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2017/10/18 | KAJIMOTO音楽日記

●ガッティ&ロイヤル・コンセルトヘボウ管 来日を前に Vol.1―― 本拠コンセルトヘボウでの演奏会を聴いて


ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が新音楽監督ダニエレ・ガッティとともに来日するまで、あと1カ月! 2017/18シーズン開幕の9月21日に、本拠地アムステルダムのコンセルトヘボウで行った演奏会のレポートが届きましたので、どうぞご一読ください。

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今シーズンのガッティとRCOのコンサートは、プロコフィエフの「5番」

アムステルダムのトラム(路面電車)やバスで、ゴッホ美術館やレンブラントの「夜警」やフェルメールの作品を持つ国立ミュージアムがあるミュージアム広場(Museumplein)を降りてすぐの場所に世界の音楽の殿堂コンセルトヘボウが立っている。道路をはさんで、ゴッホ美術館の新館などの現代的な建築物とのコントラストもこの街の伝統を感じさせる。

そこを本拠とするロイヤル・コンセルトヘボウ管(RCO)の新シーズンは首席指揮者のダニエレ・ガッティでなく、トーマス・ヘンゲルブロックの指揮でディアナ・ダムラウをソリストに迎えたモーツァルトのオペラ・アリア、歌曲、そして、ドヴォルザークの交響曲第8番などのプログラムで開幕した。

そして、9月20,21日にはいよいよ首席指揮者ガッティの登場となった。プログラムは、コンサートマスターのリヴィウ・プルナールの独奏で、彼の母国ルーマニアのジョルジェ・エネスコ作曲「ルーマニア奇想曲」(未完のものを1997年に補作)とプロコフィエフの交響曲第5番。オーケストラの魅力を存分に味わえ、かつガッティがRCOの音をどのような方向にもって行くのかを体験するには絶好の曲だ。21日の公演を聴いたが、ホールの特徴として広く知られるステージ後方の長い階段をガッティがゆっくりと歩を進めてる間に送られた拍手は暖かく包み込むようで、聴衆に受け入れられていることを示していた。

メインのプロコフィエフの交響曲第5番では、冒頭の柔らかい音色の管楽器の合奏が。次第に他の楽器に受け渡されながらゆっくりとスケールを広げながら頂点を築いていく、そして第2楽章も快速なテンポながら音楽はうるさくならずバランスを重視した演奏家、作曲家の卓越したオーケストレーションの見事さを味わわせる。第3楽章ではRCOの持ち味である弦楽器の雄弁な美しさがドラマティックで哀愁に満ちた歌を奏でてゆく。そしてこの曲のハイライトである終楽章では、弦楽器とソリスティックに用いられる管楽器が、互いに緊張感を高めあって壮大なクライマックを形作る。ここでも勢いに任せての破綻は見られず、均整を持ちながら盛り上がりを演出した。演奏が終わるとスタンディングオベーションで聴衆はステージ上の演奏者を讃えた。


RCOのサウンドに重厚さを求めたガッティの指揮

今回の演奏で一番印象に残ったのはガッティが、シャイーとヤンソンスという前任者たちと音楽作りが大きく違う点だ。RCOを輝かしく鳴らすことで魅力的な音楽作りをした2人に比べると、重心が低くなったといえばいいのか、重厚さが増し、ハイティンクの時代と少し似た音の特色を持っていたことだ。

ガッティは、まだ日本では評価が定まっているとは言い難い。昔日のロイヤル・フィルを除くとボローニャ歌劇場音楽監督やミラノ・スカラ座との来日でイタリア・オペラの指揮者というイメージが先行している。しかし、インタビューなどでは常に「自分の中のドイツ・オーストリア音楽への愛」を語り、近年ではバイロイト音楽祭、メトロポリタン歌劇場の《パルジファル》で成功を収め、ウィーン・フィルのニューヨーク・ウィークではブラームスの交響曲全曲、2018年9月末のベルリン・フィルの定期演奏会でもブラームスの交響曲第2番などを指揮したように、最高のステージで彼のドイツ・オーストリア音楽の演奏が認められている。そんな指揮者の手腕を演奏に確実に反映するのがRCOで、それはその成り立ちにある。


極め付けの演奏を通じ楽団の伝統を育んできたRCO

オランダの人々は黙っていても伝統の澱が積もるドイツやオーストリア、フランスなどとは違った環境を早くから自覚した。これは「東インド会社」やそれに先んじて貿易を盛んに行った歴史との共通項があり、能力や交友関係、また歴史的な同時代を見る目などに優れた演奏家を育て、招聘することで、自らの伝統を作ってきた。いまも大きな尊敬を集めるウィレム・メンゲルベルク(1895~1945年まで首席指揮者)は、マーラーや R.シュトラウスといった同時代の大作曲家の価値を見抜いて交流してRCOの歴史に組み込んだ。それを継いだベイヌムは、バッハからブリテンという広範なレパートリーやメンゲルベルク時代に欠けていたブルックナーに取り組んだ、それを継いだヨッフムは完成させ、RCOの得意な作曲家の一人に加えた。

ヨッフムと共に首席指揮者に抜擢されたハイティンクは、膨大な録音を残したが、それを聴くとRCOは広範なレパートリーで高い完成度を示す演奏をしていたことがわかる。

その後もイタリア音楽、マーラー、ブルックナー、そして近現代作品に強いシャイー、ロシア音楽を含む幅広いレパートリーをもちヤンソンスを首席指揮者に迎えたことでさらにレパートリーの幅は広がった。


ガッティがRCOの伝統を踏まえての演奏に期待がかかる

今回の来日でも、ドイツ・オーストリア音楽を得意とするガッティの力量と音の個性が、高い次元で適合していくのではないか。今回の演奏されるマーラーの交響曲第4番は、8月終わりから9月に行われたガッティによる欧州ツアーでも評価を受けた。

違ったタイプの指揮者を迎えても自らの伝統に組み入れた作品の演奏における完成度の高さを常に示すRCOが、日本に初登場となるガッティとのコンビでどのような演奏を聴かせてくれるのか。日本の会場が、彼らが本拠コンセルトヘボウのように反応してくれれば、期待に違わぬ演奏となるはずだ。
 


産経新聞社「モーストリー・クラシック」誌 副編集長 平末 広





■ダニエレ・ガッティ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 公演情報

【チケットのお申し込みはこちら】

11/18(土) 18:00 京都コンサートホール【プログラムB】
11/20(月) 19:00 サントリーホール【プログラムA】
11/21(火) 19:00 サントリーホール【プログラムB】
11/24(金) 19:00 フェスティバルホール(大阪)【プログラムA】
問:カジモト・イープラス 0570-06-9960

[11/20, 11/24]
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61
    (ヴァイオリン: フランク・ペーター・ツィンマーマン)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68

[11/18, 11/21]
ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1
    (チェロ: タチアナ・ヴァシリエヴァ)
マーラー:交響曲第4番 ト長調
    (ソプラノ: ユリア・クライター)
 

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