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2019/03/11 | KAJIMOTO音楽日記

●祝!創立100年。来日直前のスイス・ロマンド管をめぐって(2)―― 脱アンセルメから現在


スイス・ロマンド管弦楽団がエルネスト・アンセルメによって1918年に創設され、彼の「楽器」として約50年、黄金時代を築いたことを前回振り返りましたが、さて、それ以降はどうだったのでしょう?


まずはアンセルメ以降、現在に至る音楽監督を一覧にしてみましょう。以下の通りです。(カッコ内は在任期間)

パウル・クレツキ(1967-70)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(1970-80)
ホルスト・シュタイン(1980-85)
アルミン・ジョルダン(1985-97)
ファビオ・ルイージ(1997-2002)
ピンカス・スタインバーグ(2002-05)
マレク・ヤノフスキ(2005-12)
ネーメ・ヤルヴィ(2012-15)
ジョナサン・ノット(2016- )

こうしてみると、確かな力量をもつ名匠たちがバランスよく選ばれていますね。


スイス・ロマンド管は、アンセルメの「楽器」として花開いたのは良かったのですが、こうして1人の巨匠に長く依存していると、その人間が引退したときにどうなるのか?これは社会のどこにでもある問題ですが、同団もそれに直面します。いかに自らの財産を後に継承しつつ、「脱・アンセルメ」を図るかが課題になってきたのです。

まず、ポーランドの名匠クレツキが3年音楽監督を務めた後、目を引くのは、アンセルメとはかなり対照的な特徴をもつサヴァリッシュとシュタインというドイツの巨匠たちがその任にあったことです。オーケストラとして、今後の発展のためにドイツ音楽の正統的伝統を身に着けていきたい、と考えたバランス感覚はよくわかりますし、さらなるグローバルな道へと舵を切ったわけです。ただ、この時代、ではスイス・ロマンド管は創設者との黄金時代を超えられたか?といえば、それは難しかったようです。




スイス・ロマンド管が息を吹き返した、と自他ともにはっきりわかるようになったのが、アンセルメ以来2人めのスイス人音楽監督となったアルミン・ジョルダンの時代。(パリ・オペラ座を経て、来年からウィーン国立歌劇場の音楽監督となる人気指揮者フィリップ・ジョルダンの父親です)

彼とスイス・ロマンド管は、デュカス作品の全曲録音を行ってグランプリを獲得したり、ワーグナーの楽劇「パルシファル」の映画サントラ録音を任されたりしています。さらに録音でいえば、シューベルトの「ミサ曲」やシューマン「楽園とペリ」などの佳曲で高い評価を得るという、渋い魅力を放つようになったのです。


ところでジョルダンとスイス・ロマンド管の1995年来日公演の公演プログラムに、当時の事務局長ロン・ゴラン(アンセルメ時代に同団のヴィオラ首席奏者を務め、後に事務局長として才を発揮)のインタビューに興味深い一言が。

「自分たちのオケに入団する演奏者の基準は、音がクリアであること、フレージングやダイナミクスの表情のつけ方にインテリジェンスを感じさせる音楽家であること。それであれば、どこの国の人間であるかはあまり関係ない」

このことは、スイス・ロマンド管の特質を見た時、アンセルメの時代から今日に至るまで一貫して変わっていないように思われます。


インタビューといえば、アルミン・ジョルダンの方は・・・(いくつか要約しますと)

「スイス人気質というのか、のんびり腰を落ち着けて音楽を作るオケですね。大人の雰囲気があります」
「クルト・ザンデルリンクが客演してくれるときに、ブルックナーの交響曲を振りたい、と言ってきたんですね。私は音楽的に合わないんじゃない?と答えましたが、彼はそこに興味があると。スイス・ロマンド管は、“音の質”に注意深い。その曲のスタイルから適切な音を選択する。それまでサヴァリッシュやシュタインがドイツのレパートリーを指揮してきたことも活きてきているし」


(蛇足ながら、私はシュタイン指揮スイス・ロマンド管のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」全曲をNHK-FMで聴いたことがありますが、言われなければおよそフランス語圏のオケとは気づかないくらい、ワーグナーの音とスタイルで演奏していました)





ジョルダン以降、4人の名指揮者を経て、現在はジョナサン・ノットが音楽監督となり、スイス・ロマンド管はよりシャープに、曲に適切な研ぎ澄まされた音を用いてレパートリーを広げています。もう一度ノットのインタビューにあった言葉を思い出してみましょう。
「私はこのオーケストラと歴史を歩み始めたばかりですが、21世紀のオーケストラは、確かな技術でもって音色やスタイルを適切に曲目によって使い分ける必要があると思います。ドイツ、オーストリアの音楽、フランスの音楽は、それぞれ異なる音色をもっていますね?モーツァルトの音色がベートーヴェンやシューベルトとは異なるように、このオーケストラは技巧(ヴィルトゥオージティ)で表現を変えることができます」
http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=3071

このオーケストラのよき伝統は、確かに続いています。


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