Kajimoto

SUMMER END
PARTY 2019
“future cider”
アフターレポート

SUMMER END PARTY 2019
「future cider」開催!
アフターレポート

TEXT BY ARISA IIDA

残暑の厳しい2019年8月28日、原宿・CASE BにてKAJIMOTO主催のSUMMER END PARTY2019「future cider」が開催された。「ボーっとしてないでシュワっと未来を考えヨ!」というキャッチーかつ刺激的なコピーのついたこの催し。会場には270人ほどの人々が集まった。


吹き抜け状の階段でつながれた1階・2階のオープンな空間で、豪華なアーティスト陣によるライブ・セッションあり、音楽関係者らによるトーク・セッションありの豊富な内容とあって、スタートの17時から会場は多くの人で賑わった。

パーティーはKAJIMOTO代表取締役社長の梶本眞秀氏による挨拶で開始。夏の終わりのこの集いは、「アーティスト、お客さん、オーガナイザー、メディアの人たちが一堂に会し、音楽と社会や未来とのあり方についていろいろと語り合い、何互いに何かを感じ取れる機会としたい」と語った。

色とりどりの豪華な有機野菜やヴィーガンフード、美味しいお米のおむすびといったアットホームな軽食、チョコレートやマカロンなどのスウィーツ、もちろんお酒も並ぶなど、参加者へのおもてなしが感じられるテーブルも用意されていた。

充実した5つのトークセッション

SESSION 1

最初のトークセッションは「音楽×学校の未来」と題し、次世代を担う若い世代に向けた音楽教育の分野で、今どのような取り組みが行われているかが語られた。進行役はKAJIMOTOの梶本眞秀。


東京芸術大学教授の佐野靖は、「クラシックは発信力が足りていない」ことを指摘し、アウトリーチや教員サポートなど、大学が社会と演奏家とを繋ぐ取り組みに乗り出していることを紹介。教育イノヴェーションを研究する東京学芸大こども未来研究所の小田直弥は、鍵盤ハーモニカの可能性に着目し、従来の学校教育における「楽器」へのアプローチに縛られない方法を模索していると語った。新たな教育プログラムを実践するT-KIDS株式会社の尾花佳代は、「落ちこぼれ」ではなく「吹きこぼれ」と呼ぶべき、のびのびとした感性をもつ子どもたちへの教育プログラムを実践中とのこと。教育もライフスタイルの一環であるという見方から、これからは芸術分野も伸ばしていきたいという意欲を語った。

SESSION 2

トークセッション2は「音楽×CX(顧客体験)の未来」がテーマ。CXとはCustomer Experience の略だ。音楽の受け手である聴衆の体験に、どんなものを提供することが価値となるのか。登壇者は青木聡(Zeppライブ)、五十貝一(ユニバーサルミュージック)、金子雄樹(The Orchard Japan)、進行役は指揮者の中田延亮が務めた。

青木は「わかりやすさ」をキーワードに、横浜で開催する野外フェス「Stand Up Classic Festival」の取り組みを紹介。演奏者目線ではなく、聴衆目線で楽章単位でのプログラムを組むなど、「楽しくわかりやすく」のあり方を考えているという。五十貝は「クラシックのマーケット」について。ナイトクラブなどで演奏を聴かせるドイツ・グラモフォンの「yellow lounge」の開催など、新しい聴衆に向けた発信、付加価値のみならず聴く動機付けを作っていこうというヴィジョンを語った。金子のキーワードは「商品情報」。ネット配信が進む昨今、演奏者・作曲者・作品・録音年代など、商品情報をユーザーにしっかり届けることで、「敷居を下げる」ことばかりでなく、クラシックの悦楽としてのマニアックな楽しみ方も届けたい、と話した。

SESSION 3


トークセッション3は「音楽×プラットフォーム」。公共ホールが、音楽を発信するプラットフォームとして活性化するためには、どんな工夫がなされ何が求められているのだろうか。民間企業の施設とは異なり、利益を生み出すことだけが最優先課題ではない公共施設。いわゆる「劇場法」が2012年に施行されたことで、地域への貢献、次世代への伝統継承や最新技術育成など、公共ホールはさまざまな役割を担うこととなった。

