YU KOSUGE
Special Interview

小菅 優
スペシャル・インタビュー

Pianist

YU KOSUGE

11月開催のソナタ・シリーズVol.2「夢・幻想」のこと、
そして続くシリーズ後半への意気込みを語る

小菅 優 スペシャル・インタビュー

TEXT BY TAKEHIRO YAMANO
PHOTOGRAPHS BY TAKEHIRO GOTO

Vol.2は《夢・幻想》――メンデルスゾーンとベートーヴェンの幻想美から
メンデルスゾーン:幻想曲 嬰ヘ短調 op.28《スコットランド・ソナタ》
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op.27-2《月光》
シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D894《幻想》


―シリーズ初回のVol.1《開花》は、大作曲家の出発期に書かれた名作・力作・傑作たちを弾くプログラムでしたが、それに続くVol.2は《夢・幻想》というテーマにされていますね。

「いろいろなソナタから、テーマ別に選んでいったら、どんな風になるだろう‥‥と思ったときに、やはり〈幻想〉というテーマの作品がいろいろ浮かんできました」

―最初に置かれたのが、メンデルスゾーンの幻想曲 嬰ヘ短調《スコットランド・ソナタ》[1834年]とは、ちょっと聴く機会の少ない曲ですが、いいですね。


「メンデルスゾーンらしい繊細な音とロマンティックな歌と‥‥。同じメンデルスゾーンの、交響曲第3番 イ短調《スコットランド》[1830~42年]を、キリル・ペトレンコ指揮のベルリン・フィルのライヴで聴いたとき、もの凄く素晴らしくて‥‥。それ以来、メンデルスゾーンとスコットランド、というのが頭に残っていたのです」

―なるほど。こちらのソナタは、全3楽章が通して演奏される、もっと演奏されてもいい佳曲ですから、良い機会ですね。そしてメンデルスゾーンに続いては、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op.27-2《月光》[1801年]です。


「このソナタは、Sonata quasi una fantasia(幻想曲のようなソナタ)というサブタイトルがベートーヴェン自身によって付けられていますが、メンデルスゾーンの幻想曲の後に続けて《月光》というのは、調性を考えてもいいのではないかと思いました。1楽章がアダージョという斬新で自由な構成と即興性を含む幻想的ソナタであり、どこか遠い人を想うような、人間らしい感情が常に伴う作品だと思います。

―《夢・幻想》というテーマのなかに、あらためて《月光》ソナタをおいて聴き直してみるのは、また新しい体験になると思います。

シューベルトのアンビバレンス――本当に美しいところで、本当に悲しい

―そして、Vol.2の最後には、シューベルトのピアノ・ソナタ第18番 ト長調D894《幻想》[1826年]を。

「これは、ずっと弾きたいと思いながら、まだ弾いていなかった作品です」

―小菅さんのシューベルトは、ファンにとっても楽しみな選曲です。

「シューベルトは、メンデルスゾーンと全く生い立ちが違います。メンデルスゾーンは裕福な家に生まれて、旅に出ていろいろな経験を積むことも出来ましたが、シューベルトにはそんな余裕はなかった。幼少期から家庭的な問題もあって、孤独を味わってもいた」

―良き友人たちに恵まれながらも、深い孤独を知る人だったでしょうね。

「ですから、この Vol.2《夢・幻想》では、ある意味で、いい夢と悪い夢、の両方を扱うとも言えます。いや、悪いというのは違うかな‥‥シューベルトの場合は、空想の世界があまりにも強いというか、空想しないと幸せになれない、といったアンビバレンスなところがありますよね」

―わかります。

「シューベルトの、そういったところに凄く興味があるんです。‥‥彼の音楽は、本当に美しいところで、本当に悲しい。この《幻想》ソナタに限らず、さまざまな作品においてそういうところを感じます」

