MESSAGE
FROM
GIL SHAHAM
ギル・シャハムからの
メッセージ
VIOLIN
GIL SHAHAM
日本公演で披露する
コンテポラリー作品について
ギル・シャハムが語る
TEXT BY GIL SHAHAM
TRANSLATE BY KUMIKO NISHI
皆さま、こんにちは!ギル・シャハムです。今回のリサイタルで取り上げる3つの現代曲について語ってみたいと思います。いずれも無伴奏ヴァイオリンのための曲です。とても幸運なことに、私自身が3人の作曲者たちと知り合いで、直(じか)にお話ししたこともあります。
作曲年順にお話ししましょう。
まずはマックス・ライミがヴァイオリン独奏のために書いた練習曲、その名も《アンガー・マネジメント》[怒りのコントロール、の意]です。マックスは才気煥発な作曲家なのですが、実は私が最初に出会い・仕事を共にしたのは、“シカゴ交響楽団のヴィオラ奏者”としてのマックスでした。ある日、リハーサルの休憩中に彼から五線譜を手渡され、こう言われました。「ねえギル、今このヴァイオリン・ソロ用の練習曲集を書き進めているところで、これが最新の曲なんだ。」彼は、ただ私に楽譜を見せて感想を求めてきたのですが、私がすっかり曲を気に入ってしまって。数日後すぐに、この曲をシカゴのシンフォニーセンターで[協奏曲演奏後のアンコールとして]初演できたことは、私にとって幸運で光栄なことでした。
次はスコット・ウィーラーの《アイソレーション・ラグ》[アイソレーションは、孤立の意]について。この曲をスコットが書いたのは、新型コロナウイルス感染拡大中にロックダウンが始まった直後のことでした。ちょうど、演奏会が軒並み中止になり、全てのコンサート・ホールが閉まっていた頃です。スコットは、当時の音楽家たちの微妙な心もちを見事に捉え、音楽に託しています——この曲では、自宅で独りで練習する音楽家たちの、さまざまな心情が行き交います。じっさい、私たち演奏家は、音楽をエンジョイすると同時に、他者と一緒に音楽を奏でることを切望していました。誰かと一緒に、そして聞いてくれる誰かのために、コンサートの舞台に立って協奏曲を演奏することへの憧れ……。私は、この曲をオンラインの音楽祭で初演できたことを誇りに思っています。スコットは、このロックダウン中に開催された100%ヴァーチャルな音楽祭のために《アイソレーション・ラグ》を書き下ろしたのです。
リーナ・エスメイルの《When the Violin》は、ヴァイオリン独奏のための小品です。私がこの曲を初めて聞いたのはインターネット上で、その時の演奏者はリーナのご主人、ヴィジェイ・グプタ(Vijay Gupta)氏でした。曲を聞きながら、まるで催眠術をかけられたようにうっとりとしたことを鮮明に覚えています。この上なく美しい音楽だと思いました。以来、この曲を次に聞ける機会が待ちきれませんでしたし、すぐに自分でも弾いてみたいと思いました。この曲は、ハーフェズという詩人の詩をもとに書かれています——詩のテーマは「ゆるし」です。私の心を深く揺さぶる音楽です。
聴衆の皆さまに、これら3つの独奏曲をお楽しみいただけますように!
ギル・シャハム
(訳 : 西 久美子)
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