渡辺章(元朝日新聞、KAJIMOTO)による進行のもと、阿部一直(山口情報芸術センター)、富永志穂子(兵庫県立芸術文化センター)、中村よしき(東京芸術劇場)が、地元の人々との連携の仕方や、経済面でのバランス(民間からの協賛、チケットの売り上げ、そして助成金・税金のパーセンテージ)、立地を活かした独自コンテンツへの取り組みなどを語った。会員制度の充実化、SNSでの広報の重要性、観光やインバウンドも副次的な税収アップなど、多様な視点の交換がなされた。

SESSION 4

アーティストも豪華な顔ぶれが揃ったこの日の夜。トークセッション4は「音楽×アーティストの未来」と題し、参加アーティストによる和気あいあいとしたトークが展開された。鈴木大介(ギター)が進行役となり、天羽明恵(ソプラノ)、大萩康司(ギター)、工藤重典(フルート)、小林愛実(ピアノ)、辻彩奈(ヴァイオリン)、小林愛実(ピアノ)、中川英二郎(トロンボーン)がそれぞれの声が発する。


音楽祭やマスタークラスでの経験や学んだこと、留学先での食生活といった日常、練習やアンサンブルで重視していることなどのほか、昨今のアジア勢の活躍と、日本のアーティストたちの世界発信についてなど、終始楽しいムードの中で語られた。

SESSION 5

トークセッションのおしまいは「音楽×オーケストラの未来」。指揮者の角田鋼亮が進行役となり、4つのプロ・オーケストラの事務局代表者と語った。登壇者は東京フィルの岩崎井織、名古屋フィルの小出篤、大阪フィルの福山修、日本フィルの益満行裕。

プロオケが得ている、いわゆる公的資金から文化予算として拠出される補助金や、チケット収入の割合などが赤裸々に語られ、オーディエンスにとってもオーケストラの存在意義などを改めて考える機会に。指揮者・オーケストラ・聴衆の声を反映するプログラム作りや、SNSやライブ配信といったネットメディアを活用する集客戦略、若い人たちに向けてオーケストラの魅力を伝える工夫、各オーケストラの地域性を生かした取り組みなども紹介された。

Summer End Party “future cider” After Party

KAJIMOTOアーティストによるカラフルなライブ・セッション

パーティーのムードを盛り上げるのは、なんといっても素敵な音楽! この日はKAJIMOTOに所属するアーティストの豪華な顔ぶれを揃い、華やかな演奏を披露してくれた。アーティスト同士が初めての組むアンサンブルを披露するなど、新しい響きにも満ちていた。出演陣と、その曲目のごく一部をご紹介しよう。

【1F 出演アーティスト】


戸田弥生(Vn)と小林愛実(Pf)は、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」を披露。会場の空気を一気にヒートアップ。外村理紗(Vn)と萩原麻未(Pf)はラヴェルの「ツィガーヌ」を熱演。中村英二郎(Tb)、青木研(Bnj)、青柳誠(Pf)はノリのいいアレンジで「聖者の行進」を演奏。神尾真由子(Vn)と萩原麻未(Pf)はサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」を強烈な集中力で響かせた。

【2F 出演アーティスト】

大萩康司(Gt)はブローウェルの「鐘のなるキューバの風景」を柔らかに響かせ、荘村清志(Gt)と工藤重典(Fl)はピアソラの「ボルデル1900」を爽やかに奏でた。鈴木大介(Gt)、田口悌治(Gt)、天羽明恵(Sp)という組み合わせで、ガーシュウィンの「サマータイム」も披露された。工藤重典(Fl)、辻彩奈(Vn)、田原綾子(Sp)、横坂源(Vc)はモーツァルトのフルート四重奏曲第1番で共演。

どのアーティストも、飲み物を片手に集う人々の至近距離で、コンサートに引けを取らない集中力で素晴らしいパフォーマンスを繰り広げてくれた。やはり音楽の力は、すごい。会場はカラフルな熱気に包まれた。

5時間半にわたって行われたSUMMER END PARTY。各セッション以外にも、アーティスト、音楽ホールの人、出版社の人、ジャーナリスト、研究者らが出会い、交流を深め、互いに視野を広げられる場となり、談笑する人々で多いに賑わった。夏の終わりに音楽の未来を考えるという、ありそうでなかったこのようなイベントの、これからの展開にも期待したい。