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イ・ムジチ合奏団、今秋の来日公演で被爆80年の節目に寄せた新曲を「四季」とともに披露。 イ・ムジチ合奏団、今秋の来日公演で被爆80年の節目に寄せた新曲を「四季」とともに披露。
作曲コンクール優勝作品《二輪の花》を世界初演

ヴィヴァルディの《四季》といえばイ・ムジチ。イ・ムジチといえば《四季》。
1950年代という頃にバロック音楽を、そして何よりもヴィヴァルディ《四季》を世界で最もよく知られる曲としてポピュラーなものに押し上げたのがイ・ムジチ合奏団でした。
彼らは今秋9月、2年ぶりに来日します。
2025年は広島・長崎の被爆から80年という節目にあたります。
これを機にイ・ムジチ合奏団は、音楽を通じて平和への願いを伝えるべく、国際的な作曲コンクール「イ・ムジチ作曲コンクール2025(I Musici International Call for Scores 2025!)」を開催しました。世界各国から集まった新作の中から、団員全員の審査により、アントニオ・マルコトゥッリオ(Antonio Marcotullio)氏の《The Two Flowers(二輪の花)》が優勝作品に選ばれ、本ツアーにて世界初演されます。
長年日本で親しまれ、深い信頼を築いてきたイ・ムジチ合奏団ならではの特別企画。
この9月、祈りをこめてイ・ムジチの《四季》をふたたび耳にする、そのかけがえのない時間をぜひご体験ください。
プログラムノート
《二輪の花(HiroshimaとNagasaki)》
この作品は、ヒロシマとナガサキという二つの都市がたどった「破壊」と「再生」の運命に着想を得た、4つの楽章から成る組曲です。この二都市は、無防備な市民に対して原子爆弾が使用されたことによる悲劇の、普遍的な象徴として世界に知られています。
第1楽章では、穏やかな8月の朝に太陽が静かに昇る情景が描かれます。広島と長崎の人々が日常の中で目を覚まし、新たな夏の日を迎えようとする静かな時間が流れます。彼らは、まもなく自らが歴史的悲劇の中心に置かれることをまだ知りません。
第2楽章では、爆発という決定的な瞬間が描かれます。激しい音のうねりと緊張感あふれる対位法により、破壊の衝撃が音楽として表現されます。
第3楽章では、「痛み」を描写します。哀悼と祈りに満ちた音調の中で、各パートが親密に対話を重ね、深い悲しみと喪失を静かに奏でます。
第4楽章では、「再生」の情景が描かれます。日本人の勤勉さと精神的な強さによって、破壊された都市が再び立ち上がる姿を音楽が力強く語ります。
《二輪の花》というタイトルには、たとえ花が摘まれても種から再び咲くように、ヒロシマとナガサキもまた内に宿した力によって甦り、かつての輝きを取り戻したという希望が込められています。
作品は最初の静けさへと回帰しながら終わります。これは復興を果たした都市に再び訪れた穏やかな日々と、全世界の人々が戦争の記憶を通じて、平和と連帯、そして真の協力関係を築くことへの願いを象徴しています。

── アントニオ・マルコトゥッリオ
参考音源はこちらからお聞きいただけます。