―今回のシリーズでは、このVol.2《夢・幻想》でシューベルトのソナタ第18番《幻想》を、そして最終回・Vol.5《黄昏》の最後では、ソナタ第21番を弾かれますから、同じ作曲家のソナタをテーマとの繋がりの中で比べ聴いていただいて、人生のさまざまな貌を音楽から感じ取っていただけるのでは‥‥と思います。

「《幻想》ソナタでは、出だしから宙に浮いたような幻想性‥‥、それまでの作品で、こんな始まり方をする作品はなかったですよね。シューベルトはこのあたりから、病気のこともあって、死が見えてきているというか、自身の人生を客観的に振り返っているように感じることがあります。牧歌的でもそれは空想の世界であって、寂しさもある」

―先ほど仰った「本当に美しいところで、本当に悲しい」というお話とも繋がりますね。


遙かな山なみ、小川のそばに咲く花‥‥シューベルトの〈素朴〉

―先のベートーヴェンも続くシューベルトも、楽都ウィーンで活躍した人ですが、シューベルトのほうは生まれもウィーン郊外、人生まるごとウィーンで過ごした人ですから、そのあたり違いもありますね。

「シューベルトは〈ウィーンの人〉ですよね。ドイツとはメンタリティも違いますからね、のんびりしていて。ウィーンからだと、中欧や東欧のほうが近くて、むしろドイツは遠く感じる。私もオーストリアにいた時にウィーンに通ったのですが、そこでいろいろなことを感じました。伝統があるからこその保守性や偏見もありながら、ウィーンにしかない素朴さ、自然の美しさもある。さらに、シューベルトの時代には、政治的な束縛と自由への想いもあったり‥‥」

―いろんな背景が、このソナタにも溶けているでしょうね。

「同じような山が続いているオーストリアを歩きながら、自分の人生を考えているような‥‥。この曲のいろいろな演奏があるなかで、たとえばルプーの録音は、メヌエットでウィーン風のリズムをすごく強調するんです。このあたり難しいですよねぇ。・難しいですね。2楽章の素朴さも。たとえばいきなり出てきて語りかける、みたいな出だしは、歌曲集《美しき水車小屋の娘》からの一場面のように感じます。そういうシューベルトらしさ、をうまく出せればいいんですけど」

―生きて暮らした土地と、音楽との関係も深いでしょうね。

「シューベルトの初期の交響曲なんて、同じことを延々と繰り返してるんですけど、オーストリアで暮らしてみると、それが分かる。電車に乗っていても、5、6時間は同じ景色がずーっと続くから(笑)。その〈同じことの繰り返しの心地よさ〉みたいなものが、シューベルトにもある。ブルックナーの交響曲もそうですよね」

―ブルックナーもリンツ生まれのオーストリア人ですもんね。

「シューベルトの〈素朴さ〉も、たとえば大きな山脈のなかにも、小川が流れていて、小さな花も咲いていたりする‥‥そんなところが、あぁシューベルトだなぁ、と思うんです。あと、とにかく和声進行にサブドミナント[下属和音]が多い。ベートーヴェンがはっきりドミナント[属和音]へいくところ、シューベルトはいちいちサブドミナントに迷う(笑)、そのちょっと解決できない歯がゆい感じが、またシューベルトらしいんです。《美しき水車小屋の娘》にしても、歌詞ではずっと片想いでうじうじしてるのに、それを音楽で聴くと深いところが見えてくる。表現するのが難しいことを、音楽で表している」

Vol.3は《愛・変容》――うつろいゆく魂、さまざまな貌
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109
矢代秋雄:ピアノ・ソナタ
シューマン:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 op.19

―そして、Vol.3は《愛・変容》というテーマで、ベートーヴェン、矢代秋雄、シューマン‥‥という、いっけん意外ですが、ちゃんと繋がりのある選曲です。

「このVol.3《愛・変容》は、変奏曲をテーマにしたかったんです」

―最初、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109も、後半の第3楽章は壮大な変奏曲になっている、画期的な傑作ですね。

