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2016/04/27 | KAJIMOTO音楽日記

●華麗なるフィラデルフィア管、来日を前にVol.5 ―― おさらいヒストリー(3)「ムーティ/サヴァリッシュ時代」


さて、この連載、現音楽監督ネゼ=セガンの蔵出しインタビューをはさんでしまったもので、「おさらいヒストリー」が1回休みになってしまいましたが、再び社内の会話に戻ります。

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A: ・・・というわけで、42年間の長きにわたりフィラデルフィア管の音楽監督を務め、絶大な成果を上げたオーマンディは、早くから後継にリッカルド・ムーティを指名、定期公演など数多く指揮を任せながら、スムーズに世代交代を果たしたわけだ。実際の就任は1980年。

B男: ムーティはオーマンディとは音楽的にも人間的にも随分違いそうですよね?オーケストラはどう変わっていったんだろう?



A: 実はね、私がフィラデルフィア管を聴いたのは、1989年のムーティとの来日公演だった。いやあ、こんなオーケストラの音がこの世にあるのか!?と心底感動した。

C子: えっ!ここで初めてなんですか? 今まであたかも聴いていたみたいに話していたじゃないですか。

A: いやいや、知ったかぶってたわけじゃないよ(汗)。ゴメンゴメン。
レコードやCDをたくさん聴いてきての体験とか、尊敬する諸先輩方の話や本から得た知識の蓄積で話していました。でも仕方ないでしょ。このムーティ来日公演のときでようやく私も20代そこそこだったんだから。。。

B: で、感動したその音は実際どんな?

A:  今まで話に聞いた、そして録音で聴いた音とおりには違いないんだけど、それが現実のものとして目の前で響くと・・・いやあ、美麗で豊かで柔らかく、「メロウ」というのはこういうことなんだなあ、って。心がとろけるようで、まさにメロメロ。

C:ここでギャグですか・・・

A: いやいや!半分冗談だけど、半分本気。でもここで思ったのは、もともとあった「フィラデルフィア・サウンド」がムーティのもつイタリア的資質―― 歌、カンタービレ、ということだけど―― が加わって、ますます魅力を増したってことなんだろうな、と。
私の聴いたのはブラームスの「第4交響曲」だったけど、冒頭のため息のように下降する主題とか、チェロが旋律を朗々と歌う第2主題とか、音の質とカンタービレ、そしてそれがだらしなく歌われるんじゃなくて、きちんと潔いフレージングをとることで、これほど美麗なものが生まれるなんて、それを聴くまでは考えてもみなかった。イタリアの最高級の芸術家たちがもつ、造型美だね。ピアニストのポリーニにも通じる。

B: へぇ~。それは体験してみたいですね。しかもチャイコフスキーならともかく、ブラームスでそうなるなんて。

C: ムーティ&フィラデルフィア管のCDって今でもたくさん売ってますよね。どんな曲がいいんだろう?

A: 私が聴いたブラームスもいいし、天下に名高いのはレスピーギの「ローマ三部作
。あとベルリオーズの「幻想交響曲」とか、ムソルグスキー(ラヴェル編)の「展覧会の絵」とか。さっきから言っている美麗な“歌”とともにオーケストラの色彩感が抜群なんだよね。高彩な最新テレビ画像みたいに。

B: ムーティはその頃、ミラノ・スカラ座の音楽監督を兼任していましたよね?

A: おー!いいこと言ってくれた。そんなこともあって・・・なのかな?・・・ムーティはフィラデルフィアでもオペラをよく上演した。コンサート形式でね。これがフィラデルフィア管にとって、それまでとは大きく違う新機軸で、このオペラ体験がこの楽団にさらなる自発的表現とか、柔軟性とか、もちろん歌う呼吸を深めていく成果につながっただろうことは想像できるよね。

C: そんなオーケストラが次に音楽監督に選んだのは一転、ドイツのプロフェッサー的なサヴァリッシュ先生、と。

A: あれ、もう先の話にいっちゃう?まあ、いいけど・・・。サヴァリッシュさんは確かに「先生」って言いたくなるよね。
実はね、後々の本人の話では、70年代の終わり、オーマンディの後任探しのときに、メンバーの一部からは「ぜひサヴァリッシュ先生に」という声があって、実際に打診もしていたらしいよ。

C: えっ、そんな頃から? じゃ、なんでその時ならなかったんですか?



A: オーマンディはムーティに決めてたし、このカリスマが後任だということに誰も文句はなかったんじゃないかな? そもそもサヴァリッシュが丁度その頃、バイエルン州立歌劇場の音楽総監督になることが決まっていたから、フィラデルフィアの方は受けるわけにはいかなかった。

B: なるほど・・・。で、今度こそは満を持して、ということで。

A: そう。今度はバイエルンの任期も終わり、サヴァリッシュ自身、オペラからシンフォニー・オーケストラへ軸足を移したかったみたいだし。

B: でも、なんだか今にしてみてもイメージできない感じがしますよね。豊麗で開放的なフィラデルフィア管と、謹厳なプロフェッサー・サヴァリッシュ・・・。

A: あくまでそれはイメージ。これが上手くいったんだよなー。あのフィラデルフィア・サウンドを活かした上で、きっちりと構成されたベートーヴェンを演奏したり、サヴァリッシュ得意のR.シュトラウスの交響詩には欠かせない極上のヴィルトゥオジティがこのオーケストラにはあるし・・・。私が聴いた「英雄の生涯」とか、ワーグナーの若き日の交響曲が入っているCDとか、絶品だよ!

C: 意外・・・。

A: まだ言う!?そうしたら、サヴァリッシュが当時、フィラデルフィア管のことを話した「言葉」を拾ってみようか。

「音楽監督の歴史から見ても、全米ビッグ5の中で最もヨーロッパ的なオーケストラ」
「ヨーロッパのオーケストラに比べると、全員恐ろしく初見が早い。おそらくストコフスキーやオーマンディ時代に培われた、レコーディングの時の意識の集中のトレーニングのおかげ」
「管楽器には、どこをとっても音程の問題がない」

B: 惚れ込んでますねー。

A: うん。そしてちょっと話をそらすけど、この頃のアメリカのオーケストラは先祖帰り?原点回帰?とでもいうのか、ベートーヴェンとブラームス、ブルックナー等の王道ドイツ交響作品をしっかりやりたい、という意識だったのか、こうしたドイツ系の巨匠と組みたかったらしいんだ。サヴァリッシュ&フィラデルフィア管のほかに、ニューヨーク・フィルがクルト・マズアと、クリーヴランド管はドホナーニと、とかね。


(続)


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