2011.9. 3(Sat)
◆ラドゥ・ルプー、ルツェルンにてアバド&祝祭管と名演!
この演奏が実に素晴らしかった、という多くの嬉しい記事が弊社に届きましたので、本日はその中から、地元スイスはチューリッヒの日刊紙「Neue Zürcher Zeitung(以下、NZZ)」とルクセンブルクの「Tageblatt」紙による公演評をご紹介したいと思います。
なお、ルプーは2012年の秋に来日を予定しております。東京ほか、全国での公演を予定しておりますので、今後の詳細発表にご期待ください!
♪この日のアバドの勇姿をご覧になりたい方は、NZZ紙のサイトで原文の記事をご覧ください♪
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スイス「NZZ」紙 2011年8月12日付
by ペーター・ハグマン Peter Hagmann
耳を傾けるに値するコンサート
クラウディオ・アバド指揮 ルツェルン祝祭管弦楽団によるオープニング・コンサート
結局、エレーヌ・グリモーがキャンセルした。しかし結果的にはそれも悪くはなかった。ラドゥ・ルプーが代役を引き受けたのだ。確かにエキサイティングな布陣とは言えないかもしれない。でも音楽は恋愛関係のようなところがある。うまくいかなくなったら、どうやっても上手くいかないものだ。ルツェルン・フェスティバルの内部からの情報の示唆するところでは、どうやらフランスのピアニストと指揮者クラウディオ・アバドの関係も機能不全を起こしてしまったようだ。一方で、ラドゥ・ルプーとクラウディオ・アバドの間では互いに歩み寄っての意見の一致とプロらしい相互理解が勝っていた。
これはあくまでルツェルン夏の音楽祭におけるオープニング・コンサートを聞いての第一印象である。しかしここでくり広げられた演奏は決してお約束のような、ありきたりのものではなかった。彼らの演奏はまさに驚きであり、喜びであった。
優しい調べ
何10年前とまではいかないが、何年も前にベルリン・フィルハーモニーでヨハネス・ブラームスのピアノ協奏曲第1番二短調を聞いた夕べのことを思い出した。スタインウェイにはその絶頂期にあったマウリツィオ・ポリーニが、そして指揮台には当時首席指揮者であったクラウディオ・アバドが立っていた。決して忘れることのできないエネルギーが炸裂した第1楽章、比類なき弦楽器の力強さ、張り裂けんばかりに音を伸ばすフレンチ・ホルン、和音の連続、中でもピアノによるオクターヴの連続和音が放つ鋼鉄のような輝きは際立っていた。そして2011年ルツェルン夏の音楽祭のオープニング・コンサートはまさにあのコンサートと同じ演目に始まった。しかしその解釈はあの当時とは正反対のものだったのだ。音楽家が歩む人生の長さは同時にそれまでと全く違う世界の発見をももたらす。
第1楽章の提示部は親しみやすい強さで演奏され、ルツェルン祝祭管弦楽団はとても洗練され、豊かで調和のとれた、大きなフォルテッシモが出せることを証明してみせた。しかし第2主題が始まり、さらにピアノ・ソロが入るにいたって、アバドが一体どのような音楽的方向性を目指し、どこに聴衆を導こうとしているのかが明確になった。その核となるべき存在感をしっかりと保ちながらも抑えて演奏される弦の存在は特筆すべきものがあった。そしてオーボエ・ソロによる素晴らしいピアニッシモ。このピアニッシモが指揮者とオーケストラをどこだかわからない夢の世界のような空間へといざなってくれた。このような経験は滅多にできるものではない。ルプーは彼自身の中の最も深い部分に音楽を感じながら演奏をしていたようだ。いずれにせよ、彼は穏やかなルバートやデリケートなアルペッジオを奏で、抑制された、素晴らしいリリシズムあふれる演奏をしたのである。そしてこの夜のハイライトは、非常にゆっくりとしたテンポの静かに流れるようなアダージォであったことは疑う余地もない。そこにあったのは深い悲哀感と憂愁の情だった。(後略)
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ルクセンブルク「Tageblatt」紙 2011年8月17日付
by アレイン・ステッフェン Alain Steffen(ルツェルン特派員)
完璧な様式
芸術的見地の相違からエレーヌ・グリモーがキャンセルをした後、ラドゥ・ルプーが3夜にわたるコンサートでヨハネス・ブラームス作曲ピアノ協奏曲第1番を演奏した。それはまさに彼ならではのユニークな演奏であった。ルプーの演奏はまたもや完璧な様式、卓越したテクニック、豊かで深い解釈を示す最上級のお手本とも言えるものだったのだ。こんなにも人の心を打つアダージォを今までに聞いたことがあるだろうか。ドラマティックな第1楽章もまた完璧であった。彼は派手な、表面的効果は排除し、さらには劇的な展開を自らの世界に取り込んで内省的な探求へと転じさせ、人の心を揺り動かす。
(中略)
ルプーが一人でステージに現れるとそれまで礼儀正しかった拍手は本当の嵐のような拍手に変わった。
(後略)
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