「そして、次に弾く矢代秋雄さんも、このベートーヴェンの op.109をこよなく愛しておられたということで、その繋がりも」

―ベートーヴェンへの敬愛は、矢代秋雄さんもこのピアノ・ソナタ[1961年]の楽譜冒頭でも、ご自身が記されていましたね。

「だいぶ以前から、矢代さんの奥様がいろいろな資料を下さっていて‥‥ピアノ協奏曲[1967年]は何度も弾かせていただいているのですが、ソナタは今回が初めてになります。矢代さんの作品には、隙がないですよね。難しいんですが、ずっと弾きたかったんです」

―この矢代作品も、終楽章が素晴らしい‥‥というより凄い変奏曲になっていて、圧巻ですから、小菅さんの生演奏で聴けるのも心から楽しみです。そして、最後はシューマンのピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 op.19[1835年]。

シューマン、憧れのつのる音世界へ

「このシューマンのソナタは、クララへの想いがこもった素晴らしい作品ですが演奏する側にとってとても難しい作品でもあります。こちらは第3楽章が変奏曲(クララのテーマのアンダンティーノ)となっています」

―最初のベートーヴェンとも、同じソナタでも全然違うのが面白いですよね。

「シューマンの場合、憧れのように何度も何度も繰り返し‥‥というところに狂気の兆候もあるのかも知れませんが、やはり優しいんですよね。私はルプーの演奏が大好きだったので、昨年亡くなられて本当に悲しかったです」

―素晴らしいピアニストでしたね。

「彼のコンサートを最後に聴いたのは、ウィーンでのリサイタルでした。演目にシューマンの〈幻想曲〉が入っていて、それが本当に‥‥。自分が音楽家だとかなにも考えず、人間として聴ける音楽で、それって凄いことだと。ハーモニー感とかいろいろな面で凄いんですが、最終的には愛とかぬくもりとかになって、全てがこちらに降ってくる。ひとつひとつの音が語りかけてきて、意味の無い音がない」

―ルプーさんの演奏に感じられた素晴らしさが、小菅さんのシューマン演奏にも深く反映されてゆくのかも知れませんね。

「シューマンの作品って夢見心地で、ブラームスなどと比べると、ちょっと[地面から]浮いてる感じがするんですよね」

―うまいなぁ(笑)。ドイツ・ロマン派の「夢の中に現実があるのか、現実の中に夢があるのか‥‥」といったあたりを、シューマンの音楽にも深く感じられますね。シリーズの Vol.1でブラームスのソナタを聴いてから、Vol.3 でシューマンを聴く‥‥という流れと繋がりも、私たち聴き手も意識してみたいと思います。

小菅 優(ピアニスト)
Yu Kosuge, Pianist
2005年カーネギーホールで、翌06年にはザルツブルク音楽祭でそれぞれリサイタル・デビュー。 ドミトリエフ、デュトワ、小澤等の指揮でベルリン響等と共演。10年ザルツブルク音楽祭でポゴレリッチの代役として出演。その後も世界的な活躍を続ける。ベートーヴェンのピアノ付き作品を徐々に取り上げる「ベートーヴェン詣」やピアノ・ソナタに焦点を当てた「ソナタ・シリーズ」等に取り組む。14年に第64回芸術選奨音楽部門 文部科学大臣新人賞、17年に第48回サントリー音楽賞受賞。



神秘の彼方、色彩の鮮烈——スクリャービンへの挑戦
Vol.4《神秘・魅惑》
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第9番 op.68《黒ミサ》
藤倉大:ピアノ・ソナタ(委嘱初演)
ベルク:ピアノ・ソナタ op.1
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

