つまりどんなレパートリーを弾くか、なにをしたいか、どんなプロジェクトを成し遂げるか、とかね。前に経験していないことをするときは、いつだって自分にはこれができるかという疑念もある。だから、物事はだんだん複雑になってきたんでしょうね(笑い)

--たしかシャルル・デュトワとの共演もそのチャイコフスキーの第1番が始まりでしたね。この6月にはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のアジア・ツアーの一環で、日本でも彼とまた共演されますが。

そう、マルタ(・アルゲリッチ)の代役でね。デュトワとはプロコフィエフやラフマニノフなど多くの協奏曲をいっしょに演奏してきたけれど、ロイヤル・フィルと今度のアジア・ツアーで演奏する2曲、ベートーヴェンの第4番 [←注:中国で演奏] とショパンの第1番は初めて。彼は曲のことをいっぱい知っているでしょう、マルタと何度も演奏してきたので(笑い)」。

--指揮者として気に入っているのは、デュトワのどんなところですか?

ぜんぶ。パーソナリティーもなにもかも。10代のときに初めて出会って、クリックするみたいにうまくいった。偉大な指揮者よ。たくさん一緒にコンサートをしたけど、ここ3、4年はあいていたから、久しぶりの感じもある」。

--全般的にいって、あなたが指揮者に求めることは?

まずはキュートでないとね(笑い)。なんだろう? 音楽的なパーソナリティーとキャラクター。魔術的に補い合うようなこと。2つの両極端な例がある。ひとつは、指揮者とソリストが互いにとても似ているので、話し合う必要すらない場合。デュトワがそうだし、若い人では最近共演したドゥダメルがこのケース。ドゥダメルとベネズエラでのコンサートをライヴ録音したものは、そのうちCDになるはず。クラウディオ・アバドやマズアは正反対のケースで、私自身の自然な欲求には逆らっていくんだけど、彼らを深く尊敬しているので結果的によい演奏になる」。





--さて、東京で演奏するのはショパンの協奏曲第1番ですが、どんなところに作品の魅力をみていますか。

ショパンであるだけで魅力的よ、私にとっては。彼が19歳のときに書いた曲で、愛や希望に対するイノセンスやパッションがある。そのいっぽうで彼はとてもノーブルだから、イノセンスとともに高貴な魅力も出ていると思うけれど、それを説明するのは難しい。ちょっとメランコリーもあるけれど、後年の作品ほどじゃない。思い出よりも、なにかよいものへの期待や憧れのほうが大きい。ホ短調というのは興味深い調性だしね。第2楽章は、彼のエテュードのように響かせることはかんたんだけど、ショパンは天才だから、完璧でないものなど書けなかった。私はマズルカ、ワルツ、ファンタジー、ソナタのほうがたくさん演奏しているけれど、ここにはシンプルで、なにか溢れてくるものがある。最終楽章で好きなのは、とてもダンス的なこと。ダンスと歌うこと、みせびらかすことは(笑い)、音楽の本質で、演奏の本質であると思う

--今年はこの4月のリサイタル、6月はコンチェルト、さらに12月にはチェロのゴーティエ・カプソンとのデュオ(詳細)でもまた来日されますね。あなたの室内楽が日本で聴けるのは初めての機会なので楽しみです。

室内楽はいつだって大好き。自分がとっても上手に演奏できると感じられるから(笑い)。いやいや、ピアノと弦楽器の響きのブレンドが好きなの。自分ひとりでピアノを弾いているときにはそれはできないことだから。10本の指で弾くときも、ときには室内楽を演奏しているように想像して演奏するけれど、弦はほんとうにピアノの音をよくしてくれる。単独でピアノを弾くときには得られないような、そうした音のブレンドとバランスがとても好きです。若い頃や中国にいた時代はあまり演奏しなかったけれど、カーティス音楽院で勉強するなかで、室内楽への関心がどんどん高まってきた。12月にはゴーティエ・カプソンといっしょに日本に戻ってくるけれど、チェロは私の大好きな楽器。旋律を非常に長く、そしてとても美しく保てるから。ラフマニノフのソナタは大好きなので、これはもちろん演奏するけど、他の曲はまだ決まってない(笑い)」。


最終回 #4 「自分のポテンシャルを信じている」につづきます)



<ユジャ・ワン 次回来日情報>

2013年6月27日 (木) 19:00 開演 (18:30 開場)
会場:サントリーホール

【共演】
シャルル・デュトワ(指揮)
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

【プログラム】
メンデルスゾーン : 序曲「フィンガルの洞窟」 op.26
ショパン : ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11(独奏:ユジャ・ワン)
ドビュッシー : 海
ラヴェル : バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲

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ユジャ・ワン プロフィール

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