2011.11. 5(Sat)


●リスト室内管・来日目前企画!リスト伝説~「リサイタル」を発明した男編~


フランツ・リスト室内管弦楽団、来日(公演:11/16東京ほか)目前!ということで、皆様にはこれまで彼らの演奏動画や、パガニーニのヴァイオリン協奏曲「ラ・カンパネラ」で彼らと共演する佐藤俊介のインタビューをご紹介してまいりましたが、
本連載のお題はずばり、フランツ・リストご本人。
生誕200年ということで盛大に祝われてきたリスト・イヤーもあと2ヶ月弱で終わると思うと心淋しいものがありますが、
この残された時間を有意義に(?)活用すべく、本連載ではリストの功績を楽しく振り返ってみたいと思います。

と、その前に。
何度も申し上げておりますが、もうすぐ来日するリスト室内管は、ハンガリーの首都ブダペストのフランツ・リスト音楽院の卒業生により1963年に創設された合奏団です。
ハンガリーは、リストが最も愛した国。そしてリスト音楽院は、リスト自身により設立され、その後にはバルトーク等の巨匠を輩出してきた東欧を代表する名門です。
(このことについてはまた別の回で詳しくお話したいと思います)
今回の来日公演でも、彼らにしか組めない個性的なプログラムを用意し、リストの魅力や功績に様々な角度から迫るリスト室内管。
演奏も、天下一品。ご期待くださいね。

さて、本日は「リスト伝説」初回ということで、"「リサイタル」を発明した男"について。
ご存知の方も多いかと思いますが、復習がてらお付き合いくださいませ。

単刀直入に切り出しますと・・・「リサイタル」とは厳密には一人の演奏家のみが出演する「独奏会」ということになります。(伴奏者が付く場合も広義には「リサイタル」と呼ばれますね)。そして西洋音楽史上、初めて「リサイタル」を行った演奏家こそ、我らがリストでした。
そもそもリスト以前の時代&リストの生前には、一コンサートに一人の演奏家のみが出演する、という慣習はありませんでした(少なくともそういった資料は残っていないようです)。

例えば、リストの友人でライバルであったショパンは、1848年に、病身でパリのプレイエル・ホールの舞台に登場していますが(これが彼の公の場でのラスト・コンサートになりました)、この時にはショパンのソロも少々あったものの、モーツァルトのピアノ三重奏曲やドニゼッティのオペラの抜粋、ベッリーニの歌曲、マイヤベーアのアリア、ショパンのチェロ・ソナタ(抜粋)が演奏されており、こうした様々な編成の曲をミックスしたプログラムがむしろ当時は一般的でした。
もちろん出演者も、ショパンのほかヴァイオリンのアラール、ショパンの大親友でチェリストのフランコム、女性歌手と複数で、彼らが交互に舞台に出て演奏をしています。

さて、そんな当時の音楽界に新風を巻き起こしたのが、ヴィオルトゥオーゾ・リストです。
彼が音楽史上はじめて「独奏」コンサート(プライヴェートな演奏会ではありましたが)を行ったのが、1839年3月@ローマ。
リスト自身が3ヵ月後の手紙の中で、こう書いています。

"音楽的ひとりごと" [リストはフランス語で「soliloques musicaux」と記しています] ・・・何と呼んだらよいのかわからないのですが・・・思い切って、完全にひとりきりで演奏会を開きました。[「朕は国家なり」と述べた] ルイ14世のまねをして、聴衆にむかってまるで騎士のように「コンサート、それが朕なり」と述べておきましたよ。

この後、1840年6月にロンドンで公の「独奏」会を開いたリストは、初めてこの宣伝文の中で「リサイタル」というネーミングを用います。
「リサイタルrecital」のreciteとは、暗誦する、朗読する、という意味。もちろんこれが一人の人間によりなされる行為であるというイメージが背後にあります。
このロンドンの初「リサイタル」のプログラムは、ベートーヴェンの「田園」(抜粋)、シューベルトの「セレナード」「アヴェ・マリア」、リスト自作の「ヘクサメロン」と「ナポリのタランテッラ」、「半音階的大ギャロップ」でした。もちろん共演者は無し。
ちなみに1843年ミュンヘンで行った「リサイタル」でリストが演奏しているのは、ベートーヴェンのソナタ「悲愴」、ロッシーニの「タランテッラ」、ショパンのマズルカ、バッハのフーガなどなど。46年のウィーンでの「リサイタル」では、シューベルトの「さすらい人幻想曲」なども披露しています。

彼がバッハから同時代の作曲家、自作と、幅ひろいレパートリーを誇っていた事が垣間みえますし、こういった流れの中でワーグナーやベートーヴェンをはじめとする作曲家の管弦楽曲や歌劇、また当時の流行アリア等をピアノ版に編曲して演奏していた意味も見えてきますね。北はモスクワから南はリスボンあたりまで、文字通り東奔西走してピアノ音楽を届けていたのですから。