―そして、Vol.4《神秘・魅惑》は、また凄いプログラムですね。スクリャービン、藤倉大、ベルク、リスト‥‥。

「いちばん危ない回なんですけど(笑)、いきなりスクリャービンから始まるコンサート、というのも面白いんじゃないかな、と思って」

―いきなりピアノ・ソナタ第9番 op.68《黒ミサ》[1913年]と、破天荒な難曲からというのは、たいへんいいですね。

「スクリャービンを弾く前に、いろいろ本も読んで勉強したんですけれども、彼が晩年、どうしてあんな神秘思想にいってしまったのか、理解できないんですよね」

―ニーチェの超人思想にはじまって、神智学に傾倒して、独特の〈神秘和音〉を追究して‥‥感覚世界の奥深くへと踏み込んでいきましたからね。

「スクリャービンは結局どういうものを求めていたのか、分からない。でも、その音楽を聴くと‥‥たとえば私はソフロニツキーの演奏が大好きなんですが、彼の弾く〈エチュード(練習曲)〉など聴くと、もうグサグサくるじゃないですか。今回演奏する《黒ミサ》も、ソフロニツキーは凄い」

―ロシアのピアニストたちの強烈な演奏も踏まえつつ、小菅さんの新しいアプローチにも期待しております。

「スクリャービンの色彩感‥‥メシアンの作品のような色彩感ともまた全然ちがう色、光みたいなものが、この《黒ミサ》にもぎらぎらと感じられます。調性と色とのコネクションなど、いろいろ考えてみたいと思います」

藤倉大の新作、ベルクの濃密、リストの交響的な世界へ‥‥

―そして、新作を聴くたびに鮮やかな驚きを感じさせてくれる作曲家、藤倉大さんの新作、ピアノ・ソナタ(委嘱初演)が聴けるのも、とても楽しみです。

「せっかく新しいシリーズを始めるのだから、いろいろご一緒してきた大さんに、新しいソナタを書いていただけないか‥‥と思っていたところ、大さんと共通の友人で、既に彼の「三味線協奏曲」を委嘱されている長谷川綾子さんが、前から私が初演するピアノ曲を大さんに委嘱したい、という思いがあった、とおっしゃって、このシリーズのためにピアノ・ソナタを委嘱される、という展開に。ありがたい、嬉しいことです。。、大さんはピアノのための作品はこれまでも数多く書かれていますが、20分ほどかかるソナタはまだ書かれてません。訊いてみたとき「え?ソナタ!?」っと戸惑ってましたが(笑)引き受けて下さいました。とても楽しみですが、凄く難しい曲が出来るんじゃないか、恐ろしくもあります」

―そこも期待しております(笑)。


小菅「ベルクのピアノ・ソナタ op.1[1907~08年頃]は、グレン・グールドの録音を聴いてから、ずっと憧れで‥‥。新ウィーン楽派の3人[シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク]の中でも、いちばん感情的な音楽だと思います。ベルクのオペラ、《ヴォツェック》や《ルル》も大好きです」

―ベルクのソナタは、単一楽章で10分ほどの音楽のなかに、伝統的な形式感こそあるものの、動機の展開ですとか、響きの流動性ですとか、ほんとうに濃密な渦を体験できるような素晴らしい作品ですから、実演で聴けることをとても楽しみにしております。

「ハーモニーの色彩感など本当に素晴らしい作品ですよね‥‥」

―後半は、リストのピアノ・ソナタ ロ短調 S.178[1852~53年]で、これも単一楽章の傑作です。

「Vol.4《神秘・魅惑》の曲を考えるとき、最初は単一楽章の作品を集めてみたら‥‥という発想で考え始めたのですが、この回のテーマとして、人間の危ないところ‥‥悪魔的な誘惑、のようなものと関連する作品を選んでいます。このリストのソナタも、素晴らしい作品だと思います」

―小菅さんは、ごく若い頃からリスト作品の録音にも取り組まれてきましたね。

「このピアノ・ソナタも、20代の頃に何度か弾いているんですが、ゲーテ『ファウスト』との関連が言われることもあるように、単一楽章のこのソナタがひとつの交響詩のように思えます」



