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2011/06/09 | KAJIMOTO音楽日記

●小菅優が語るベートーヴェン ~ハイリゲンシュタットからの再出発~(前半)

今月末、小菅優が紀尾井ホール&大阪いずみホールにて「ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏会シリーズ」の第2回目をお贈りします。
ベートーヴェン・チクルスという、若き小菅の壮大な挑戦は、全8回を予定しており、記念すべき第1回目のテーマは「出発」でした。
つづく今回は、「テンペスト」に代表されるベートーヴェン中期の作品群に光が当てられます。




昨年のザルツブルク音楽祭では、イーヴォ・ポゴレリッチの代役としてフィリップ・ヘレヴェッヘ指揮カメラータ・ザルツブルクとショパンのピアノ協奏曲第2番を堂々演奏し、絶賛を博した小菅。同年、室内楽では庄司紗矢香(ヴァイオリン)、佐藤俊介(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、石坂団十郎(チェロ)とともに「新ダヴィッド同盟」を結成し活動を開始するなど、小菅の活躍は多分野で日々広がっています。

「ハイリゲンシュタットからの再出発」と題し、小菅が今回のベートーヴェン・プログラムへの想いを語っていますので、二回に分けご紹介いたします。


***

第2回によせて~ ハイリゲンシュタットからの再出発
小菅 優


 今回のコンサートは前回のテーマ「出発」に続き、ベートーヴェンがハイリゲンシュタットの遺書を書いた後の「再出発」と、最後の5つのソナタの「出発」である、28番のソナタに焦点を置きたいと思います。

 以前、ウィーンのはずれのハイリゲンシュタットにある、ベートーヴェンが遺書を書いた家を訪れました。シンプルな構造のこじんまりとした家で、展示があるものの当時の状態が保たれており、「ベートーヴェンの家」とさりげなく看板が立てられているだけでした。このころ耳の具合がどんどん悪くなっていた彼は孤独感に苛まれていたのでしょう。ここに籠って作曲し、考え、頭を悩ましたベートーヴェンがいたことを想像すると苦しい気持ちになりました。

 しかし、16番のソナタはユーモラスでチャーミングな明るい曲です。自殺を考えるまで自分を追いつめていたベートーヴェンをここまで立ち直らせたのは何だったのでしょうか。孤独で暗くみえたハイリゲンシュタットの家。外へ出ると、洗練はされていませんがとても綺麗な緑、自然が迎えてくれたので、私は散歩することにしました。その家から何歩か歩いたところには小川が流れ、青々とした葉っぱをたくさんつけた木々の上では鳥が楽しそうにさえずっていました。その小川の隣の細い小道をベートーヴェンも散歩したのでしょう。小川や鳥の音は聞こえなくても、それらを見て、空気を吸うことによって、自然の奏でる音楽を想像することはできたのではないでしょうか。前回にも書いたように、幾度崩れ落ちそうになってもベートーヴェンは肯定的な姿勢を保ちます。このハイリゲンシュタットの自然が、生きるということの素晴らしさを教えてくれ、ベートーヴェンは新たな希望をもつことができたのではないか、と私はその時思いました。

(後半につづく)
※この文章はリサイタル・チラシ裏面にも掲載されています




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小菅 優 ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ 全曲演奏会シリーズ <第2回>
大阪公演: 6月28日(火) 19:00開演 いずみホール
東京公演: 6月30日(木) 19:00開演 紀尾井ホール

小菅 優 プロフィール

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