ちなみに彼はほとんどの場合、暗譜で演奏していたそうですし、ピアノの右側部分を客席に向けて配置するようにしていたことも当時としては画期的だったようです。

これも現在のピアノ・リサイタルに通じますね。

ライバルのショパンは、「聴衆の前にでると緊張して息切れしてしまう」「僕には限られた友人が演奏をきいてくれる私的なサロンが合っている」と口にしていたそうですが、
一方リストは、ヴィオルトゥオーゾとして演奏形体を自ら発明して確立したというわけです。絶頂期には3日に1回の割合で演奏会を行っていたといわれています。

と、綴ればキリがありませんが・・・
ピアノといえば、
今回リスト室内管がソプラノの幸田浩子さんを迎えて演奏するのが、
リストのピアノ曲「ペトラルカのソネット104番」(曲集「巡礼の年」第2年「イタリア」より)の歌曲版「平和は見出せず」、そして同じくリストのピアノ曲「愛の夢 第3番」の歌曲版「おお、愛よ」です。
後者はもともと歌曲として作られ、リスト自身が後にピアノ版に編曲したものですが、現在ではこのピアノ版のほうがポピュラーですね!
さらにリストのピアノ作品「ハンガリー狂詩曲第2番」の室内合奏版(ヴォルフ編)もこの機会にお聴きいただけます。

***

本連載ではリスト室内管の来日とリスト・イヤーの終わりを記念して、少しずつリストの様々な功績をまとめていきたいと思います。
次回をお楽しみに。




フランツ・リスト室内管弦楽団 プロフィール


【フランツ・リスト室内管弦楽団 東京公演】
11月16日(水) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
公演の詳細とチケットのお申し込み


【フランツ・リスト室内管弦楽団 2011年11月 日本ツアー】
■11月13日(日) 14:00/岐阜 岐阜県県民ふれあい会館 サラマンカホール 【プログラムB】
岐阜県県民ふれあい会館 サラマンカホール 058-277-1110

■11月16日(水) 19:00/東京 東京オペラシティ コンサートホール 【プログラムA】
カジモト・イープラス 0570-06-9960

■11月18日(金) 19:00/群馬 前橋市民文化会館 【プログラムB】
前橋市民文化会館 027-221-4321

■11月21日(月) 18:30/大阪 ザ・シンフォニーホール 【プログラムC】
※公募による招待公演


【プログラムA】
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第6番
リスト:おお、夢に来ませ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:平和は見出せず 〈ペトラルカのソネット第104番〉(ソプラノ: 幸田浩子)
モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ラフマニノフ:ヴォカリーズ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:愛の夢 第3番 (「おお、愛よ」S.298)(ソプラノ: 幸田浩子)
***
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ロ短調 「ラ・カンパネラ」(ヴァイオリン: 佐藤俊介)
ブラームス:ハンガリー舞曲第2、4、6番
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調

【プログラムB】
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第6番
リスト:おお、夢に来ませ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:平和は見出せず 〈ペトラルカのソネット第104番〉(ソプラノ: 幸田浩子)
モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ラフマニノフ:ヴォカリーズ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:愛の夢 第3番 (「おお、愛よ」S.298)(ソプラノ: 幸田浩子)
***
ワーグナー(リスト編):楽劇「トリスタンとイゾルデ」から イゾルデの愛の死(野原みどり 独奏)
リスト:ラ・カンパネラ(野原みどり 独奏)
リスト:マレディクション(野原みどり 独奏)
ブラームス:ハンガリー舞曲第2、4、6番
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調

【プログラムC】
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第6番
リスト:おお、夢に来ませ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:平和は見出せず 〈ペトラルカのソネット第104番〉(ソプラノ: 幸田浩子)
モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ラフマニノフ:ヴォカリーズ(ソプラノ: 幸田浩子)
リスト:愛の夢 第3番 (「おお、愛よ」S.298)(ソプラノ: 幸田浩子)
***
ブラームス:ハンガリー舞曲第2、3、4、10、7、9、14、17、20、6番
リスト(ヴォルフ編):ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調


【フランツ・リスト室内管弦楽団 関連記事】
F.リスト生誕200年記念!フランツ・リスト室内管による「モーストリー・リスト」、発売中 (2011.6.7)
個性あふれる奏者たちの渾身のプログラム!フランツ・リスト生誕200年 ~ベレゾフスキー、アヴデーエワ、フランツ・リスト室内管~ (2011.7.14)
リスト室内管と共演 ~21世紀のパガニーニ=佐藤俊介が語る!前編~ (2011.10.25)
リスト室内管の名演をYouTubeで! (1) (2011.10.26)
リスト室内管の名演をYouTubeで! (2) (2011.10.)
リスト室内管と共演 ~21世紀のパガニーニ=佐藤俊介が語る!後編~ (2011.11.2)
リスト室内管・来日目前企画!リスト伝説2 ~パガニーニに度肝を抜かれた男編~ (2011.11.8)
リスト室内管弦楽団、ツアー開始! (2011.11.13)
リスト室内管が過ごしたリスト・イヤー2011! (2011.11.15)
リスト室内管・来日企画(本日東京公演)!リスト伝説3 ~自称ハンガリー人編~ (2011.11.16)

Saturday November 5, 2011