NEWS

ニュース

指揮者クリストフ・フォン・ドホナーニさんの訃報に寄せて 指揮者クリストフ・フォン・ドホナーニさんの訃報に寄せて

©Terry O’Neill/Decca

 20世紀から21世紀にかけて、世界を代表する指揮者の一人として活躍されたクリストフ・フォン・ドホナーニさんが9月6日、ミュンヘンで亡くなられました。95歳でした。

 ドホナーニさんは1929年ベルリン生まれ。ハンガリーの高名な作曲家エルンスト・フォン・ドホナーニの孫で、この祖父に指揮をはじめ、音楽全般を学びました。その後やはり祖国の先輩であるゲオルク・ショルティのアシスタントとしてフランクフルト歌劇場の指揮者となり、後に同劇場の音楽総監督に就任。リューベックやカッセルの歌劇場の音楽監督を経て、1978年にはハンブルク・オペラの芸術監督となり、84年には来日公演でモーツァルト《魔笛》やR.シュトラウス《影のない女》(日本初演)を披露しています。ウィーンやミュンヘンのオペラハウスでもワーグナーの《ニーベルングの指環》など、数々のオペラを指揮しました。

 ドホナーニさんの冷静で明晰、バランス感覚が抜群の音楽を、徹底した妥協なきアンサンブルで最大限に成し遂げたのは1982年から2002年まで音楽監督を務めたクリーヴランド管弦楽団との活動だったと思います。
 KAJIMOTO(当時は梶本音楽事務所)では、1987年に当コンビを初めて招聘しましたが、特に90年来日時のマーラー「交響曲第9番」、そして同じくマーラー「第10番」のアダージョとシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲(初来日の若きクリスティアン・テツラフが独奏)の、すべての音が透けて見えるような、また余裕をもって曲の構造を聴き手に見せてくれる演奏は驚異でした。「これぞプロフェッショナル中のプロフェッショナルの指揮者&オーケストラの仕事だ」と我々スタッフも心打たれたものです。
93年にサントリーホールで行われたベートーヴェンの交響曲全曲公演でも、デッカ・レーベルからリリースされていた数多い録音でも、それは同様でした。

 2007年には、その3年前から首席指揮者を務めたハンブルク北ドイツ放送交響楽団(現・NDRエルプフィル)との来日公演における、東京オペラシティでのブラームスの交響曲全曲演奏がこれまた白眉。当時たくさんのお客様が異口同音に「足しも引きもしない、これこそが本物のブラームスの姿」と感想を述べられていましたが、まさしくそうしたものだったと思います。北ドイツの作曲家のほの暗い熱いロマンを、緻密であり同時に壮大でもある音楽として渾然一体と…。それはまたドホナーニさんの指揮そのものではなかったか、とも今になって思えるのです。

 音楽への献身の中にたくさんの発見をもたらしてくれたドホナーニさんに、心からの感謝の意を表すとともに、ご冥福をお祈りいたします。

KAJIMOTO

LATEST NEWS

最新ニュース