黄昏の音風景——作曲家が最期にたどりつくところ
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番 ニ長調 K.576
ハイドン:ピアノ・ソナタ第61番 ニ長調 Hob.XVI:51
ウェーバー:ピアノ・ソナタ第4番 ホ短調 op.70/J.287
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960

―全体でひとつの人生をたどるソナタのように組まれたこのシリーズ、最終回の Vol.5は、《黄昏》です。

「これはもちろん、全て作曲家の晩年に書かれた作品を集めています。なかでも、ウェーバーのピアノ・ソナタ第4番 ホ短調 op.70/J.287[1822年]は、昔から憧れの作品でした。レオン・フライシャーが若い頃に弾いた録音で聴いて、それがあまりにも素晴らしい演奏だったから、毎朝それを聴いていた時代があった。自分では取りあげないまま来たんですが、あらためて」

―ウェーバーは、ロマン派音楽にも強い影響を与えて優れた作品も多いのに、ピアノ曲では《舞踏への勧誘》など小品ばかり有名なのがもったいないですよね。

「ショーピースばかりでなく、晩年の作品には凄く深いものがあるので、こんな良い曲があるのか‥‥と思っていただけるかと」

―ハイドンのピアノ・ソナタ第61番 ニ長調 Hob.XVI:51[1794年]は、大作曲家が晩年、ロンドン滞在期に書いた、ちょっと短めの作品ですね。

「ハイドンのソナタは、子供の頃によく弾いていたんですが、これと同じニ長調の‥‥といってもハイドンには同じ調性のソナタがたくさんあるので。多くの作品を書いたハイドンには、最初の頃にはぎこちないものもありますが、交響曲にしても弦楽四重奏曲にしても、このソナタ第61番も、成長しきった晩年のハイドンは本当に素晴らしいです」

―後に続く作曲家たちの、素敵な先駈けとなっているところも、お楽しみいただけるのではないかと思います。曲順は時代を前後していますけれど、振り返ったりしながら音楽が照らし合う、というのは、コンサートとしてもいい体験になるかと思います。


シリーズのしめくくりは、音楽家にとって大切な挑戦を

―そして最後‥‥シリーズの最後でもありますが、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960です。

小菅「私はシューベルトのピアノ・ソナタを、これまでにも何曲か弾いて来ているのですが、今回シリーズでも、シューベルトにフォーカスしたかったんです。‥‥とは言っても、シューベルトのソナタだけにはしたくない。ただ、彼のこの変ロ長調のソナタは、ピアニストにとって、音楽家にとって重要なチャレンジとなる作品ですから、これを《ソナタ・シリーズ》の最後に置きたい、と思いました」

―Vol.2《夢・幻想》では、シューベルトのソナタ第18番《幻想》を弾かれますが、最後に弾かれるこの第21番も、ほんとうに語り尽くせない傑作です。この作品に至るまでの、全5回のリサイタルを一緒に旅させていただくのは、心から楽しみです。それにしてもこのシリーズ、曲を選ぶのも大変ながら愉かったでしょうね(笑)。

「はい(笑)」

―有名で良く弾かれる作品もありつつ、傑作なのになかなか演奏されない‥‥という作品も組み合わされています。人気作と、知られざる傑作とが、テーマの中で互いに照らし合うことで、それぞれの魅力に深い光があたる、というのが、今回も素敵なプロジェクトだと思いますね。

「《Four Elements》シリーズでもそうだったのですが、プログラミングの相性の問題などもあって、なかなか他の作品との組み合わせが考えられない作品でも、こういったシリーズで、テーマの流れや調性の組み合わせのなかで、意外に合ったりするのが面白いんですよね。今回は、大きなチャレンジばかり作ってしまった気もしますが・・・」

―いえ、それでこそ小菅さんだと、聴き手としても力が入ります。シリーズの完遂、心から楽しみにしております!