2011.10.19(Wed)


●小菅優が語るベートーヴェンと「愛」~ソナタ全曲プロジェクト第3回に寄せて~


東京・紀尾井ホール&大阪いずみホールにて「ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏会シリーズ」に挑んでいる若き偉才・小菅優。
全8回にわたるこのチクルスの第1回のテーマは「出発」、第2回のテーマは「ハイリゲンシュタットからの再出発」でした。
小菅が、芸術家ベートーヴェンの歩み、人間ベートーヴェンの生き様と人となり、そして何より彼の深く壮大な音楽世界に魅せられスタートさせたチクルスも、いよいよ2月に第3回を迎えます。
各回とも、作曲年代順にソナタが配置されるのではなく、小菅独自の視点からテーマが設定され、プログラミングされておりますが、

第3回のテーマは、「愛」。

公演は、初期の第9番(ホ長調)と第10番(ト長調)のソナタでスタート。中期の最後を飾る傑作第27番(ホ短調)を経て、中期の大曲・第13番(変ホ長調「幻想曲風」)と第14番(嬰ハ短調「月光」)が演奏されます。

小菅が「愛と人間」というタイトルで"第3回"への想いを語っておりますので、ぜひご一読ください。





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第3回によせて ~愛と人間~

 ソナタ全曲演奏会を始め、あっという間に3回目になってしまいました。今回のテーマは「愛」です。
 ベートーヴェンのソナタに惹かれる最も大きな理由は、音から出る究極の感情と人間性が、どのソナタからも要求されるからです。
 今回の9番と10番、また27番のソナタでは、「対話の形式における2つの原理」のぶつかり合い、特に27番に関しては「頭と心の葛藤」が主体となっていると、ベートーヴェンが言っていたそうです。正反対の要素がぶつかり合っていますが、これは人間の中の二面性、または他人との喧嘩を表しているのでしょうか。私には、純粋な愛情表現の中に、許されない恋の切なさ、自分との葛藤や、人生の道のりに生じた壁にぶつかっているベートーヴェンが見えてきます。人間の誰にでもある「不機嫌さ」、「優しさ」、「戯れ」などの感情が率直に表現されるのはベートーヴェンならではの魅力だと思います。この一見シンプルな3つのソナタの1音1音に心を込めて、かつ自然に演奏するのは私にとって新たな課題です。
 休憩の後は「Sonata quasi una fantasia(幻想曲風に)」とベートーヴェン自身が表記した2つのソナタです。このquasi una fantasiaというのはどういう意味なのでしょうか?ただただソナタ形式から少し離れたという意味ではなく、曲の内容を考えると、ロマン派的な幻想的想像も必要とされると思います。13番の即興性、14番の人の世からかけ離れた神秘、爆発的な感情からは、想像の世界、宇宙的な空間さえ感じられます。また、この2つのソナタは女性のために作曲されていますが、女性的な旋律というよりは、ベートーヴェンが女性に慰めを求めているかのような、甘い感情がところどころに染み出ているようです。
 人生の中でたくさんの葛藤があっても「愛」によって人間は救われるというメッセージが音楽から伝わってくるような気がします。音楽に対する愛、人間に対する愛、自然に対する愛、純粋に気持ちを表すことの大切さをベートーヴェンはいつも教えてくれるのです。
小菅 優


■小菅 優 ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズ <第3回>
大阪公演: 2012年2月3日(金) 19:00開演 いずみホール
東京公演: 2012年2月7日(火) 19:00開演 紀尾井ホール

小菅 優 プロフィール


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Wednesday October 19, 2011