2009.10. 2(Fri)
●"素晴らしい始まり"-ニューヨーク・フィル新シーズン・オープニング批評(NYタイムズ)
早10月になりました。
秋、芸術に浸るシーズンにおいてKAJIMOTOの贈るワールド・オーケストラ・シリーズ2009は来週いよいよニューヨーク・フィルハーモニック(NYP)が登場します。
NYPはこの9月に新音楽監督アラン・ギルバートを迎え、新たなスタートを切りました。
今後が非常に期待できる大きな成功が伝えられています。
日本公演は就任早々、新コンビほやほやの来日となりますが、まずは注目された、9月17日に地元ニューヨークで行われたオープニング・ガラ・コンサートの批評(ニューヨーク・タイムズ紙)をご紹介します。
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新音楽監督のお披露目演奏会は、あらゆるオーケストラにとって期待に満ちたイベントである。しかし、ギルバートを迎えたニューヨーク・フィル(NYP)の場合は、この期待も相当大きかったはずだ。現在42歳でニューヨーク出身、NYPの元ヴァイオリニストと現ヴァイオリニストの両親を持つギルバート氏であるから、これも当然だろう。素晴らしい作品を見事に選びぬいたこの日のプログラムは、今後の活動の決意表明としての重みを感じさせるものだった――もちろん、このお祭り気分の夜に、今後の演奏予定が話題に上ることはなかったが、それは彼らの音楽作りと演奏はあまりに新鮮かつダイナミックであったためであろう。
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演奏会の幕開けは《EXPO》の世界初演であった。切迫した、創意に富む10分程度のこの曲は、NYPのコンポーザー・イン・レジデンスに就任したばかりのマグヌス・リンドベルイの新作である。歴史を振り返ってみると、最後にNYPがシーズン初の演奏会(オープニング・ナイト)で新作を取り上げたのは、遠い昔の1962年である(コープランド作曲《Connotations》の初演)。指揮はレナード・バーンスタインで、フィルハーモニー・ホール(当時)の杮落としの演奏会だった。シーズンの幕開けを飾る「オープニング・ナイト」はガラ・コンサートであることが通例だが、プログラムに新作が加わると、祝祭感もいっそう増すように感じられた。
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作曲者のリンドベルイも自覚しているだろうが、《EXPO》は挑戦的で聴くものを圧倒するような種の現代音楽とは一線を画している。しかしだからといって、大衆迎合の呑気な作品にはとどまらず、強烈で複雑かつ捕らえどころのない作品であり、祝祭感に満ちていた。
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ギルバートは《EXPO》に続いて、メシアンの初期の作品《ミのためのポエム》を取り上げ、ソリストにルネ・フレミングを迎えた。NYPは、随分昔に、「オープニング・ナイト」でフレミングと共演をしているが、ギルバート氏の今回のアイデアは、メシアンのこの長調の30分の作品をフレミングに歌わせるという素晴らしいものだった。この大作を、フレミングは完璧に、そして見事に演奏してみせた。おまけに暗譜であったことには驚かされた。彼女が完全な音楽家であることは、誰の目にも明らかだろう。
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休憩を挟んで、後半はベルリオーズの《幻想交響曲》。リズムは極めて正確で、冷静でキレのよい演奏であった。リンドベルイ作品のラヴェルを暗示させるパッセージと、フランス人メシアンの「愛」に満ちたポエムは、ベルリオーズを鑑賞する十分な準備となった。ギルバートは、この1830年に書かれた過激な交響曲の狂乱ぶりが浮き彫りになるように、見事にプログラムを組立てたのだ。この作品も女性に対する男性の「愛」を表現していることを考えると、さらに納得がいく。(無論、ベルリオーズの場合は執拗な愛の妄想であるが。)
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ベルリオーズの作品を聴くなら、より色彩の表現に焦点を当てた豪華絢爛な演奏、もっとファンタスティックで自由な演奏のほうがよいという人も中にはいるだろう。しかしベルリオーズは、夢想家であった一方で、グルックやベートーヴェンを敬愛する作曲家でもあったことは忘れてはなるまい。ギルバートがこのお馴染みの作品を指揮するに当たり、細部まで注意深く注意を払い、そのテクスチュアをはっきりと提示したことは、非常に新鮮であった。
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新作に果敢に挑み、胸踊るようなメシアンの作品では才能あるスター歌手をゲストに迎え、最後に名曲を壮大に奏でたギルバートのNYP音楽監督就任デビューの演奏会は、聴衆により盛大な拍手で称えられ、大成功のうちに幕を閉じた。ギルバートもオーケストラも、最高のスタートを切ったといえるだろう。
2009年9月17日 アンソニー・トマッシーニ / ニューヨーク・タイムズ紙から抜粋
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