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ヴァイオリン クリスティアン・テツラフChristian Tetzlaff

PROFILE


 クリスティアン・テツラフは、クラシック音楽界でもっとも引く手あまたのヴァイオリン奏者のひとりとして、長年にわたりエキサイティングな活動を展開してきた。 ガーディアン紙(T.アシュレイ)は、テツラフの独奏によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(指揮:ダニエル・ハーディング)について、「これまで聴いてきたこの作品の全ての演奏を凌ぐ」と評した。フランクフルター・ルントシャウ紙(H-K. ユンクハインリヒ)では、馴染みのあるベートーヴェンの協奏曲を「再発見」させる演奏と称えられた。

 テツラフの演奏会はしばしば、奏者にとっても聴衆にとっても、自身の存在を揺り動かされるような機会となる。聴き慣れた古い作品が突如、全く新しい光をまとって現れるからである。さらに彼は、自ら普及に貢献したヨアヒムの協奏曲のような知られざる名曲に注目し、自ら初演を担ったヴィトマンの協奏曲のような多くの新作をレパートリーとして定着させてきた。極めて幅広いレパートリーを誇るテツラフは、年間およそ100公演を行っている。これまで、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のアーティスト・イン・レジデンスを務め、ジェームズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団のコンサート・シリーズにも数シーズンにわたり出演してきた。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のほか、アンドリス・ネルソンス、ロビン・ティチアーティ、ウラディーミル・ユロフスキら一流指揮者が率いるイギリスのトップ・オーケストラに定期的に客演している。

 1966年、ハンブルク生まれ。現在は家族と共にベルリンで暮らしている。極めて高度な演奏技術を備えたテツラフは、とりわけ以下の3点ゆえに、ユニークな存在である――彼は楽譜を忠実に再現し、音楽を言語として理解する。そして偉大な音楽作品を、実存的体験を映し出す物語とみなしているのだ。それは自明なことのように思えるが、マンネリ化がすすむ昨今の演奏会を鑑みれば、独特のアプローチと言える。第一にテツラフは、楽譜に出来るかぎり寄り添おうと努める――“伝統的な演奏”にとらわれず、手垢のついた演奏技術の単純化にも背を向ける。それによって、すでに知られている作品に新たな鮮明さと豊かさをもたらすのだ。テツラフはヴァイオリン奏者として、作品への奉仕を貫くが、それは結果として、彼の演奏を極めて独創的なものにしている。第二にテツラフは、ヴァイオリンを介して「語る」。彼の演奏はまるでスピーチのように、多様な表現手段を駆使していく。それはしかし、単に調和やまばゆい超絶技巧を志向するだけではない。第三に、テツラフは音楽史上の傑作を、実存的な問題を扱う物語とみなす。偉大な作曲家たちが作品に込めてきたのは、強烈な感情、大きな喜び、深刻な難局だ。テツラフもまた音楽家として、感情と音楽表現の限界を拡げようと努めている。多くの作品は、真っ向から生と死の問題に向き合っているが、テツラフが目指すのは、これを聴衆に示唆することである。

 このようなアプローチには、リスクを冒す勇気、輝かしいテクニック、開かれた心、そして生に対する鋭敏さが不可欠である。テツラフが長年ユース・オーケストラに所属していたことは、意味深いエピソードとして特筆に値する。彼はリューベック音楽大学でウーヴェ=マルティン・ハイベルクに師事したが、ハイベルクによれば、表現こそが演奏技術の鍵を握っているのであって、その逆ではない。テツラフは室内楽を、リサイタル奏者や協奏曲のソリストとしての活動と同等に重視してきた。1994年に結成した弦楽四重奏団「テツラフ・カルテット」は、ディアパゾン・ドールなどの賞を獲得。ラルス・フォークトと妹ターニャ・テツラフとのトリオでは、グラミー賞にノミネートされた。ソロ・アルバムも数多くの賞に輝いている。

 2016年/17年シーズンには、4大陸で演奏を行う。そのハイライトとして、メトロポリタン歌劇場管弦楽団(指揮:レヴァイン)、ロサンゼルス・フィルハーモニック、シカゴ交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、シドニー交響楽団との共演、アムステルダムのネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団でのアーティスト・イン・レジデンスとしての活動が挙げられる。さらに、ロビン・ティチアーティ指揮スコットランド室内管弦楽団とはアジア・ツアーに、ラルス・フォークトとはアメリカ・ツアーにのぞむ。室内楽奏者としても(テツラフ・カルテット、ターニャ・テツラフとラルス・フォークトとのトリオ)、パリ、ロンドン、アムステルダム、ベルリンを始め、ヨーロッパ各都市を訪れる予定である。

 ドイツのヴァイオリン製作者ペーター・グライナーが手がける楽器を使用。定期的にクロンベルク・アカデミーで後進の育成にも励んでいる。

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