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2016/04/20 | KAJIMOTO音楽日記

●華麗なるフィラデルフィア管、来日を前にVol.4 ―― 音楽監督ネゼ・セガン、過去のインタビューより


フィラデルフィア管弦楽団のおさらいヒストリーを、①(ストコフスキー編)、②(オーマンディ編)と歴代音楽監督順に続けて、さあ次はムーティ編!というところに別の話を差し挟むのは如何なものか?と思いながらも、ここで現・音楽監督ネゼ=セガンの話を一度カムバックさせないと、現状を忘れそうなので、敢えて中断を。

以下は、2014年来日時のプログラム冊子から抜粋したものです。
来月、ネゼ=セガンの最新のインタビューを掲載する予定ですが、その前に、2年前はどのようなことを考えていたのか?言っていたのか?を一度知ってから・・・というわけで。

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―― フィラデルフィア管弦楽団といえば「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」がいわば枕詞。新監督としてこの伝統をどのように意識されていますか。

 「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」は、ご存知の通りフィラデルフィア管が誇るかけがえのない遺産であり、他のオーケストラには決して真似することのできない輝かしい個性です。
 実は、私と「フィラデルフィア・サウンド」の出会いははるか昔に遡ります。オーマンディが指揮するフィラデルフィア管がチャイコフスキーの交響曲第6番を演奏する録音を、幼い頃に自宅のステレオで聴き、大きな衝撃を受け、深く感動しました。あの録音は私が演奏家を志すきっかけの一つになったと断言できます。
 初めてフィラデルフィア管を振った時には、「サウンドに強烈な個性をもちながらも、レパートリーに応じてその個性を変化させることのできる、万能で柔軟なオーケストラ。この楽団と組んだらきっとどんな冒険もできるだろう!」と思い興奮しました。ですからフィラデルフィア管の音楽監督に指名された時には、ただただ光栄で、不安など一切なかったですね。
 フィラデルフィア・サウンドを通して、尊敬するストコフスキーやオーマンディ、ムーティ、サヴァリッシュ、エッシェンバッハ、デュトワらが育んだ楽団の伝統を、常に肌で感じることができます。「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」に触れることそれ自体が、私のモチベーションとインスピレーションを日々高め、豊かにしてくれています。


―― オーケストラに欠員が出てオーディションを行う時には、どのような点にこだわって審査しているのでしょうか?

 確固とした技術と並んで、作曲家が書き残した全てを注意深く読み取っているかという点は重要ですね。オーディションでは一日に何百人もの候補の方の演奏を聴くことがあります。そうして幾人もの演奏を聴いた後に最も印象に残るのは、やはり音楽を通じて真に何かを伝えよう、ストーリーを語ろうとしている方ですね。


―― 近・現代の作品を取り入れながら楽団のレパートリーを拡大していくという構想について、どう思われますか。

 レパートリーを更新しつつ広げていくことは重要だと思います。それは私のフィロソフィー(哲学)でもあります。フィラデルフィア管に関して言えば、近・現代曲、そして作曲されてから時間が経っているにもかかわらずまだ楽団が取り組んだことのない作品を、バランスよく取り上げていきたいと思っています。全体のプログラミングに応じて、うまく現代作品を組み入れていくのが理想ですね。もう一つの私の強い信念は、ただ新作を初演するだけで満足してはならないということ。 聴衆が初演の後に何度もその作品を聴くことが出来るよう、繰り返し演奏していかねばなりません。


―― なるほど。ではもし過去にタイムスリップできるとしたら、何世紀を選びますか?

 迷いなく、20世紀初頭のパリです。ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーらが生きた時代を体験してみたいですし、ニジンスキーとバレエ・リュスの舞台もこの目で観てみたいです。クルト・ヴァイルにも会えますしね。革新的な芸術活動が多数行われた時代ですから。





―― お好きな作曲家は?

