AKIE
AMOU
INTERVIEW
天羽明惠インタビュー
Soprano
Akie Amou
新鮮な気持ちで向き合いながら、
進化し続ける、音楽への想い
ソプラノ 天羽明惠 インタビュー
TEXT BY HARUO YAMADA
PHOTOGRAPHS BY SHINJI MINEGISHI
この夏、ワルシャワで開催された第15回「ショパンと彼のヨーロッパ」国際音楽祭に参加し、8月17日、広島交響楽団とシンフォニア・ヴァルソヴィアによる合同演奏会(秋山和慶指揮)で、ベートーヴェンの「第九」の独唱を務めた天羽明惠に、公演の翌日、ワルシャワのフィルハーモニーのラウンジで話をきいた。コロラトゥーラのイメージの強い天羽だが、「第九」でも見事な歌唱をポーランドの聴衆に披露した。
「『第九』は、ベートーヴェンの求める音楽と楽器としての私に相違があると思って歌ってこなかったのですが、10年くらい前から歌い始めました。何度歌っても太刀打ちできない偉大な曲だなと思います。ポーランドは初めてでしたが、ワルシャワのフィルハーモニーは響き過ぎないすごくいいホールでした。コーラス(ポドラシェ歌劇場フィルハーモニー合唱団)も、初めて練習で聴いたとき、飛び上がるほど素晴らしかったです。ポーランドの人は、オーケストラの人も、お店の人もみんな優しいですね」
PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI PHOTOGRAPH BY SHINJI MINEGISHI

Akie Amou,Soprano
コロラトゥーラとリリックの声質を併せ持ち、内外で高い評価を得ている。1995年ソニア・ノルウェー女王記念国際音楽コンクール優勝。ジュネーヴ大劇場、ザクセン州立歌劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパーなどヨーロッパ各地の歌劇場や音楽祭に出演。国内でも新国立劇場、サントリーホールなどへ定期的に登場し、主要なオーケストラの定期公演にもソリストとして出演している。
そんな天羽が、この秋、イ・ムジチ合奏団と初共演する。
「あの《四季》のイ・ムジチとの共演ときいて、何がいいか考え、ヘンデルとモーツァルトにしました。私自身はバロックのスペシャリストではなく、オールマイティに活動していますが、バロック音楽は、戸田敏子、エルンスト・ヘフリガーらの先生にスタイルに関して厳しく教わりました。
《セルセ》から「オンブラ・マイ・フ」は、本来カウンター・テナーの曲ですが、CMでのキャスリーン・バトルの歌唱で有名になりました。こういうレガートな曲と、もう一つは、《ジュリオ・チェーザレ》から「この胸に息のある限り」のようなコロラトゥーラを発揮できる曲を選びました。
モーツァルトの《エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)》は、私の何度も歌っているレパートリーです。イ・ムジチがどれだけ《四季》を演奏しても、毎回音楽が新鮮なように、私も新鮮な気持ちで歌いたいです。モーツァルトが私のために書いてくれたと思えるくらい作り込んで共演に臨みます。
イ・ムジチが素晴らしいアンサンブルを聴かせてくださるので、私は彼らにいかに歌わせていただくかだけですね。特にイタリア語は彼らの言葉ですから、彼らに伝わるように歌い、お客様にも届けたいです。素晴らしい方々と演奏すると、歌いやすくなるんですよ。とにかく彼らはすごいので、期待しています」

また、天羽は、「オペラぺらぺらコンサート」というオペラ・ファンの裾野を広げる活動にも取り組んでいる。
「声の高さでどういう役の分担がされるかとか、お芝居ではセリフを同時に重ねるとセリフが聞き取りにくいがオペラならできるとか、登場人物の立ち位置で人間関係がわかるとか、オペラのルールを具体的に知っていただくと、初心者もオペラ通の方々にも、オペラが楽しくなるという企画をしています。実演を交えて説明をして、オペラを観ていただきます」

サントリーホールのオペラ・アカデミーでは、後進の指導にもあたっている。
「私は、1993年にオペラ・アカデミーが始まったときの一期生で、それ以来、ずっと関わっています。切磋琢磨してきた仲間と勉強してきたその恩返しもありますし、若い人にはそういう仲間を作ってほしいからです。私は、教えているというよりも、一緒に勉強している意識です。音楽を作る中でお互いに刺激しあって、一緒に上手になろうよ、と。私たちファカルティだってまだまだ成長期なので、若い人たちから刺激を受けて勉強していくこともたくさんあります。でも、教えていると、言っていることが全部自分でできるかのように勘違いしてしまいがちです。そういう先生病にはなりたくないので「私を先生とは呼ばないで』と言っています。彼らとは、あなたの音楽を作るお手伝いをしますという姿勢で接しています。受け身では音楽はできるわけありません。積極的に考えて、感じて自分の音楽を作ってもらいたい」

初めての国で歌い、初めてのアーティストたちと共演するなど、ますます活躍の場を広げている天羽明惠。進化を続ける彼女の歌声に注目したい。