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2012/03/22 | KAJIMOTO音楽日記

●韓国デビュー10周年!イム・ドンヒョクの記念ツアーを振返る (3) ~インタビュー~

5月7日に東京・紀尾井ホールでリサイタルを予定しているイム・ドンヒョクが、デビュー10周年を記念して韓国で行った大ツアーを振り返る本連載。
これまで、彼のソウル・リサイタル評を二種、ご紹介してきましたが、本日は、ツアー直後に行われたインタビューをお読みください!
出典は韓国のMKデイリー・ニュース(毎日経済)
正直に胸の内を明かすドンヒョクの言葉から、人なつこさと孤独が同居する彼の素顔が浮かび上がってきます。


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ピアニスト イム・ドンヒョク ~デビュー10周年ツアーを終えて~

「常にコンプレックスとの戦いです。コンサート前夜は仮眠をとりながら練習するんです。」

聞き手・文:チョン・ジヒョン


韓国デビュー10周年を迎え、全国11公演のツアーを終えたイム・ドンヒョク(28)。彼の身体と言葉の端々からは、疲れがにじみでていた。
「コンサート前日の夜はあまり眠れず、夜通し頭の中で練習を繰り返すんです」と彼は明かす。「4年前は14か所でツアーをしても何も怖くなかったんです。各地の美味しいものを食べ歩く気分で全国を周っていた。でも、最近は考えることが増え、それが深くもなってしまって。ピアノを弾くことの難しさが骨にしみるようになったんです。」

エリーザベト王妃国際コンクール第3位(2003年)、ショパン国際コンクール第3位(2005年)、チャイコフスキー国際コンクール第4位(2007年)と、世界の大コンクールで好成績を残したスターの自信はどこへ?審査の公正性に異議を申し立て、エリーザベト・コンクールでは受賞を辞退までした。しかし、それも偏見であるようだ。「自信を持ったことは一度も無いです。常にコンプレックスとの戦いです。よく誤解されるんですが」と彼は言う。

多くのコンクールは他のコンクールでの受賞者を排除しようとする傾向にあるという。それにもかかわらず「ヒトリガ(※)」のごとく様々なコンクールに挑んだドンヒョク。彼の意図は実力の誇示だったのだろうか。
(※訳注:「飛んで火に入る夏の虫」を指す)

「ただ欲望のままに受けてみたのですが、なんだか心が晴れなくて」。

たしかに彼は、少しも「ずる賢さ」を持ち合わせていなかった。音楽界で確固たる人脈を作るべく励むこともなかったし、名高いコンクールの受賞を辞退した"大胆不敵"な音楽家というイメージを植え付けられ、それがマイナスになることもあっただろう。

「演奏活動にもっと熱心に取り組みたい。僕には自分を見つめなおす時間が必要なんです。まずは自分の演奏と向き合い、作品に色をつけることなく忠実に弾いてみたい。」

今回のデビュー10周年ツアーは、彼の音楽人生におけるひとつの転換期だった。ロシア留学時代を振り返りながら、チャイコフスキーの「四季」やラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番などをプログラミングした。

「これまでに1度も弾いたことが無い作品を集めてみたんです。時間に追われながら練習してみると、なぜ今までこんなに素晴らしい作品を取り上げてこなかったのか、悔やみました。圧迫感に苛まれているはずなのに、すごく幸せだった。そしてふと、今までに自分が、演奏することに対して心の底から幸せを感じることが無かったんだ、と気づいたんです。今回のツアーを教訓に、音楽家としての在り方を振り返ってみたいです。」

2月11日の全州公演からスタートし、3月2日の仁川で終了したツアーの平均集客率は9割。2月18日のソウル・アーツ・センターでは、2470席収容のコンサートホールに2160名の客が集った。彼が紡ぎだす、一層成熟した旋律に対しては、方々から賛辞が寄せられた。ドンヒョクは述べる。「沢山拍手をいただいたのですが、なんだか照れくさい想いでした。ただただ、無事に本番が終わったことに幸せを感じました」。



10年前から変わらない、大勢の熱烈な「追っかけ」たちも会場に足を運んだ。ロウソクとケーキを持ったファンたちが楽屋を訪れ、彼のデビュー10周年を記念してサプライズ・パーティーを開いてくれた。火事を危惧して警備員たちもヒヤヒヤ。20代中心の女性ファンたちは、他の全ての開催地での公演にも訪れてくれたという。

「10代だったファンの方たちが成長して、社会人になったり、中にはオモニ(母親)になった方もいたり。そのせいか、前売券の販売率も20代が一番多いんですよ。今でも僕のことを忘れずに覚えていてくださって本当に嬉しい。ステージの上に椅子を用意して、そばに座って聴いていただきたいぐらいです」。



彼を応援する世界的音楽家たちも多い。2001年には、「ピアノ界の女帝」マルタ・アルゲリッチの強い推薦により、イギリスのメジャーレーベル「EMI」の専属アーティストとなった。ジュリアード音楽院時代の師匠エマニュエル・アックスからもたっぷりと愛情を注がれているようだ。アックスとシカゴ交響楽団とは、来る5月にモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」で共演予定である。「アックス先生は、常にありのままの僕を受け入れて認めてくださるんです」とドンヒョクは言う。

後輩たちにしばしばお酒やご飯をふるまうドンヒョク。韓国に帰国するたびにクレジットカードの限度額が超えてしまうのだという。神経質なイメージとは異なり、情に厚い。ニューヨークのマンハッタンで一人暮らしをしていることも、その理由のひとつだろうか。

「明け方の4時に、下の階の隣人のシャワーの音で目が覚めるんです。どこにいても音楽家は孤独です。家にひとりでいることが好きなのですが、人と会えればそれも嬉しい。犬でも飼っていればバランスの取れた生活が出来るんでしょうけど、借家なので飼えないんです。」

日本では音楽事務所KAJIMOTOに所属する彼は、5月に東京でリサイタルを行う。10月にはカナダで演奏会が予定されている。完璧主義を捨てたいという彼は、最後にこう語った。「僕の演奏で、沢山のお客様に満足していただけたら嬉しいです」。

原文

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■イム・ドンヒョク ピアノ・リサイタル
5月7日(月)19:00 紀尾井ホール
曲目:
ラヴェル: 亡き王女のためのパヴァーヌ
       夜のガスパール
ショパン: マズルカ イ短調 op.17-4
       マズルカ ハ長調 op.56-2
       マズルカ 嬰ハ短調 op.63-3
       ポロネーズ第7番 変イ長調 op.61 「幻想ポロネーズ」
ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.36 (1931年改訂版)

【チケット】
発売中 ●お申し込み
お問い合わせ&チケット取り扱い:カジモト・イープラス 0570-06-9960


イム・ドンヒョク プロフィール

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