 ブラームスや、マーラー、ブルックナー、J.S.バッハ、ラヴェルらが大好きです。


―― 日頃、それぞれのリハーサルや公演のためにどのような準備をしていますか?リハーサルと公演とでは準備方法は異なるのでしょうか。

 私にとって、もっとも重要な準備はリハーサルのためのそれです。リハーサルは私のヴィジョンがオーケストラの伝統・表現と結びつく場ですから。リハーサルが終われば、もうプレッシャーは一切感じなくなります。あとは聴衆の前で、リハーサルで仕上がったものに息を吹き込むだけですからね。


―― スコア・リーディングに取り掛かる際のステップを教えていただけますか。

 まずは作品の構造――これには時代的なもの、フレーズなどが含まれます――を見極めます。次のステップでは、各セクションにおいて最も重要な“線”を確認します。その後にその対旋律や和声の構造、そしてオーケストレーションへと目を向けていきます。


―― 多忙な中、どうやって楽譜を勉強する時間を確保しているのですか?

 これは訓練の賜物ですよ。僕は真面目ですから(笑)飛行機の中ではひたすら譜読みをしています。必ず毎日、欠かさずに楽譜に目を通しています。オフの日も、です。指揮者というものは、楽譜と“二人きり”になることを愛せないといけないですね。僕は休暇中でさえも、“音楽を休む”ことはしないのです。


―― では寝る前にも?

 就寝前、ベッドでも楽譜を読みます。


―― これまで最も緊張した演奏会について教えてください。どのように緊張を克服したのかも・・・

 通常、僕はコンサート前よりも最初のリハーサルのほうが緊張するのです。ご質問への答えとしては、ベルリン・フィルにデビューした時に一番緊張しました。リハーサルはとても順調だったのですが、本番前にステージを見て、あの指揮台で指揮したカラヤンや過去の伝説的な指揮者たちのことを想い、動揺してしまいました。指揮台へ向かい、指揮を始めたところ、音楽が私の背中を押し、あらゆる緊張を払いのけてくれましたが。


―― メトロポリタン・オペラ(MET)でも活躍中ですね。オペラ指揮の醍醐味とは?

 ええ、先日ドヴォルザークの《ルサルカ》の上演が大成功に終わったところです。人間の声は、あらゆる音楽表現の原点だと思っています。私がもともと指揮者になりたいと思ったきっかけは、9歳の頃に声楽を指揮した体験でした。現在、オペラや合唱の指揮を通して、日々多くのことを学ばせてもらっています。個人的に、大編成の作品の指揮は大好きでわくわくしますね(笑)。
*編注: ネゼ=セガンはMETに毎シーズン出演しており、昨シーズンはヴェルディ「オテロ」を指揮。


―― もっとも影響を受けた人は誰でしょう。

 指揮を師事したカルロ・マリア・ジュリーニ先生ですね。常に「自然」で、「ありのまま」の表現に至れるよう努力すること、そして最も重要なのは作曲家の意図に忠実であること、をいつも力説されていました。そしてたくさんのインスピレーションをいただきました。彼の人間性、そして音楽家を尊重し愛する態度は実に素晴らしいです。


―― 無人島に5枚だけCDを持っていけるとしたら何を選びますか?

 ジュリーニ指揮ウィーン・フィルの『ブルックナー:交響曲第9番』、クラウディオ・アラウの『ショパン:夜想曲集』、ジャン=ギアン・ケラスの『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲』、そしてオーマンディ指揮フィラデルフィア管の『チャイコフスキー:交響曲第6番』。


―― ところで2語であなた自身を表現してみてください。

 3語でもいいですか?運が良く(fortunate)、正直で(honest)、楽観的(optimistic)です。


―― 休暇があったら何をしたいですか?

 ビーチで寝たいです!(笑)


―― もしもタイムスリップして10代の自分に会えたら、何と声をかけますか?何かアドバイスをしますか?

 自分自身を、そして自分の道を信じるようにと、伝えますね。何が自分の道であるか見極めるように努力し、それをどのように受け止めるか考え、受け止めたうえで、全力を注げ、と!


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